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【最低賃金引き上げに備える!企業が今すぐ準備すべきこと】


【人手不足を防ぐための対策も必要】

令和7年度の最低賃金の目安が発表され、全都道府県で最低賃金が1,000円を超え全国加重平均で63円引きあがる目安です。これは過去最大の引き上げ幅となり、特に中小企業にとって大きな影響が予想されます。最低賃金の改定は、企業の賃金体系や人材確保に直接関わる重要なテーマです。この記事では、最低賃金引き上げに備えて企業が準備すべきポイントをわかりやすく解説します。

  1. 時給制従業員の賃金見直し

最低賃金を下回る賃金を支払うことは法令違反となります。以下を確認・対応しましょう
現在の時給チェック:すべての時給制従業員の賃金を確認し、新たな最低賃金を下回っていないか検証します。
賃金調整:最低賃金を下回る場合、速やかに時給を改定。従業員とのコミュニケーションも忘れずに行い、変更内容を丁寧に説明しましょう。

  1. 月給制従業員の賃金見直し

月給制の場合も、最低賃金への対応が必要です
時給換算の計算:月給を年間の平均所定労働時間で割り、時給換算額を算出します。この金額が新しい最低賃金を下回らないか確認してください。
調整の実施:必要に応じて月給の見直しを行い、従業員のモチベーション維持にも配慮しましょう。

  1. 所得税の扶養範囲内勤務者への対応

扶養内で働く従業員への影響も見逃せません
・勤務時間調整の協議:(所得税の扶養範囲)以内で働く従業員に対し、12月までの勤務時間や来年以降の働き方について早めに話し合いましょう。
・柔軟な対応:従業員の希望に応じてシフトや労働時間を調整し、働きやすい環境を整えることが重要です。

  1. 社会保険の扶養範囲内勤務者への対応

社会保険の扶養範囲(年収130万円未満、または19~23歳の一部対象者は150万円未満)で働く従業員にも注意が必要です
・シフト調整の検討:年収上限を超えないよう、シフトや労働時間の見直しを提案。従業員の生活スタイルに合わせた柔軟な対応が求められます。
・事業主証明の活用:130万円の壁を超える場合、最大2回まで事業主証明により一時的な収入超過を認め、扶養資格を維持できる場合があります。この制度を活用し、従業員の不安を軽減しましょう。

  1. 人手不足への備え

最低賃金の引き上げは、従業員の確保にも影響を与えます。以下の対策を検討してください
・採用計画の見直し:賃金改定に伴うコスト増を踏まえ、採用人数や条件を再検討。
・従業員の定着策:賃金だけでなく、働きやすい環境や福利厚生の充実を図り、離職を防ぎましょう。
・早めの準備:急な人手不足を防ぐため、早い段階でのシフト調整や採用活動を進めることが重要です。

まとめ
最低賃金の引き上げは、企業にとってコスト管理や人材確保の大きな課題です。しかし、早めの準備と適切な対応により、従業員の満足度を維持しつつ、法令遵守を実現できます。特に、賃金の見直しや扶養範囲内の従業員とのコミュニケーション、採用戦略の再構築は急務となります。

【労務管理】時間単位の年次有給休暇


時間単位の年次有給休暇制度とは

年次有給休暇は、労働基準法で定められている休暇で、一定期間勤続した労働者に与えられるものです。
心身の疲労を回復し、生活にゆとりを持てるようにすることを目的としており、休んでも賃金が支払われます。

参考 年次有給休暇について~年次有給休暇管理簿ひな形 

本来は「日単位」でまとめて取得することが年次有給休暇の制度趣旨ですが、実際にはなかなか長期休暇を取りにくく、取得率の低さが課題でした。
そこで2010年から、労使協定を結ぶことで「時間単位」で年休を取得できる仕組みが導入されました。時間単位で年休が取れることで、通院や行事への参加、介護など、労働者がさまざまな事情に応じて柔軟に休暇を取得できるようになります。

労働基準法(年次有給休暇)
第39条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
(中略)
④ 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)
三 その他厚生労働省令で定める事項

時間単位の年次有給休暇の特徴

時間単位の年次有給休暇の特徴は次のとおりです。

  • 年間で 5日分以内 まで取得可能
  • 単位は 時間単位(分単位は不可)
  • 賃金の計算方法を就業規則に明記する必要あり
  • 使用者の時季変更権は認められるが、労働者の申請を「日単位⇔時間単位」に変えることはできない
  • 計画的付与の対象にはできない

参考 【労務管理】年次有給休暇の計画的付与 

時間単位の年次有給休暇の繰り越しと管理

年次有給休暇は2年で時効となるため、1年で使いきれなかった分は翌年に繰り越されます。
時間単位で使うと「日+時間」の形で残るため、管理が少し複雑になります。

例:所定労働時間8時間の場合
2025年度:付与10日
利用状況:日単位で5日+時間単位で5時間取得
翌年への繰越:4日+3時間

この場合、翌年に時間単位で取得できるのは「繰越分の3時間+翌年分の40時間」で43時間…?と考えがちですが、法律上「時間単位で使えるのは年間5日分(40時間)」までなので注意が必要です。

時間単位の年次有給休暇制度を導入する方法

時間単位の年次有給休暇制度を導入するためには、次の2点が必要になります。

  1. 就業規則への記載
  2. 労使協定の締結

就業規則への記載

就業規則は職場のルールブックであり、労働者に指示をする際の根拠にもなります。
制度を導入する際には、対象者や取得単位、賃金の計算方法などを規定する必要があります。

就業規則への記載例(テンプレート)

就業規則への記載例(テンプレート)のダウンロードはこちらから↓↓

労使協定の締結

労使協定では次の4つの内容を定めます。

1.対象労働者の範囲

事業の正常な運営と調整を図る観点から、一部の労働者を対象外とすることはできます。
取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。

○ 工場のラインで働く労働者を対象外にする⇒事業の正常な運営が妨げられる場合はOK。
× 育児を行う労働者に限る⇒取得目的による制限なのでNG。

2.時間単位で与えることができる日数

年に5日以内で定めます。

3.1日分の年休に相当する時間数

1日分の年次有給休暇の時間数を、所定労働時間数を基にして定めます。
所定労働時間に端数がある場合は時間単位に切り上げます。

(例)1日の所定労働時間が7時間30分の場合
…7時間30分⇒1時間未満の端数を切り上げて1日8時間
…時間単位の年次有給休暇を5日分とする場合、8時間×5日=40時間分

また、日によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間の1日平均所定労働時間数に基づいて定めます。
1年間の1日平均所定労働時間数も決められていない場合は、決められている期間における1日平均所定労働時間数を基にして定めます。

4.取得単位

1時間以外の時間を単位とする場合は、2時間、3時間など定める単位の時間数を記入します。
ただし、1日の所定労働時間を上回ることはできません。

労使協定の記載例(テンプレート)

労使協定の記載例(テンプレート)テンプレートのダウンロードはこちらから↓↓

【労務管理】資格確認書の取り扱いについて


資格確認書とは

2024年12月以降、従来の健康保険証は新たに発行されなくなり、マイナ保険証を基本とするしくみに移行しています。

しかし、様々な理由でマイナ保険証を持っていない方に向けて「資格確認書」が発行されています。

資格確認書は、マイナ保険証を持っていない方が医療機関で保険診療を受けるときに提示するものです。
資格確認書を医療機関等の窓口に提示することで、被保険者等の資格が確認されます。

資格確認書は黄色のプラスチック製カード型。画像はイメージです。

当分の間、マイナ保険証を持っていないすべての人に、従来の健康保険証の有効期限内に「資格確認書」が交付されることになっています。
マイナ保険証を持っていない方には、マイナンバーカードの健康保険証利用の登録をしていない方も含まれます。

資格確認書には有効期限がある

資格確認書には有効期限があります。協会けんぽの場合、有効期限は4~5年です。

申請をしなくても交付される場合

資格確認書は、次の理由がある方には特に申請をしなくても交付されます。

  • マイナンバーカードを取得していない
  • マイナンバーカードを取得しているが、健康保険証の利用登録をしていない
  • マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れている
  • マイナ保険証の利用登録解除を申請した、もしくは登録を解除した
  • 後期高齢者医療制度に加入していたり、新たに加入したりする(令和8年7月末までの暫定措置)
マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れた場合

マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れた場合、有効期限が切れた後3か月間はそのままマイナ保険証が利用できます。しかし、その後は利用することができなくなります。
そのため、協会けんぽの場合、有効期限が切れた月から3か月目に資格確認書が事業主経由で送付されます。
なお、マイナンバーカードの電子証明書は有効期限は年齢によらず発行日から5回目の誕生日までです。
有効期限の3か月前から居住地の市区町村でマイナンバーカード電子証明書の更新手続きができます。

申請によって交付される場合

次の理由がある方は、申請をすることで資格確認書が発行されます。

  • ご高齢や障害をお持ちの方などマイナンバーカードでの受診等が困難な配慮が必要な方であって、資格確認書の交付を申請した方
  • マイナンバーカードを紛失・更新中の方

資格確認書を紛失したり、き損したりした場合も交付申請をすることができます。

事業所に勤務している被保険者や被扶養者の方の交付を申請する場合は、事業主を経由して申請するようになります。

資格確認書の返却

健康保険に加入している方が退職した場合、資格確認書は返却が必要な場合があるので事業主は有効期限を管理する必要があります。

有効期限内の退職有効期限が切れた場合
資格喪失届に添付して返却が必要返却は不要

【労働者派遣、個別契約書の記載ミスにご注意!】


【派遣先の記載ミスと書類の統一性】

  1. 個別契約書の記載ミス:派遣先事業所の名称・所在地に注意!

6月に、関西にある弊社顧問先会社で労働局による派遣業・職業紹介業の訪問指導が行われました。指導では、職業紹介での指摘はありませんでしたが、派遣業では特に契約書類の内容が細かくチェックされており、派遣会社が誤りを指摘され、是正を求められるケースがございました。この記事では、派遣業書類「個別契約書の記載ミス」と「書類の統一性」について解説します。派遣業を運営する皆様は、以下のポイントをぜひご確認いただき、適切な対応をお願いいたします。

労働者派遣法では、個別契約書に以下の項目を記載することが義務付けられています。

「派遣労働者が派遣就業に従事する事業所の名称・所在地、その他派遣就業の場所および組織単位」このうち、派遣先事業所の名称・所在地の記載に本社の情報や、就業先を記載する誤りが見られます。
正しい記載方法
派遣先事業所は、独立した事業所単位で記載する必要があります。原則として、雇用保険の適用事業所に該当する事業所を記載してください。この事業所は、派遣労働者が実際に働く場所と異なる場合もあります。

なぜ正確な記載が重要なのか?
労使協定方式の賃金設定への影響
派遣先事業所の地域指数は、派遣労働者の賃金設定に使用されます。誤った事業所を記載すると、賃金の基準が不適切になる可能性があります。
抵触日通知の変更
派遣先事業所の情報が間違っていると、抵触日(派遣期間の上限)の通知にも影響が出ます。

対策
派遣契約を締結する前に、派遣先企業に「どの事業所が契約の対象となる事業所か」を明確に確認しましょう。雇用保険の適用事業所番号を確認するのも有効です。

  1. 書類の統一性が欠けているケース
    個別契約書だけでなく、以下の書類でも記載内容の整合性が求められます。
    ・派遣先からの抵触日通知書
    ・労働者に交付する就業条件明示書
    ・派遣元台帳
    それぞれに記載してある内容に相違が無いか確認してください。

対策
書類を作成する際は、すべての書類で記載内容が一致しているかを確認するチェックリストを用意しましょう。特に業務内容、時間外・休日労働時間、就業時間、休憩時間などの重要項目は、慎重に確認してください。
まとめ
正確な書類作成で是正リスクを回避!派遣書類の中で特に、個別契約書の派遣先事業所情報と書類間の統一性は、ミスが生じやすい箇所です。以下のステップを参考に、正確な書類作成を心がけましょう。
派遣先事業所の確認
派遣先企業に、契約対象の事業所(雇用保険の適用事業所)を明確に確認。
書類の整合性チェック
個別契約書、抵触日通知書、就業条件明示書、派遣元台帳の記載内容を照合し、矛盾がないか確認。
社内プロセスの徹底
書類作成・確認のフローを整備し、ミスを未然に防ぐ。

これらの対策を徹底することで、派遣業の適正な運営を行うよう、ぜひ今一度、書類の確認をお願いいたします。

 

【労務管理】スポットワークの留意点


短時間や単発の労働契約で働く、いわゆる「スポットワーク」の利用者数が急増しています。

スポットワークにはさまざまな形態がありますが、“雇用仲介アプリ”を使って仕事のマッチングや賃金の立替払をするタイプの利用が特に増えているようです。労働者にとっては隙間時間を活用して収入を得ることに使えたり、事業主にとっては急に人手が欲しくなった時に活用できたりして便利です。

しかし、利用の増加に伴って、スポットワーク利用者から労働基準監督署への相談や申告も寄せられるようになってきています。

そこで、厚生労働省では、スポットワークを利用する時のポイントをまとめたリーフレットを労働者向けと事業者向けにそれぞれ作成し、公表しました。

リーフレットに記載されている内容のうち、労働契約の成立時期と休業手当、平均賃金について解説します。

労働契約の成立時期について

労働契約が成立すると、労働に関する法律が適用されるようになります。

雇用契約は「事業主」と「労働者(スポットワーカー)」で結ばれる

スポットワーク仲介事業者は職業の紹介をするだけで、雇用契約は「事業主」と「労働者(スポットワーカー)」の間で結ばれます。
労働条件の明示、雇入れ時の安全衛生教育、労災が起きた場合の給付など、事業主が行う必要があります。

いつ契約が成立するのか

トラブルを避けるためにも、労使どちらも「いつ契約が成立するのか」という認識を共有したうえで労働契約をする必要があります。

スポットワークでは、雇用仲介アプリを使って、事業主が掲載した求人に労働者が応募して、面接等をせずに短時間にその求人と応募がマッチングすることが一般的です。
一般社団法人スポットワーク協会は、面接等を経ずに先着順で就労が決定するかたちのスポットワークにおいて『働き手が求人に応募を完了した時点で、解約権が留保された労働契約(解約権留保付労働契約)が成立する』という考え方に基づいて、2025年9月1日以降、各社が順次必要な対応を進めていくことを公表しています。

労働契約法
第6条(労働契約の成立)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

労働契約が成立したあとに労働日や労働時間等を変更する場合は、労働条件の変更をするということになるので、事業主とスポットワーカー双方の合意が必要です。

また、労働契約が成立した後に事業主の都合で仕事をキャンセルする場合は特に注意が必要です。

休業手当の支払い

労働契約が成立した後に、労働者は労働をする意思があるにも関わらず、事業主の都合で仕事をキャンセルしたり早上がりさせたりすることになった場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。
事業主の都合で労働者を休業させた場合、事業主は最低でも労働者に休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う必要があります。

民法との関係

民法536条2項の規定により、使用者に責任を負うべき理由や落ち度がある場合は労働者は賃金の全額を受ける権利を失わないことになりますが、民法の規定は当事者の合意でその適用をしないこともできる任意規定です。

民法(債務者の危険負担等)
第536条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

一方、労働基準法の休業手当は該当する場合は必ず支払わなければいけません。

早上がりをさせて実働時間のみ給与を払う場合で、その金額が休業手当(平均賃金の6割)に満たない場合も、差額を追加して支払うことで、休業手当の金額は保障する必要があります。

休業手当とは

使用者の都合によって労働者を休ませた場合、平均賃金の6割以上の額を支払わなければいけませんが、この手当を休業手当といいます。

労働基準法(休業手当)
第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

休業手当は、労働者の最低限の生活を保障するための規定です。
そのため、天災事変等でどうしようもなかった時(不可抗力)に該当しない限り使用者の都合として考えられ、親会社の経営難のための資金・資材の獲得困難や、業務量減少に伴う休業なども使用者の都合に該当します。

休業手当を支払わなかった場合、労働基準法第120条に基づいて30万円以下の罰金が科される可能性があります。

平均賃金の計算

労働基準法で定められている平均賃金は、次の計算方法で求めます。

「算定すべき事由の発生した日以前の3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額」
÷「その期間の総日数」

雇入れ初日の平均賃金の計算

単発のスポットワークがキャンセルされる場合、「雇入れ初日のキャンセル」ということも考えられますが、この場合は「算定すべき事由の発生した日以前の3か月間」がないため上記の方法では計算ができません。

この場合、通達(昭和22年9月13日 発基17号)の計算方法が参照できます。

労働基準法の施行に関する件 (昭和二二年九月一三日)(発基第一七号)(都道府県労働基準局長あて労働次官通達)
雇い入れの日に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合には、当該労働者に対し一定額の賃金が予め定められてゐる場合には、その額により推算し、しからざる場合には、その日に、当該事業場において、同一業務に従事した労働者の一人平均の賃金額により推算すること。

「当該労働者に対し一定額の賃金が予め定められてゐる場合には、その額により推算」とあるので、その日に働いて支給される予定だった給与額を基に休業手当を計算するようになります。

【労務管理】テレワークを導入した時の交通費の扱い


テレワークはコロナ渦に急激に普及し、最近では利用率が減少してきていますが、政府ではテレワークの意義・効果として「柔軟な働き方の実現による人材の確保や生産性等の向上」「少子高齢化対策の推進」等になるとして、普及・定着に向けた取り組みを進めています。

企業でテレワークを導入する場合、労働条件が通常勤務と同じであれば既にある就業規則のままでも勤務ができます。
しかし、「(自宅でテレワークをする場合の)通信費用はどうするか」「勤務時間の管理はどうするか」など、テレワーク特有のルールを決めた方が良い場合があり、その場合には就業規則を変更したりテレワーク規定を定めたりすることが必要になります。

一般的に、テレワーク導入時には次の項目を定める必要があります。

  • テレワーク勤務を命じることに関する規定
  • テレワーク勤務の時の労働時間に関する規定
  • 通信費などの負担に関する規定

また、テレワークをする場合、通常勤務と大きく異なってくるのが「通勤」です。
自宅で勤務する場合はもちろん通勤はありませんし、サテライトオフィスに通勤することが主となる可能性もあります。
通常、「自宅から勤務地までの通勤手当」は社会保険や労働保険の算定に含めて計算しますが、テレワークの場合は次のように取り扱います。

テレワーク対象者が出社する際の交通費

出社する日の「労働契約上の労務提供地はどこなのか」によって社会保険・労働保険の取り扱いが変わります。

労働契約上の労務の提供地が「自宅」の場合

業務命令により一時的に出社することになり、その移動にかかる実費を企業が負担する場合、原則として「実費弁償」と考えられます。
そのため、社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金には含まれません。

労働契約上の労務の提供地が「企業」とされている場合

通常の労務提供地に通勤することになるので、その費用は原則として「通勤手当」として社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含まれます。

出社する日の労働契約上の労務の提供地通勤費用を労働保険・社会保険の算定に含めるかどうか
自宅含めない(実費弁償)
企業含める(通勤手当)

テレワークは、企業の所在地とから遠い場所で行う場合もあると思います。
労働契約上の労務の提供地が「企業」であり、遠方から通勤をする場合、通勤費が非常に大きくなって、その分社会保険料の負担額も大きくなる可能性があるので注意が必要です。

【社会保険の扶養条件が令和7年10月1日より緩和される予定です】


【お早めに従業員に周知するなど準備を進めてください】

厚生労働省より社会保険の扶養要件が変更となる案が発表され今年の10月1日から変更される見込みがあります。
【10月1日からの変更事項】
19歳以上23歳未満の健康保険の被扶養者認定について、年間収入の要件が130万円未満から150万円未満に引き上げとなります。
ただし配偶者はこの特例の対象外です。
本対象以外の方の要件については、従来通りとなります。

【改正背景、該当例など】
今回の改正は、物価上昇や若年層の就労環境、人手不足を考慮した国の施策によるものです。例えば、アルバイトやパートで働く19歳から23歳未満のお子さんが年間130万円以上150万円未満の収入を得ている場合、10月1日以降に被扶養者として申請が可能となります。

【会社としての準備】
扶養認定には事業主の証明書類や収入確認書類が必要となる場合がありますので、お早めに従業員への周知等ご準備することをお勧めいたします。

【労務管理】子の看護等休暇とは


「子の看護等休暇」は、育児介護休業法に定められているもので、2025年4月1日から施行されています。

子育てをする労働者が、子どもの病気やけが、学級閉鎖、卒園式等の式典の際に仕事を休みやすくして、子育てをしながら働き続けることができるように位置づけられています。

事業主は、対象となる労働者から休暇の申出があったときは、原則として申出を拒否することができません。

子の看護等休暇を取れる労働者

日雇い労働者を除く、対象となる子どもがいるすべての労働者。
ただし、労使協定を結んでいる場合、事業主は次の労働者からの看護等休暇の申出は拒むことができます。

  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 時間単位で休暇を取ることが難しい認められる業務をしている労働者の時間単位の休暇

子の看護等休暇で対象となる子ども

小学校の3年生が修了するまでの子ども。
(9歳の誕生日の前日以後の最初の3月31日まで)

子の看護等休暇を取得する理由

対象となる子どもに次の理由があって世話をする場合

  • 病気やけが
  • 予防接種、健康診断
  • 感染症に伴う学級閉鎖等
  • 入園式、卒園式、入学式などの式典

子どもの病気やけがの種類や程度に決まりはありません。一般的な風邪による発熱などでも申出ができます。

また、この看護等休暇で取れる行事は「入園」「卒園」「入学」などの式典で、「授業参観日」や「運動会等」の行事は取得理由になりません。

子の看護等休暇を取得できる日数

1年間に5日まで。ただし、対象となる子が2人以上いる場合は10日まで。

休暇の単位

1日単位、または1時間単位※。

※時間単位で子の看護等休暇を取得することが困難な業務の場合、労使協定を結ぶことで労働者からの申出を拒むことができます。
(国際路線等の客室乗務員や、交替制勤務で時間単位で休む人を勤務体制に組み込むことが困難な業務など)

1日の所定労働時間の端数は切り上げ

1日の所定労働時間が7時間30分など、1時間に満たない端数がある場合は、端数を切り上げます。
(1日の所定労働時間数が7時間30分の場合は8時間分の休暇で1日分)

子の看護等休暇を取った時の賃金

子の看護等休暇中の賃金については法律上の定めがないため、事業主が自由に決められます。無給でも法律違反ではありません。

無給の場合、休む権利はあるものの、休暇を取得した分の賃金は出ないことになります。

労働者が子の看護等休暇を申出するときに伝える内容

子の看護等休暇の申出は、次の内容を事業主に伝える必要があります。

  1. 労働者の氏名
  2. 申出の対象となる子どもの氏名と生年月日
  3. 休暇を取得する年月日(時間単位の場合は開始と終了の年月日時)
  4. 申出の理由

申出書の書式については、厚生労働省が出している社内様式例を活用できます。

労働者の申出にあたって、考慮する事

労働者からの申出にあたって、事業主は次の点を考慮する必要があります。

  • 事業主は、申出理由を証明する書類の提出を求めることができますが、子の看護等休暇は一般的な風邪による発熱などでも申出ができます。そのため、医師の診断書が得られない場合、購入した薬の領収書で確認するなど、柔軟な対応が求められます。
  • 子の看護等休暇は、子どもの急なけがや発熱など、緊急の場合も多いと考えられます。そのため、当日は電話等の口頭の申出でも取得を認めて、書面の提出は後日でも可とする取扱いが求められます。

子の看護等休暇まとめ

項目 内容
対象となる労働者

日雇い労働者を除く、対象となる子どもがいるすべての労働者

※労使協定が締結されている場合、以下の労働者を除く

・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

時間単位での休暇取得が難しいと認められる業務に従事している労働者の時間単位の休暇

対象となる子ども 小学校3年生が修了するまでの子ども。(9歳の誕生日の前日以後の最初の3月31日まで)
取得可能日数 1年間に5日まで。対象となる子どもが2人以上いる場合は10日まで。
取得理由

対象となる子どもの以下のいずれかの理由。

・病気やけが ・予防接種、健康診断 ・感染症に伴う学級閉鎖など

・入園式、卒園式、入学式等の式典(「授業参観日」や「運動会等」はNG)

休暇の単位

1日単位、または1時間単位※。

※時間単位での取得が困難な業務の場合で労使協定を結んでいる場合は除く

休暇中の賃金

勤務先の規定による(無給も可)。



【労務管理】社会保険適用促進手当


人手不足が社会的な問題となっていますが、アルバイトやパート等で働く人が労働時間を増やさない理由の一つとして「もっと働きたいけれど、社会保険料が上がるのが困る」「年収が増えると扶養から外れてしまう」といった理由が上げられています。

そういった手取りを気にして働くのを控えてしまう人に対応するため、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を用意しました。そのうちの一つが「社会保険適用促進手当」です。

社会保険適用促進手当とは

社会保険適用促進手当は、年収106万円以上になると厚生年金・健康保険に加入する必要があって、働き控えをしてしまう方への対応策です。

労働時間を増やしたことで労働者が新たに社会保険に加入する場合、厚生年金・健康保険料が負担とならないように、事業主の判断によって、事業主が労働者に社会保険適用促進手当を支給します。

社会保険適用促進手当は、政府から支給されるものではありません。事業主の判断で支給するもので、任意のため、支給しなくてもかまいません。

年収106万円以上になると、厚生年金・健康保険に加入する必要がある人とは

厚生年金保険の被保険者数が51人以上※の企業等で働く短時間労働者のうち、次の要件を満たす人です。(※令和6年10月から)

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
  3. 学生でないこと

社会保険適用促進手当の社会保険料の取扱い

社会保険適用促進手当を支給する場合に、社会保険料について次のような特別な取扱いがあります。

  • 新たに社会保険に加入することになった人の社会保険適用促進手当の金額は、労働者本人が負担する社会保険料の金額までは保険料の計算に含めない
  • 労働者間の公平性を考慮するため、同じ企業の中で、すでに社会保険に加入している労働者にも社会保険適用促進手当を同じ条件で支給する場合は、特例的に同じように扱う

(標準報酬月額が10.4万円以下の方が対象)

画像は日本年金機構「年収の壁・支援強化パッケージ」より

社会保険料は、新たに加入するとき等に基本給・各種手当を加えた1カ月の総支給額を申告することで決まりますが、この総支給額から上記の条件の社会保険適用促進手当を除くことができます。

なお、標準報酬標準報酬月額・標準賞与額の算定から除外できる期間は、それぞれの労働者について、社会保険適用促進手当によって保険料の負担を軽減した最初の対象月から最大2年間です。

2年が経過した後は、通常の手当と同じように、標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めて保険料を計算するようになります。

社会保険適用促進手当は、残業代の計算に含めるか

残業代の計算にあたっては、他の手当と同様に考えるため、社会保険適用促進手当が毎月支払われる場合は残業代の計算(割増賃金の算定基礎)に含めます。

「割増賃⾦の基礎となる賃⾦」から除外できるもの
① 家族⼿当
② 通勤⼿当
③ 別居⼿当
④ ⼦⼥教育⼿当
⑤ 住宅⼿当
⑥ 臨時に⽀払われた賃⾦
⑦ 1か⽉を超える期間ごとに⽀払われる賃金
①〜⑦は、例⽰ではなく、限定的に列挙れる賃⾦されれているものです。これらに該当しない賃⾦は全て算⼊しなければなりません。

なお、社会保険適用促進手当を毎月支払わずに「⑥ 臨時に⽀払われた賃⾦」もしくは「⑦ 1か⽉を超える期間ごとに⽀払われる賃金」として支払う場合は、「割増賃⾦の基礎となる賃⾦から除外できるもの」に該当するため、残業代の計算に含めないようになります。

社会保険適用促進手当は、労働保険(労災保険、雇用保険)の対象になるか

労働保険では特例的な扱いをされないため、含めて計算するようになります。

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」

社会保険適用促進手当を支給した事業主には、労働者1人当たり最大50万円が助成されるキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」が用意されています。
なお、助成金には細かい要件があるため、申請をする場合には詳細の確認が必要です。

画像は厚生労働省キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(リーフレット)(令和6年8月27日更新)より

【毎年6月は派遣業年度報告の時期です】


【報告内容についてサポートを行っています】

もうすぐ6月となりますが、皆さんは6月と聞いて思い浮かべる事はなんでしょうか?梅雨の時期、祝日が1日もない、もうすぐ夏だなぁ、等でしょうか。私が毎年、6月と聞いて思い浮かぶのは真っ先に【派遣業の年度報告】の時期が来た、です。派遣業の許可を持っている会社は、決算報告とは別に、毎年6月末までに年度報告として派遣業の売り上げや労働者人数などを細かく労働局に提出する義務があります。こちらの報告のサポートを弊社では行っており、多くの派遣会社様の報告書作成について確認や記載内容の説明等を行っています。報告書には記載内容の説明も書いてありますが、内容が複雑でこちらだけでは、中々理解することは難しい箇所もあります。
特に、第2面の有期派遣労働者の雇用安定措置や、第6面の教育訓練の箇所は毎年、多くのお客様からどう書けば良いのかとお問い合わせを受けています。また、労働局側の確認するポイントとしても前述した雇用安定措置や、教育訓練は重点的に確認をされている箇所となりますので誤った記載をしないよう注意が必要です。

弊社の派遣会社様向けの顧問契約では、決算報告、6月の年度報告書を提出するまでのサポートをさせていただいております。報告内容についての記載方法の説明や内容確認、提出漏れがないようにお手伝いをしておりますので、お気軽にご相談ください。

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