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【労務管理】社会保険の対象となる報酬

社会保険に加入した場合、社会保険料は『労働の対償として受けるすべて』を合計した金額をもとに決められます。

社会保険(健康保険、厚生年金保険)の報酬の範囲

社会保険(健康保険、厚生年金保険)の報酬の範囲は、基本給、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当、年4回以上支給される賞与など、『労働の対償として勤務先から支給されるものすべて』です。

金銭だけでなく、通勤定期券や食事、住宅など「現物」で支給されるものも報酬として含めます。

臨時的な理由で支給されるものや、年3回以下の回数で支給の賞与などは、毎月の社会保険料の計算のもとになる報酬に含めません。
年3回以下の回数で支給される賞与は「標準賞与額」の対象となり、賞与分として社会保険料がかかるようになります。

労働保険(労災保険、雇用保険)の賃金の範囲

労働保険(労災保険、雇用保険)の賃金の範囲は、賃金、手当、賞与、その他どのような名称でも、『労働の対償として勤務先から支給されるものすべて』です。
定期券や回数券など、通勤のために支給する現物給与も賃金として含めます。

結婚祝金や退職金など「臨時のもの」や、出張旅費や宿泊費など「実費弁償」と考えられるものは賃金の範囲から除かれます。

また、従業員に福利厚生施設として勤務先が「住宅」を用意している場合、基本的には賃金として扱いませんが、住宅を用意されない従業員全員に対して「住宅分の均衡手当」を支給している場合は賃金となる場合があります。

『非課税所得』との違い

ここでよくわからなくなってしまいがちなのが、「通勤費は非課税じゃないの??」という『非課税所得』との違いです。

非課税所得は、社会政策その他の見地から所得税を課さないもので、所得税法および租税特別措置法等で規定されているものです。
非課税所得と社会保険の対象となる報酬は別の法律で定義されているものであり、考え方が違うため、混同しないよう注意が必要です。
「非課税」となっているものでも『労働の対償として勤務先から支給されるもの』は社会保険料の計算に含まれます。

厚生年金保険法
(用語の定義)
第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(略)
三 報酬 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
四 賞与 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。

健康保険法
(定義)
第三条
5 この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
6 この法律において「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「労働保険」とは、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号。以下「労災保険法」という。)による労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)及び雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)による雇用保険(以下「雇用保険」という。)を総称する。
2 この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。
3 賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。

チケットレストランは社会保険料の対象になるか

現金支給よりオトクな食事補助としてチケットレストランというプリペイドカード形式のサービスがあります。

勤務先から支給される金額に対して、一定額以上を従業員が負担することで「非課税扱い」で食事代を補助できるサービスです。

チケットレストラン

チケットレストランは健康保険・厚生年金保険の報酬として含まれるのか

「非課税」のものも『労働の対償として勤務先から支給されるもの』は社会保険料の計算に含まれることは上述したとおりですが、チケットレストランを毎月7,000円支給し、そのうち従業員負担が3,500円の場合について念のため年金事務所に確認をしてみたところ、

「業務時間外も使えるものなので、会社負担分のみを報酬として扱う取扱いが一般的。社会保険上、報酬としての取り扱いであり、現物給与としての取り扱いとはならない。」いうことでした。過去に本部へ疑義照会があがっている内容のようでした。

現物給与とは

勤務先から「労働の対償として現物で支給されるもの」がある場合、その現物の価額も含めて社会保険料を算定するようになります。
現物で支給されるものが、食事や住宅である場合、「全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)」を元に計算します。

チケットレストランは雇用保険・労災保険の賃金として含まれるのか

労基署に確認したところ、「チケットレストランが労災・雇用保険の対象になるかは、会社が『労働の対価として払うかどうか』の認識による。」ということでした。


社会保険は『労働の対価』としての認識し、労働保険は「労働の対価としての認識ではない」という道理は通らないでしょうから、労働者に支給する場合は雇用保険・労災保険の対象となる賃金として含めて考えるのが自然といえるでしょう。

【労務管理】日本年金機構の事業所調査で指摘の多い事例

社会保険の適用を受けている事業所は、日本年金機構から事業所調査をされる場合があります。

事業所調査とは

適用事業所の従業員への社会保険の届出を正しく行うことを推進し、将来的な無年金者等が出てくることの防止や事業主の負担の公平性を確保することを目的として実施されています。

調査では、次のような事を確認されます。

  • 被保険者の資格や報酬について
  • 被保険者の加入や賞与支払に関する届出、報酬月額が正しいか など

届出内容に漏れや誤りがあった場合には指摘されるので、適正な届出を行うようになります。
年金事務所から指摘をされても適正な届出がされない場合には、確認した事実に基づいて遡及して職員の認定による手続きが行われます。

事業所調査の方法は大きく『訪問調査』と『呼出・郵送調査』に分けられます。

訪問調査・短時間労働者を多く使用している事業所
・算定基礎届や賞与支払届が未提出の事業所
・これまでの事業所調査において指摘の多い事業所など
呼出・郵送調査・上記以外の事業所など

事業所調査は、厚生年金保険法第100条に基づいて行われており、事業主には調査に応じる義務があります。

事業所調査で指摘の多い事例

日本年金機構では、実際の事業所調査で指摘の多い事例を公表しているのでいくつかご紹介します。

短時間労働者の適用

1年のうち6カ月間以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない)の総数が51人以上となる企業等は特定適用事業所といい、短時間労働者も健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。

短時間労働者は次の要件をすべて満たすことで社会保険の加入対象となります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上である
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上である
  3. 学生でない

入社時、雇用契約書等で定めた所定労働時間が週20時間未満であっても、実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となった場合で、さらに引き続き同様の状態が続いている場合や続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3か月目の初日に被保険者の資格を取得するルールとなっています。

調査によって、雇用契約は週20時間未満でも、実際の労働時間が何か月も週20時間以上となっていたことが判明すると、遡って加入手続きが必要となります。

実態を把握し、適正に加入手続きを行ったり、労働時間が加入基準を超えないように管理していくことが大切です。

随時改定に関わるもの

非固定的賃金の新設(廃止)、単価の変更

部署異動に伴って新たな手当の支給対象者となった場合など、随時改定の対象となる可能性があります。

昇給や降給などで報酬に大幅な変動があり、一定の要件に該当した場合、月額変更届を提出して随時改定となります。
随時改定に該当するには、「固定的賃金に変動」「変動月以降3か月平均の標準報酬月額が2等級以上の差」等一定の要件があります。

新たな手当は、毎月支給するものとは限りません。
給与規程等で定める『一定の要件を満たした場合に支給する手当』を新たに「支給する(しない)対象になった」場合にも、『固定的賃金の変動』にあたります

「支給する(しない)対象になった」月が起算月となりますので、忘れずに確認する必要があります。

また、支給単価に変更があった場合も「固定的賃金の変動」にあたるため、注意が必要です。


固定的賃金の日割り支給

給与計算期間の途中に固定的賃金の変更が行われ、日割り支給される場合がありますが、随時改定では、固定的賃金の変動を満額反映していないため日割り支給された月は起算月としません。

手当が新たに支給する(しない)対象となり、日割りではなく「満額支給された最初の月」を起算月とし、以後3か月の実績をもって月額変更に該当するかどうかを判断します。

日割り支給された月を起算月として届出してしまうと、改定月や改定後の報酬月額が誤ってしまうこととなります。


遡って手当を支給する

社会保険の報酬月額は、給与規程等で支給することが定められている諸手当など「労務の対償となるすべての報酬」を含めた金額を元に決定されます。

通勤手当や住宅手当なども報酬に含めることとなりますが、従業員からの申請が遅れた等の事情で、本来支給する月の翌月以降に遡って支給するケースがあります。

入社時の場合

「資格取得時の報酬月額を訂正」して届出をする必要があります。

随時改定の場合

「本来支給する月を起算月」として、月額変更に該当するか確認します。

遡及して手当を支払うこととなった場合、取得時訂正や、本来支給月に支給したものとして月額変更に該当しないか、確認する必要があります。

現物給与の算入もれ

社会保険の報酬は、住宅の貸与、食事の提供など、金銭以外で支払われるものは「現物給与」として含めます。
住宅と食事は厚生労働大臣が現物給与の価額を都道府県毎に定めています。

この時、社会保険を本社と支店で合わせて1つの適用事業所として管理していても、現物給与はそれぞれの支店等が所在する都道府県の価額で計算するので注意が必要です。

また、本人から一定額を控除している場合、食事、住宅それぞれで計算方法が定められているので確認する必要があります。

 

 

【労務管理】傷病手当金は懲戒処分で出勤停止の日にも支給される

傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度です。勤務先で社会保険に加入している方が病気やケガのために会社を休み、賃金が受けられない場合、傷病手当金の申請ができます。

傷病手当金が支給される条件

傷病手当金は、次の条件をすべて満たしたときに支給されます。

  1. 業務や通勤と関係ない理由による病気やケガによって、会社を休んでいる
  2. 仕事ができない状態である
  3. 所定休日や有給休暇も含めて当該療養のために3日間連続で休んで、4日目以降も仕事に就けない
  4. 休業した期間について給与の支払いがない

傷病手当金は、上記の3つ目の「待機3日間」が成立した後、4日目以降について支給されるものですので、会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。

また、傷病手当金の金額は、傷病手当金を受給する方の社会保険の金額(原則として過去1年間の標準報酬月額の平均)を元に決定されます。
支給される期間は、支給を開始した日から通算して最長で1年6ヵ月です。

【参考】傷病手当金について~支給額&書き方~

労務できない期間が、懲戒処分による出勤停止期間の場合

出勤途中に追突事故を起こし、会社から出勤停止処分(後に懲戒解雇)をされた方が、アルコール依存症の療養のために仕事ができなかったとして傷病手当金の支給申請をしたところ、保険者組合から「会社から出勤停止になっている間は労務不能とはいえない」と却下された件について、再審査請求によって傷病手当金が支給されることとなった事例があります。
(社会保険審査会 令和2年(健)第1131号)

傷病手当金の支給要件は「療養のため労務不能」であることのみ

当初、保険者組合は「出勤停止を命じられている期間は、そもそも『労働の義務が発生しない』状況のため、『療養のため労務に服することができないとき』に該当しない」としていました。

しかし、健康保険法第99条第1項は、傷病手当金の支給要件として、療養のための労務不能であることのみを要件としています。
「労働義務がある日(賃金請求権を有する日)であること」は要件としていません。

健康保険法 第99条 
被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

昭和2年社会局保険部長通知でも「労働義務がない公休日でも労務不能なら支給する」としており、公休日についても傷病手当金は支給されています。

これらのことにより、出勤停止の懲戒処分のため雇用契約上賃金請求権がない日であっても、療養のため労務不能で賃金を受けられないなら支給対象となりました。

労働者災害補償保険における休業補償給付の場合

業務が理由となって休業をした場合に受けられる労働者災害補償保険における休業補償給付においても、休日や出勤停止の懲戒処分等のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日も支給されることが最高裁判決で示されています。
(最高裁判所昭和58年10月13日第一小法廷判決 事件番号:昭和58(行ツ)4)

【労務管理】事業主の証明による被扶養者認定

社会保険の扶養に入るため、年収130万円未満に収まるように雇用契約を結んでいるものの、実際のところ毎月残業していたりすると、年末時点で年収調整のため「もう残業できない」「勤務時間を減らさなければいけない…」とパートやアルバイトの方が考えるケースがあります。

社会的な人手不足を背景に、こういった働き控えの対策として、令和5年から「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が当面の間の対応として実施されていましたが、この度、恒久的な取扱いとなりました。

事業主の証明による被扶養者認定とは

残業などで収入が一時的に扶養認定基準(年収130万円未満)を超えたとしても、事業主がその旨を証明すれば扶養に入ったままでいられる、というものです。
連続2回まで認められます。

※保険者が被扶養者の収入確認を年1回実施している場合は、連続2年間は認められるということです。

事業主が証明する書式

事業主が証明する書式は厚生労働省HPに用意されています。
「本来想定される年間収入(残業のない年間収入)」「人手不足による労働時間延長等が行われた期間」等を記入するようになっています。

一時的な収入増加の要因

一時的な収入増加の要因としては、「残業手当」や「臨時的に支払われる繁忙手当」等が想定されています。

  • 他の従業員が休職・退職したことで、業務量が増加したケース
  • 業務の受注が好調だったことにより、事業所全体の業務量が増加したケース
  • 突発的な大口案件で事業所全体の業務量が増加したケース など

シフト制で勤務している労働者のシフトが、上記のような理由で勤務時間が増えた場合も該当します。

こういったケースではなく、基本給や手当の変更、雇用契約上の所定労働時間・日数が増加して引き続き収入が増えることが確実な場合は、「一時的な収入増加」とは認められないので注意が必要です。

60歳以上または障害者の場合

60 歳以上の場合や、障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は、被扶養者の収入要件が180万円未満と定められています。
この場合、「事業主の証明による被扶養者認定」は、年間収入が180万円未満かどうかの判定についても適用されます。

ただし、扶養されている人の年間収入が、扶養している人の年間収入を上回る場合等で、扶養している人がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められない場合には、被扶養者の認定が削除されることとなるので注意が必要です。

フリーランスや自営業者などの場合

フリーランスや自営業者など、特定の事業主と『雇用関係』にない働き方をしている場合は、今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)の対象にはなりません。

【労務管理】資格確認書の取り扱いについて

資格確認書とは

2024年12月以降、従来の健康保険証は新たに発行されなくなり、マイナ保険証を基本とするしくみに移行しています。

しかし、様々な理由でマイナ保険証を持っていない方に向けて「資格確認書」が発行されています。

資格確認書は、マイナ保険証を持っていない方が医療機関で保険診療を受けるときに提示するものです。
資格確認書を医療機関等の窓口に提示することで、被保険者等の資格が確認されます。

資格確認書は黄色のプラスチック製カード型。画像はイメージです。

当分の間、マイナ保険証を持っていないすべての人に、従来の健康保険証の有効期限内に「資格確認書」が交付されることになっています。
マイナ保険証を持っていない方には、マイナンバーカードの健康保険証利用の登録をしていない方も含まれます。

資格確認書には有効期限がある

資格確認書には有効期限があります。協会けんぽの場合、有効期限は4~5年です。

申請をしなくても交付される場合

資格確認書は、次の理由がある方には特に申請をしなくても交付されます。

  • マイナンバーカードを取得していない
  • マイナンバーカードを取得しているが、健康保険証の利用登録をしていない
  • マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れている
  • マイナ保険証の利用登録解除を申請した、もしくは登録を解除した
  • 後期高齢者医療制度に加入していたり、新たに加入したりする(令和8年7月末までの暫定措置)
マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れた場合

マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れた場合、有効期限が切れた後3か月間はそのままマイナ保険証が利用できます。しかし、その後は利用することができなくなります。
そのため、協会けんぽの場合、有効期限が切れた月から3か月目に資格確認書が事業主経由で送付されます。
なお、マイナンバーカードの電子証明書は有効期限は年齢によらず発行日から5回目の誕生日までです。
有効期限の3か月前から居住地の市区町村でマイナンバーカード電子証明書の更新手続きができます。

申請によって交付される場合

次の理由がある方は、申請をすることで資格確認書が発行されます。

  • ご高齢や障害をお持ちの方などマイナンバーカードでの受診等が困難な配慮が必要な方であって、資格確認書の交付を申請した方
  • マイナンバーカードを紛失・更新中の方

資格確認書を紛失したり、き損したりした場合も交付申請をすることができます。

事業所に勤務している被保険者や被扶養者の方の交付を申請する場合は、事業主を経由して申請するようになります。

資格確認書の返却

健康保険に加入している方が退職した場合、資格確認書は返却が必要な場合があるので事業主は有効期限を管理する必要があります。

有効期限内の退職有効期限が切れた場合
資格喪失届に添付して返却が必要返却は不要

【労務管理】テレワークを導入した時の交通費の扱い

テレワークはコロナ渦に急激に普及し、最近では利用率が減少してきていますが、政府ではテレワークの意義・効果として「柔軟な働き方の実現による人材の確保や生産性等の向上」「少子高齢化対策の推進」等になるとして、普及・定着に向けた取り組みを進めています。

企業でテレワークを導入する場合、労働条件が通常勤務と同じであれば既にある就業規則のままでも勤務ができます。
しかし、「(自宅でテレワークをする場合の)通信費用はどうするか」「勤務時間の管理はどうするか」など、テレワーク特有のルールを決めた方が良い場合があり、その場合には就業規則を変更したりテレワーク規定を定めたりすることが必要になります。

一般的に、テレワーク導入時には次の項目を定める必要があります。

  • テレワーク勤務を命じることに関する規定
  • テレワーク勤務の時の労働時間に関する規定
  • 通信費などの負担に関する規定

また、テレワークをする場合、通常勤務と大きく異なってくるのが「通勤」です。
自宅で勤務する場合はもちろん通勤はありませんし、サテライトオフィスに通勤することが主となる可能性もあります。
通常、「自宅から勤務地までの通勤手当」は社会保険や労働保険の算定に含めて計算しますが、テレワークの場合は次のように取り扱います。

テレワーク対象者が出社する際の交通費

出社する日の「労働契約上の労務提供地はどこなのか」によって社会保険・労働保険の取り扱いが変わります。

労働契約上の労務の提供地が「自宅」の場合

業務命令により一時的に出社することになり、その移動にかかる実費を企業が負担する場合、原則として「実費弁償」と考えられます。
そのため、社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金には含まれません。

労働契約上の労務の提供地が「企業」とされている場合

通常の労務提供地に通勤することになるので、その費用は原則として「通勤手当」として社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含まれます。

出社する日の労働契約上の労務の提供地通勤費用を労働保険・社会保険の算定に含めるかどうか
自宅含めない(実費弁償)
企業含める(通勤手当)

テレワークは、企業の所在地とから遠い場所で行う場合もあると思います。
労働契約上の労務の提供地が「企業」であり、遠方から通勤をする場合、通勤費が非常に大きくなって、その分社会保険料の負担額も大きくなる可能性があるので注意が必要です。

【社会保険の扶養条件が令和7年10月1日より緩和される予定です】

【お早めに従業員に周知するなど準備を進めてください】

厚生労働省より社会保険の扶養要件が変更となる案が発表され今年の10月1日から変更される見込みがあります。
【10月1日からの変更事項】
19歳以上23歳未満の健康保険の被扶養者認定について、年間収入の要件が130万円未満から150万円未満に引き上げとなります。
ただし配偶者はこの特例の対象外です。
本対象以外の方の要件については、従来通りとなります。

【改正背景、該当例など】
今回の改正は、物価上昇や若年層の就労環境、人手不足を考慮した国の施策によるものです。例えば、アルバイトやパートで働く19歳から23歳未満のお子さんが年間130万円以上150万円未満の収入を得ている場合、10月1日以降に被扶養者として申請が可能となります。

【会社としての準備】
扶養認定には事業主の証明書類や収入確認書類が必要となる場合がありますので、お早めに従業員への周知等ご準備することをお勧めいたします。

【労務管理】社会保険適用促進手当

人手不足が社会的な問題となっていますが、アルバイトやパート等で働く人が労働時間を増やさない理由の一つとして「もっと働きたいけれど、社会保険料が上がるのが困る」「年収が増えると扶養から外れてしまう」といった理由が上げられています。

そういった手取りを気にして働くのを控えてしまう人に対応するため、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を用意しました。そのうちの一つが「社会保険適用促進手当」です。

社会保険適用促進手当とは

社会保険適用促進手当は、年収106万円以上になると厚生年金・健康保険に加入する必要があって、働き控えをしてしまう方への対応策です。

労働時間を増やしたことで労働者が新たに社会保険に加入する場合、厚生年金・健康保険料が負担とならないように、事業主の判断によって、事業主が労働者に社会保険適用促進手当を支給します。

社会保険適用促進手当は、政府から支給されるものではありません。事業主の判断で支給するもので、任意のため、支給しなくてもかまいません。

年収106万円以上になると、厚生年金・健康保険に加入する必要がある人とは

厚生年金保険の被保険者数が51人以上※の企業等で働く短時間労働者のうち、次の要件を満たす人です。(※令和6年10月から)

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
  3. 学生でないこと

社会保険適用促進手当の社会保険料の取扱い

社会保険適用促進手当を支給する場合に、社会保険料について次のような特別な取扱いがあります。

  • 新たに社会保険に加入することになった人の社会保険適用促進手当の金額は、労働者本人が負担する社会保険料の金額までは保険料の計算に含めない
  • 労働者間の公平性を考慮するため、同じ企業の中で、すでに社会保険に加入している労働者にも社会保険適用促進手当を同じ条件で支給する場合は、特例的に同じように扱う

(標準報酬月額が10.4万円以下の方が対象)

画像は日本年金機構「年収の壁・支援強化パッケージ」より

社会保険料は、新たに加入するとき等に基本給・各種手当を加えた1カ月の総支給額を申告することで決まりますが、この総支給額から上記の条件の社会保険適用促進手当を除くことができます。

なお、標準報酬標準報酬月額・標準賞与額の算定から除外できる期間は、それぞれの労働者について、社会保険適用促進手当によって保険料の負担を軽減した最初の対象月から最大2年間です。

2年が経過した後は、通常の手当と同じように、標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めて保険料を計算するようになります。

社会保険適用促進手当は、残業代の計算に含めるか

残業代の計算にあたっては、他の手当と同様に考えるため、社会保険適用促進手当が毎月支払われる場合は残業代の計算(割増賃金の算定基礎)に含めます。

「割増賃⾦の基礎となる賃⾦」から除外できるもの
① 家族⼿当
② 通勤⼿当
③ 別居⼿当
④ ⼦⼥教育⼿当
⑤ 住宅⼿当
⑥ 臨時に⽀払われた賃⾦
⑦ 1か⽉を超える期間ごとに⽀払われる賃金
①〜⑦は、例⽰ではなく、限定的に列挙れる賃⾦されれているものです。これらに該当しない賃⾦は全て算⼊しなければなりません。

なお、社会保険適用促進手当を毎月支払わずに「⑥ 臨時に⽀払われた賃⾦」もしくは「⑦ 1か⽉を超える期間ごとに⽀払われる賃金」として支払う場合は、「割増賃⾦の基礎となる賃⾦から除外できるもの」に該当するため、残業代の計算に含めないようになります。

社会保険適用促進手当は、労働保険(労災保険、雇用保険)の対象になるか

労働保険では特例的な扱いをされないため、含めて計算するようになります。

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」

社会保険適用促進手当を支給した事業主には、労働者1人当たり最大50万円が助成されるキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」が用意されています。
なお、助成金には細かい要件があるため、申請をする場合には詳細の確認が必要です。

画像は厚生労働省キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(リーフレット)(令和6年8月27日更新)より

【労務管理】入社した月に退職した場合の社会保険料

様々な事情で「入社した月に退職」する人は一定の割合でいますが、社会保険の取り扱いが「入社した翌月以降に退職する場合」と「入社した同じ月に退職する場合」で異なるものがあります。


フルタイム勤務等で健康保険・厚生年金保険に加入する人について、入社した同じ月に退職する場合の取り扱いをまとめます。

国民健康保険の場合

国民健康保険は、他の医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入していない全ての住民を対象とした医療保険制度です。
都道府県や特別区・市町村が保険者である「市町村国保」と、業種ごとに組織される「国民健康保険組合」があります。

入社した月に退職して、同月に国民健康保険の加入と脱退をするケース

入社した月に退職して、同月に国民健康保険の加入と脱退をするケースとして、次のような場合が考えられます。

①入社前(家族の扶養に入っている)

⇒国民健康保険組合に加入している事業所にフルタイム勤務で入社(国保に加入)
⇒退職して家族の扶養に入る(国保を脱退)

②入社前(前の勤め先で健康保険に加入している)

⇒国民健康保険組合に加入している事業所にフルタイム勤務で入社(国保に加入)
⇒退職して次の勤め先で被用者保険に加入(国保を脱退)

国民健康保険料は、月末に加入しているかどうか

国民健康保険料は、月末に加入者である場合にのみ、保険料の納付が必要になります。

そのため、同じ月に入退社(国保に加入して脱退)した場合、退職日が月末でなければ保険料はかかりません。

健康保険の資格喪失日は「退職日の翌日」ですので、退職日が末日の場合は、同じ月に入退社(国保に加入して脱退)した場合でも1カ月分の保険料がかかります。

勤務先で健康保険に入っている場合(被用者保険)

法人や一定の個人事業主の事業所は、フルタイム勤務等で被保険者となるべき人がいる場合は、原則として被用者保険の健康保険に加入することになります。

※国民健康保険組合の理事長と厚生労働大臣の承認を得て国民健康保険組合に加入している一部事業所を除く

健康保険の保険者には全国健康保険協会と健康保険組合の2種類があります。

全国健康保険協会(協会けんぽ) 全国健康保険協会(協会けんぽ)は、健康保険組合に加入している組合員以外の被保険者の健康保険を管掌しています。
主に中小企業で働く従業員やその家族約4,000万人が加入している日本最大の医療保険者です。
健康保険組合 健康保険組合は単一企業や同種同業の企業が合同で厚生労働大臣の認可を受けて設立したもので、その組合員である被保険者の健康保険を管掌しています。
入社した月に退職して、同月に被用者保険の加入と脱退をするケース

入社した月に退職して、同月に被用者保険の加入と脱退をするケースとして、次のような場合が考えられます。

①入社前(家族の扶養に入っている)

⇒被用者保険が適用されている事業所にフルタイム勤務で入社(被用者保険に加入)
⇒退職して家族の扶養に入る(被用者保険を脱退)

②入社前(転職前の勤務先で被用者保険に加入している)

⇒被用者保険が適用されている事業所にフルタイム勤務で入社(被用者保険に加入)
⇒退職して国保に加入(被用者保険を脱退)

被用者保険の同月得喪はその月分の保険料がかかる

被用者保険に加入している場合、「入社した翌月以降に退職する場合」は被保険者の資格喪失日(退職日の翌日)の属する月の保険料は徴収されません。
しかし、「入社した同じ月に退職する場合」は別で、退職日に関わらず、その月分の保険料がかかります。

資格取得と喪失が同じ月に発生することを「同月得喪」といいます。

厚生年金保険の場合

日本の公的年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する国民年金と、会社員や公務員の方が加入する厚生年金保険の2階建ての構造になっています。

法人や一定の個人事業主は厚生年金保険の強制適用事業所のため、被保険者となるべき人がいる場合は必ず加入させる必要があります。

入社した月に退職して、同月に厚生年金保険の資格取得と喪失をする場合、まずは被用者保険の場合と同じように退職日に関わらずその月分の保険料がかかるので、給与明細から厚生年金保険料が引かれることになります。

厚生年金保険の場合、還付される場合がある

しかし、厚生年金保険の場合、退職後さらに同じ月に転職して厚生年金保険の資格を取得したり、国民年金の資格を取得したりした場合は、退職した会社の厚生年金保険料は還付されることとなります。

この場合、次のような流れで厚生年金保険料が還付されます。

  1. 年金事務所から退職した会社あてに厚生年金保険料の還付についてのお知らせが送付される
  2. 日本年金機構から退職した会社に厚生年金保険料が還付される
  3. 給与から引かれた厚生年金保険料を、会社から退職した従業員に還付する

入社した同じ月に退職する場合の社会保険の取り扱いまとめ

まとめると、次のようになります。

保険の種類月末退職かどうか保険料の発生有無補足
国民健康保険月末退職発生月末に加入者である場合に納付が必要
国民健康保険月途中退職発生しない同月に加入・脱退でも月末に在籍していなければ不要
被用者保険
(健康保険)
月末・月途中どちらも発生同月得喪の扱いになるため徴収される
厚生年金保険月末・月途中どちらも発生同月に次の資格取得があれば還付される

【労務管理】65歳以降の介護保険料、医療費の自己負担割合と在職老齢年金制度

65歳以降の介護保険料、医療費の自己負担割合、在職老齢年金制度についてまとめてみます。

介護保険料

40歳から64歳まで

40歳から64歳までは、介護保険第2被保険者として、健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。
勤務先で社会保険に加入している場合、40歳から64歳までは給与から天引きされて支払うかたちになっています。

65歳以降

65歳以降は介護保険第1号被保険者となるので、勤務先から給与を支払われる場合でも、65歳以降は給与から天引きされなくなり、個人で介護保険料を市区町村へ納めるようになります。
原則として年金から天引きされますが、年金受給額が一定額未満等の場合は納付書で支払ったり口座振替をしたりするようになります。

医療費の自己負担割合

病院等を受診したときに支払う医療費の自己負担割合は、年齢によって次のように定められています。(令和7年3月1日時点)

6歳(義務教育就学前)未満自己負担割合2割
70歳未満自己負担割合3割
70歳から74歳自己負担割合2割、ただし現役並み所得者は3割。
75歳以上自己負担割合1割。
ただし、現役並み所得者以外の一定所得以上の人は2割。現役並み所得者は3割。
70歳から74歳の間

70歳から74歳の間の医療費の自己負担割合は、所得に応じて2つに別れています。

勤務先で健康保険に加入している場合

  • 標準報酬月額が28万円未満の方は、自己負担割合2割※
  • 標準報酬月額が28万円以上の方は、自己負担割合3割

※誕生日が昭和19年4月1日生まれ以前の場合の一部負担金等の軽減特例措置があります。

標準報酬月額というのは、勤務先で支払う社会保険料の基礎となる金額です。入社して初めて社会保険に加入した時や毎年の標準報酬決定の時などに勤務先から通知されます。

国保の場合

原則として住民税課税所得145万円以上の場合、3割負担になります。

※収入合計額による例外もあります。

また、3割負担に該当する場合、医療費が高額になった場合の上限額(高額療養費の自己負担限度額)が標準報酬月額や課税所得によって3つに分かれます。

画像は厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」より

75歳以上

75歳以上になると、医療費の自己負担割合は所得に応じて3つに別れます。

現役並み所得者住民税課税所得145万円以上
※収入合計額や生年月日による例外もあります。
自己負担割合3割
一定以上所得者住民税課税所得が28万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、後期高齢者が2人以上の場合計320万円以上自己負担割合 2割
※2割負担の場合、令和7年9月30日までは1か月の外来医療費の配慮措置があります。
一般住民税課税所得28万円未満(「一定以上所得」以外)自己負担割合 1割

3割負担に該当した場合、医療費が高額になった場合の上限額(高額療養費の自己負担限度額)は課税所得額によって3つに分かれます。

画像は兵庫県後期高齢者医療広域連合「後期高齢者医療制度のご案内」より

在職老齢年金(給与と老齢年金の調整)

老齢厚生年金は、受給権がある方は原則として65歳から受給できます。

老齢厚生年金を受給しながら働いている方が勤務先で厚生年金保険に加入している場合、給料と年金の合計額に応じて年金の支給額が調整される場合があります。

老齢厚生年金の「基本月額」と
「総報酬月額相当額」の合計が
「50万円」以下の場合
全額支給
老齢厚生年金の「基本月額」と
「総報酬月額相当額」の合計が
「50万円」を超える場合
次の計算式によって調整された額が支給されます。
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
  • 50万円は、令和6年度の支給停止調整額です。
  • 「基本月額」は、配偶者や子どもなどを扶養している場合に追加される「加給年金額」を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分の月額です。
  • 「総報酬月額相当額」は、おおざっぱにいうと、その月以前1年間の年収を12で割った額のようなものです。具体的には、勤務先の標準報酬月額に、その月以前1年間に支払われた標準賞与合計額を12で割った金額を加えたものです。

その他、厚生年金基金に加入していた期間がある場合など別途細かい計算のルールが定められています。

支給額が調整されている場合は、「総報酬月額相当額が変わった月」や「退職日の翌月」に調整額の見直しとなります。退職して1カ月以内に再就職して厚生年金保険に加入した場合は調整額の見直しがされません。

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