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【労務管理】スーパー銭湯でマッサージに従事していた者の労働者性の判断

労災の給付を申請したものの不支給とされた場合、まず労働者災害補償保険審査官に審査請求ができます。その決定にも納得できない場合は、さらに労働保険審査会に再審査請求をすることができます。

労働保険審査会

労災保険や雇用保険の給付決定に対する不服申立てについて、再審査請求の審理・裁決を行う厚生労働省の機関。

労災保険法が適用される労働者

労災保険法が適用される労働者とは、労働基準法における労働者性の判断と同様に、契約の形式ではなく、実際の働き方などを踏まえて判断されます。

スーパー銭湯でマッサージに従事していた者の労働者性の判断を求めた事件

スーパー銭湯でマッサージに従事していた者の労働者性の判断を求めた事件についてご紹介します。(令和元年労第322号)

事件の概要

請求人はスーパー銭湯内のマッサージ店においてリラクゼーションマッサージを施術する者。
マッサージ施術中に右肩に傷病を負い、業務上の事由によるものであるとして労働基準監督署に療養補償給付の請求をしたものの、不支給とされたので、行政の決定を不服として審査請求をしました。

裁決の内容

請求人の主張は認められず、再審査請求は棄却されました。

次の「労働者性の判断のポイント」を総合的に判断した結果、請求人と事業場との間に使用従属関係は認められず、請求人は労災保険法の適用のある労働者とはいえないと判断されました。
そのため、本件の傷病が業務上の事由によるものかどうかを検討するまでもなく、労災保険の給付対象とはなりませんでした。

労働者性の判断のポイント

(昭和60年労働基準法研究会報告より)

1.「使用従属性」に関する判断基準
(1)「指揮監督下の労働」
仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
業務遂行上の指揮監督の有無
拘束性の有無
代替性の有無
(2)「報酬の労務対償性」に関する判断基準
2.「労働者性」の判断を補強する要素
事業者性の有無
専属性の程度
その他

1.「使用従属性」に関する判断基準
(1)指揮監督下の労働にあるか
仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無について

仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無については、当該請求人には出勤について諾否の自由があり、出勤の頻度やシフトの調整をすることが可能な実態であった。また、請求人の平成30年の出勤日数をみると、1月~8月まで、勤務なし~12日間程度と出勤日数が少ない。

業務遂行上の指揮監督の有無について

業務遂行上の指揮監督の有無については、事業場従業員であるトレーナーはマッサージ師の中の誰が顧客の施術をするか等の業務の段取りを行っていたが、請求人が指揮監督を受けていたとはいえない。

なぜかというと、顧客から指定されたコースにおいてどのように施術を行うかなどについてはおおむね各マッサージ師の裁量に任されていたと認められる。トレーナーが、請求人に対して、顧客にどのように施術を行うかなどの業務の具体的内容について逐一業務指示をしていたとは認められない。

場所的・時間的拘束性の有無について

場所的・時間的拘束性の有無については、請求人はマッサージ師としての業務の性質上、事業場においてシフトで決められた時間に業務を行うことから、場所的拘束性はあった。
しかし、時間的拘束性は高いとは言えない。一部の期間のタイムカードは存在するものの、タイムカードで事業場が時間管理を行っていた事実は認められず、また、出勤日は自由度の高いシフト制であることや、シフト以外の日に兼業することは禁止されていない。

代替性の有無について

代替性の有無については、事業場のトレーナーがシフトを組んでいるため、請求人のシフト部分に事業場の許可なく他の人が替わることはないため、代替性は認められない。

(2)報酬の労務対償性

請求人の報酬は、施術コースに応じて支払われる。実態は、出勤日数に最低保証分の金額を掛けて算出される金額から保険等の諸経費を差し引いた金額となっている。そうすると、請求人の報酬は、施術コースに応じて支払われる業務委託料としての性質があり、労務対償性はないものと判断された。

2.「労働者性」の判断を補強する要素
事業者性の有無

請求人は、確定申告は自分でしており、雇用保険や社会保険の被保険者ではないことは、事業者としての性格を強める要素となる。

専属性の程度

出勤日の自由度の高いシフト制であることや、シフト以外の日に兼業することは禁止されていないことから、専属性の程度は低く、事業者性を強める要素となる。

【労務管理】2026年10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります

育児期間中の経済的な支援として、国民年金第1号被保険者が1歳までの子を養育する場合、国民年金保険料の納付が免除される育児免除制度が2026年10月から新たに始まります。

国民年金第1号被保険者とは

日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人のうち、自営業者、農業者、学生、無職の方など、第2号・第3号被保険者でない方。

※20歳以上65歳未満で海外に住んでいる日本人など、希望して国民年金に任意加入する任意加入被保険者もいますが、任意加入被保険者は国民年金育児免除制度の対象ではありません。

国民年金保険料の育児免除制度の対象となる人

国民年金第1号被保険者のうち、令和8年10月1日以降、1歳になるまでの子を養育する実父母・養父母が対象となります。

子を養育する実父母・養父母とは、(1)と(2)どちらの条件も満たす人です。
(1)子と身分(親子)関係が継続していること
(2)子と同一住所であること

所得要件や性別要件はありません。
第1号被保険者であれば、夫婦ともに育児免除制度の対象です。

なお、子は、実子および養子のほか、特別養子縁組の監護期間にある子等も対象となります。

国民年金保険料が免除される期間

子が1歳になる誕生日の前月までが免除される期間となります。

実母で国民年金保険料の産前産後期間の免除制度を受けている場合、引き続く9カ月間、国民年金保険料が免除されます。
実父・養父母や、産前産後免除期間を有しない実母の場合、子を養育することとなった日の属する月から、1歳になる誕生日の前月までの期間が対象となります。

※すべて令和8年10月1日以降の期間に限ります。
令和8年10月1日よりも前から子を養育している場合、令和8年10月1日以降、子が1歳になる誕生日の前月までの期間が育児免除に該当します。

育児免除の手続き

要件に該当した場合、原則として自分ですみやかに届出をする必要があります。

※実母で産前産後免除制度の対象となっており、産前産後免除期間が令和8年9月以降に終了して引き続き子を養育していることが日本年金機構において確認できる方は、届出の必要はありません。
※令和8年10月1日よりも前から子を養育している場合は、令和8年10月1日以降に届出する必要があります。

  • 届出先:住民登録をしている市役所・町村役場の国民年金担当窓口
  • 電子申請の場合:マイナポータルから

なお、育児免除を受けた後、要件に該当しなくなった場合(子と同居しなくなった場合等)は、育児免除終了の手続きをする必要があります。ただし、子が1歳に到達し、期間満了となった際は手続き不要です。

育児免除期間は保険料を納付したものとして反映

育児免除期間として保険料の納付が免除された期間は、保険料を納付したものとして、将来の老齢基礎年金の受給額に反映されます。

また、すでに保険料を納付している期間や、法定免除に該当している期間、国民年金保険料免除・納付猶予、学生納付特例が承認されている期間についても、届出することで育児免除期間として取り扱われます。
保険料を納付している期間の保険料は、充当または還付されます。

【労務管理】シフト制労働者の年次有給休暇の付与日数の考え方

使用者は、一定の要件を満たした全ての労働者に対して年次有給休暇を与えなければなりません。

労働基準法
(年次有給休暇)
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

年次有給休暇は、業種や業態に関わらず、また、正社員やパートタイムなど働き方の区分なく付与されます。
フルタイム労働者ではないパートタイムなどでも、一定の要件を満たす場合は、所定労働日数に応じて比例して付与されます。

法律および厚生労働省令で定められている付与日数

(1)通常の労働者の付与日数
継続勤務年数6カ月1年6カ月2年6カ月3年6カ月4年6カ月5年6カ月6年6カ月以上
付与日数10日11日12日14日16日18日20日
(2)週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
継続勤務年数と付与日数
週所定労働日数1年間の所定労働日数※6カ月1年6カ月2年6カ月3年6カ月4年6カ月5年6カ月6年6カ月以上
4日169日~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121日~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73日~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48日~72日1日2日2日2日3日3日3日

※週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合

シフト制の場合の所定労働日数の考え方

正社員などのフルタイム労働者や、パートタイムなどの働き方でも「所定労働日:月~木曜日、▲時~■時」のように固定の勤務体系だと週所定労働日数が(1)または(2)のどれに当てはまるか分かりやすいのですが、シフト制での勤務の場合、労働契約の締結時点では労働日や労働時間が具体的に定められておらず、勤務シフトによって具体的な労働日や労働時間が決まり、結果的に月や週によってバラつきがあることも珍しくありません。

このようにあらかじめ所定労働日数が明確に定められていない場合でも、年次有給休暇の付与は必要です。このようなケースで付与する年次有給休暇の日数について、厚生労働省から「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の 適切な雇用管理を行うための留意事項」が公表され、考え方が示されました。

所定労働日数を算出しがたい場合には、次の日数を、基準日における1年間の所定労働日数とみなして年次有給休暇の付与日数を算出して差し支えありません。
・雇入れ6か月経過後の年次有給休暇の付与に当たっては、雇入れから6か月の労働日数の実績を2倍した日数
・雇入れ1年6か月経過後以降の年次有給休暇の付与に当たっては、前年の労働日数の実績

年次有給休暇を付与する最初のタイミングは雇い入れ後6か月経過したときですが、その場合はまだ1年間勤務していないため、6か月間の実労働日数を2倍にして1年間の所定労働日数とみなします。
2回目以降(雇入れ1年6か月経過後以降)は、前年1年間の労働日数の実績を1年間の所定労働日数とみなして算出します。

なお、シフト制の労働条件として一定の目安が労働条件で定められているときは、その日数を所定労働日数とみなして算出した年次有給休暇の付与日数が、実労働日数を用いて算出した付与日数を上回る場合に限って「目安となる労働日数」等を用いて年次有給休暇の付与日数を算出しても差し支えないとされています。

シフト制の労働条件として一定の目安が労働条件で定められているときの例
「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」
「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」、「1か月○日以上勤務」
「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など

【労務管理】カスタマーハラスメント対策で事業主がするべきこと

令和8年10月1日から労働施策総合推進法が改正され、職場におけるカスタマーハラスメント対策が事業主の義務になります。

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(令和8年10月1日 施行)
第三十三条 
事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(次条第五項において「顧客等」という。)の言動であつて、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下この項及び次条第一項において「顧客等言動」という。)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

職場におけるカスタマーハラスメントとは

職場におけるカスタマーハラスメントとは、次のようなものをいいます。

誰が 顧客や取引先、施設の利用者、その他事業に関係がある人
どのような行為

社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害されること

つまり、顧客や取引先からの非常識な言動によって労働者の就業環境が悪くならないよう、事業主は対策をしなければいけないということです。

なお、職場とは、現場での対応だけでなく、電話やメール、SNSなどインターネット上での言動も含まれます。

社会通念上許容される範囲を超えた言動とは

その要求の内容や言動の態様が社会通念上許容される範囲を超えるものとして、次のような言動が該当する場合があります。

  • 商品やサービスと関係のない過度な要求や、不当な損害賠償請求
  • 暴言や脅迫、人格を否定する発言
  • 長時間にわたる居座り、執拗なクレームなど

一方で、正当な苦情や商品・サービスの改善を求める声まで制限するものではありません。

事業主が講じなければいけない措置

事業主が講じなければいけない措置は、次のようにまとめられます。

事業主の方針等を明らかにして周知をする・カスタマーハラスメントから労働者を保護する旨の方針を明確にして労働者に周知・啓発する

・カスタマーハラスメントの内容や、対応方法をあらかじめ労働者に周知する

・特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対応方針をあらかじめ定めて、労働者に周知して体制を整備する
カスタマーハラスメントに対する相談体制の整備・事業所内に相談窓口を設置して労働者に周知する

・相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする
カスタマーハラスメントが起きてしまった後の対応・事実関係を迅速かつ正確に確認する

・被害者に対する配慮のための措置を行う

・再発防止に向けた措置を行う
その他・相談者等のプライバシー保護、相談したこと等を理由として不利益な取扱いをしないことをあらかじめ労働者に周知・啓発する。

・自社の労働者が取引先等の他社の労働者に対してカスタマーハラスメントを行った場合は、その取引先等へ必要な協力を行う。等

カスタマーハラスメントへの対応方法

カスタマーハラスメントが起きた時の社内の対応方法としては次のような方法が例として考えられます。

  • 上司にその場の対応の方針について指示を仰ぐ
  • できる限り一人で対応しない
  • 犯罪に該当する可能性がある言動は警察へ通報する
  • 本社・本部等へ情報共有を行って指示を仰ぐ   など

カスハラ対策のマニュアルや規程の作成

カスタマーハラスメント対策について、社内でマニュアルや規程を作成することまでは法律で定められていませんが、実務上は、対応方法を統一し、従業員が安心して対応できるようにするためにも、何らかのマニュアルや規程を整備しておくことをお勧めします。

東京都で公開しているカスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル

東京都では、カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアルを公開しています。

東京都 カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル 

東京都が公開していますが、全国の事業者でも参考になる内容です。


事業者マニュアルのひな形(Word形式)では、カスタマーハラスメントの定義から基本方針、対応の流れや社内体制などの内容が網羅されているので、ひな形を参考に自社に合わせて使うのも良いと思います。

農林水産省が公開しているカスタマーハラスメント対策ガイドライン

農林水産省では対策ガイドラインや、飲食店のカスハラ対策ガイドブックを公開しており、カラーで非常にわかりやすい資料です。

農林水産省 カスタマーハラスメント対策ガイドライン

労働者への啓発や社内研修資料として使えると思います。


令和8年10月1日の施行までに、相談窓口の設置や対応手順の確認、従業員への周知など、自社の実情に合わせて準備を進めておくことをお勧めします。

【労務管理】令和8年10月1日から雇い入れ時の労働条件明示事項が追加されます

令和8年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れた時、労働条件明示事項として、新たに「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる」ことを明示することが必要となります。

(画像は厚生労働省リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」から抜粋)

これはパート・有期法施行規則(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則)が改正され、令和8年10月1日の施行を反映したものです。
第2条第1項4号が追加になります。

(法第六条第一項の明示事項及び明示の方法)
第二条 法第六条第一項の厚生労働省令で定める短時間・有期雇用労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項は、次に掲げるものとする。
一 昇給の有無
二 退職手当の有無
三 賞与の有無
四 法第十四条第二項の規定による説明を求めることができる旨
五 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
2 事業主は、法第六条第一項の規定により短時間・有期雇用労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない。

令和8年10月1日以降の労働条件通知書の様式

令和8年10月1日以降にパートタイム・有期雇用労働者を採用する場合は、労働条件通知書や雇用契約書の様式を新しい内容にする必要があります。

厚生労働省のHPで令和8年10月1日以降使用する労働条件通知書のひな形が公開されています。

主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)

明示事項の追加は「雇入れ時に交付する労働条件通知書等」が対象

なお、この明示事項の追加は「雇入れ時に交付する労働条件通知書等」が対象です。
令和8年10月1日時点で既に雇用しているパートタイム・有期雇用労働者について、直ちに労働条件通知書を再交付しなければならないものではありません。

同一労働同一賃金ガイドライン等の改正と合わせて確認が必要

同じく令和8年10月1日施行となる同一労働同一賃金ガイドライン等の改正と合わせて確認し、待遇差について説明を求められた際に適切に対応できるよう、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間の待遇差の内容や理由について整理しておくことも重要です。

【参考】

【労務管理】同一労働同一賃金ガイドライン等の改正について

【労務管理】無期転換ルールと継続雇用の高齢者に関する特例

無期転換ルールとは

無期転換ルールとは、条件を満たした有期労働契約者が使用者に無期雇用への転換を申込むと、使用者はその申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約が成立するルールです。

使用者は申し出を拒否することはできません。

対象者いわゆる契約社員で、労働契約期間の定めがある労働者。
契約社員やパートタイマー、アルバイト、派遣社員など名称は問いません。
ルール有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えるとき、労働者が使用者に申込みをすると、使用者の承諾がなくても、法律上当然に無期労働契約が成立します。

労働者が申込みをできるタイミングは、繰り返し契約期間が更新されて、契約期間が通算5年を超えることになる契約の初日から末日までの間です。

※契約期間と次の契約期間の間に一定期間以上の空白期間(クーリング期間)がある場合、通算契約期間はリセットされます。クーリング期間は、直前の有期労働契約の契約期間に応じて、1カ月から6カ月まで定められています。

無期転換ルールができた背景

有期労働契約者については、雇用が不安定であり、待遇面でも正規労働者と比べて格差があることが指摘されていました。
また、有期労働契約が更新され、長期間働く労働者も少なくないことから、雇用の安定を図る目的で無期転換ルールが導入されました。

無期転換ルールで転換した後の契約内容

「無期転換ルールで転換したらその会社の正社員になれる」というわけではありません。
無期転換ルールで転換した後の契約内容は、労働契約法第18条で次のとおり規定されています。

期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

つまり、無期転換後の労働条件は

  1. 原則として契約期間以外の労働条件は有期労働契約の時と内容と同じ
  2. 別途、就業規則や個別の労働契約などで無期転換後の労働条件を定めていれば、労働条件の変更もできる

ということです。

就業規則や労働協約で無期転換後の条件を定める場合

就業規則や労働協約で無期転換後の労働条件を定めることができます。

就業規則や労働協約は、会社として一定の範囲の労働者に適用されるルールです。

  • 会社は経営計画の中で人件費、人員計画をどのように考えるか。その中で無期転換後の労働者をどのような存在と位置付けるか。
  • 就業規則等で無期転換後の労働条件を定め、労働者に周知する。

無期転換後の労働条件を定めて社内ルールとして定着することで、無期転換を考える有期労働契約者は、自分が無期転換をするかどうか決める判断材料とすることができます。
事前に条件がわかることで、労使トラブル発生の防止にもつながるでしょう。

なお、無期転換後の無期雇用労働者について、就業規則等で定年を定めることは可能です。

個別の労働契約で無期転換後の労働条件を定める

就業規則等に定めがなくても、当事者間で合意があれば、「別段の定め」として労働条件を有期労働契約の時と別のものにすることができます。
逆に、合意されなければ「別段の定め」にならないので、無期転換後も有期労働契約時と同一の労働条件にすることになります。

「別段の定め」の内容を定める場合、法の趣旨を踏まえて公序良俗に反しない内容にする

「別段の定め」の内容は、無期転換ルールの趣旨を阻害する場合や公序良俗に反する場合には、無効と判断される可能性があります。

無期転換後の労働条件として、勤務地や職種の変更が条件となったり、賃金の変更があったり、責任の程度が増えたりといったことが考えられます。しかし、それが合理的な理由であるのか、無期転換ルールの趣旨を阻害しないか、公序良俗に反しないかということは慎重に検討する必要があります。

社会通念上不適切と思われる取扱いをすることで労使トラブルを招くことは企業にとっても大きな損失となりますので、法の趣旨を踏まえた運用が求められます。

継続雇用の高齢者の特例とは

無期転換ルールの特例として「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」が定められています。

無期転換ルールの特例の適用を希望する事業主が、特例の対象者について雇用管理に関する特別の措置についての計画を作成し、労働局から認定された場合に、特例の対象者は無期転換権が発生しないことになります。

特例の対象者:

  1. 博士の学位を有する者や公認会計士、医師など、高度専門職を行う有期雇用労働者
  2. 定年に達した後、同一の使用者※に引き続いて雇用される有期雇用労働者

※いわゆるグループ企業などに定年後引き続き雇用される場合も含みます。

継続雇用の高齢者については、事業主が認定を受けた場合、定年を既に迎えている方も特例の対象となります。

ただし、次の場合は特例の対象外となります。

  • 労働者が既に無期転換申込権を行使している場合
  • 他社で定年退職し、その後に雇用された労働者
  • 定年に達しない時点で無期雇用から有期雇用に転換した労働者

特例は、労働局の認定を受けてはじめて適用されます。
定年後再雇用者がいる場合には、無期転換申込権が発生する前に申請状況を確認しておくことが重要です。

継続雇用の高齢者にかかる認定申請(第二種計画認定申請)

定年後継続雇用される有期雇用労働者の無期転換ルールの特例を受けるには、「継続雇用の高齢者にかかる認定申請(第二種計画認定申請)」を労働局に行います。

  • 申請は、本社・本店が行います。
  • 申請の時点で特例の対象となる労働者がいなくても、将来、対象労働者が生じる見込みがあれば申請ができます。
  • 高年齢労働者に対する適切な雇用管理措置を計画します。(高年齢者雇用推進者の選任・職業訓練の実施、作業施設・方法の改善など)
  • 申請時点において、高年齢雇用確保措置を完了します(65歳以上への定年の引き上げ ・希望者全員を対象とした継続雇用制度の導入)
  • 就業規則の写しなど、高年齢雇用確保措置を行っていることが明らかである書類を添付します。

関連:【労務管理】無期転換申込権が発生する有期労働契約更新時の明示義務

【労務管理】同一労働同一賃金ガイドライン等の改正について

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、同じ企業内において、いわゆる正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員(以下、「有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者」のことを言います)との間の『不合理な待遇差の解消』を目指すものです。

次の法律の中で内容が定められています。

  • 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、「パートタイム・有期雇用労働法」と書きます)
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、「労働者派遣法」と書きます)

不合理な待遇差の解消の取組をすることで、「どのような雇用形態でも納得が得られる処遇」「多様な働き方を自由に選択」ができるようにします。

同一労働同一賃金が定められた背景

非正規労働者の待遇は、一般に、正社員と比べて働き方や貢献度合に見合ったものとならず、低くなりがちな状況でした。
そのため、それぞれの企業において、正社員と非正規社員の働き方の実態を考慮して雇用管理の改善に関する措置を講じ、賃金や教育訓練、福利厚生などにおいて差別的取扱いや不合理な待遇の差をなくし、均等・均衡待遇の確保を推進することが法律で定められました。

同一労働同一賃金のルールが変わります(令和8年10月1日施行)

パートタイム・有期雇用労働法の第8条では、すべてのパートタイム・有期雇用労働者を対象として、不合理な待遇の禁止が定められています。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
(不合理な待遇の禁止)
第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

いわゆる正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員(パートタイム労働者等)の待遇の違いが不合理と認められるかどうかの判断は、基本給、賞与、各種手当、休暇などの個々の待遇ごとに、その待遇の『性質・目的』に照らして適切と認められる事情を考慮して判断するものとされています。

待遇差が不合理かどうかは、各待遇の「性質・目的」を踏まえつつ、次の事情を考慮して判断されます。

  1. 職務内容
  2. 職務内容・配置の変更範囲
  3. その他の事情(職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行、労使交渉の経緯等)

これについて、厚生労働省では『同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)』を定め、どのような待遇差が不合理であるか、どのような待遇差が不合理ではないのか、原則となる考え方や具体例を示しています。

今回、同一労働同一賃金の施行から5年が経過したことを踏まえて、ガイドラインを含む省令・指針が改正され、令和8年10月1日から施行・適用されることとなりました。これまでの最高裁判決の内容も踏まえて追記されたかたちです。

ガイドラインに新たに追加された内容

賞与

賞与は「労務の対価の後払い」「功労報償」「生活費の補助」「労働者の労働意欲の向上」など、様々な性質や目的が含まれうるものです。
これらが非正規社員にも当てはまるにも関わらず、正社員との間の職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められる可能性があります。

退職手当

退職手当は「労務の対価の後払い」「功労報償」等の様々な性質や目的が含まれうるものです。
これらが非正規社員にも当てはまるにも関わらず、正社員との間の職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められる可能性があります。

無事故手当

正社員と業務の内容が同じ非正規社員には、正社員と同一の無事故手当を支給しなければいけません。

家族手当

労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規社員には、正社員と同一の家族手当を支給しなければいけません。

なお、配偶者の収入が一定以下の場合に支給されるいわゆる「配偶者手当」については、特に女性の短時間労働者の就業調整の要因となっていると指摘されていることから、労使の話合いによって、働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれています。

住宅手当

住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合、正社員と同一の転居を伴う配置の変更がある非正規社員には、正社員と同一の住宅手当を支給しなければいけません。

なお、住宅手当が転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給されるものについても、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、住宅手当の性質や目的を考慮して、不合理と認められる相違がないようにしなければいけません。

福利厚生施設

非正規社員には、正社員と同一の給食施設、休憩室及び更衣室の利用を認めなければいけません。
また、福利厚生施設の利用料金・割引率等の利用条件についても、不合理と認められる相違を設けてはいけません。

病気休職

正社員に病気休職制度がある場合、非正規社員にも同様に病気休職の取得を認めなければいけません。有期雇用労働者については、労働契約の期間を踏まえた対応が必要です。
さらに、正社員に病気休職期間の給与保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規社員にも同一の給与保障を行わなければいけません。

夏季冬季休暇

非正規社員にも、正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければいけません。

褒賞

一定の期間勤続した労働者に付与する褒章がある場合、正社員と同一の期間勤続した非正規社員にも同一の褒賞を付与しなければいけません。

「人材確保・定着のため」だけでは待遇差の理由にならない

いわゆる「正社員人材確保論」として、正社員の確保や定着を理由に、正社員と非正規社員の待遇に差を設ける考え方があります。しかし、待遇差が不合理かどうかは、短時間・有期雇用労働法第8条に基づき、客観的・具体的な実態に照らして判断されます。そのため、「人材の確保や定着を図る目的」という理由だけで待遇差を設けることは認められません。

また、定年後に再雇用された契約社員と正社員との間の待遇差についても、「定年後再雇用」であることだけを理由に、待遇差が当然に認められるわけではありません。

待遇差の解消は、原則として正社員の不利益変更によらないことが求められる

不合理と認められる待遇の相違があった場合、その解消等にあたっては、正社員の労働条件を不利益に変更することなく、非正規社員の待遇の改善を図ることが求められることが追記されました。

その上で、待遇差の解消をするため、やむを得ず就業規則を変更することにより労働条件を不利益に変更する場合は、労働契約法第9条の規定に基づき、原則として労働者と合意する必要があります。

労働者と合意せず、就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更する場合は、労働契約法第10条に基づき、その変更が事情に照らして合理的である必要があります。
ただし、基本的に、こうした対応は、望ましい対応とはいえないとされています。

無期雇用フルタイム労働者、多様な正社員も均衡を考慮すべき

正社員と所定労働時間が同じ無期雇用労働者は、短時間・有期雇用労働法の対象ではありませんが、就業の実態に応じてガイドラインで定める均衡を考慮すべきであることが示されています。
なお、均衡の考慮に当たっては、勤務地限定正社員や職務限定正社員、短時間正社員についても同様です。

今回の改正内容を踏まえて、自社のパートタイム・有期雇用労働者や派遣労働者の待遇について、あらためて点検・見直しが求められます。

【労務管理】算定基礎届の支払い基礎日数について

算定基礎届とは

社会保険に加入している場合、事業主は、毎年、7月1日現在使用している全被保険者と70歳以上被用者について、3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を日本年金機構に届出します。
これを算定基礎届といいます。

算定基礎届は、実際に支払われている報酬と、既に決定されている標準報酬月額との間に大きな差が生じないようにすることを目的に、毎年行われるものです。

厚生労働大臣はこの届出内容に基づいて標準報酬月額を決定します。決定された標準報酬月額は、随時変更がない限り、当年の9月から翌年8月までの各月に適用されます。

3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額とは

4月~6月に『実際に支払われた報酬』を記載します。
細かく言うと、4月~6月に実際に支払われた報酬のうち、支払基礎日数が17日以上(※1 特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)の報酬を記載します。

たまに「社会保険料を高くしないために4~6月は残業をしないで給与を上げないようにしたほうがいい」と言われる場合がありますが、これは必ずしも適切ではありません。
なぜなら、算定基礎届は「支払日ベースで判定される」からです。

例えば、『末締・翌月25日払い』の勤務先であれば、算定基礎届に記載する給与は次のようになります。

4月

3月1日~3月31日勤務分
5月

4月1日~4月30日勤務分

6月

5月1日~5月31日勤務分

つまり、実際には3月~5月に働いた内容が反映されるようになります。

給与の締日・支払日は勤務先によって異なりますので、気になる場合はご自身の勤務先の締日・支払日を確認してください。

※1 特定適用事業所に勤務する短時間労働者とは

特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上※2となることが見込まれる企業等のことです。

※2 企業規模要件は、令和7年の年金制度改正法によって、2035年10月にかけて段階的に企業規模要件が引き下げられることが予定されています。

51人以上の企業

現在

36人以上の企業 2027年10月から
21人以上の企業 2029年10月から
11人以上の企業 2032年10月から
10人以下の企業 2035年10月から

そして、次のすべての要件を満たす場合、「特定適用事業所に勤務する短時間労働者」に該当します。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
  3. 学生でないこと

夜勤労働者で日をまたぐ勤務を行っている場合の支払い基礎日数について

算定基礎届では、支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)の報酬を記載しますが、夜勤労働者で日をまたいでいる場合、「いつからいつまでを1日と考えるのか?」と疑問に思う場合があります。

令和5年6月27日の日本年金機構事業管理部門担当理事あて厚生労働省年金局事業管理課長通知(「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について〔健康保険法〕)では次のように記載されています。

夜勤労働者で日をまたいで労務に就いている場合は、以下のように取り扱う。

①夜勤勤務者が『月給』で給与の支払いを受けている場合
→各月の『暦日数』を支払基礎日数とする。

②夜勤勤務者が『日給』で給与の支払いを受けている場合
→給与支払いの基礎となる『出勤回数』を支払基礎日数とする。ただし、変形労働時間制を導入している場合は、下記の③に準じて取り扱う。

③夜勤勤務者が時給で給与の支払を受けている場合
→各月の『総労働時間をその事業所における所定労働時間で除して得られた日数』を支払基礎日数とする。
なお、勤務中に仮眠時間等が設けられている場合、これを労働時間に含めるか否かは、その事業所の業務の実態、契約内容、就業規則等によって仮眠時間等が給与支払いの対象となる時間に含まれているかどうかを確認することで判断されたい。

月給、日給、時給によって考え方が変わるので注意が必要です。

【労務管理】安全配慮義務とは

安全配慮義務とは、使用者が労働者の生命・身体、そして心身の健康を守りながら働けるよう、労働契約に伴って必要な配慮を行う義務をいいます。
この義務は、労働契約法第5条に明文化されています。

労働契約法
(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

ここで重要なのは、安全配慮義務が「労働者と特別な約束をしていなくても、労働契約に当然に付随する義務」であるという点です。
労働者の労務提供に対して賃金を支払う義務と並ぶ、使用者の基本的な契約上の義務であると位置づけられています。

判例で確立された「当然の義務」

安全配慮義務は、もともと判例によって認められてきた考え方です。
代表的なものとして、以下の最高裁判例があります。

  • 陸上自衛隊事件 昭和50年2月25日最高裁第3小法廷判決
  • 川義事件 昭和59年4月10日最高裁第3小法廷判決

特に川義事件では、
「通常、労働者は使用者が指定した場所、設備、器具等を用いて労務を提供するため、使用者は、賃金支払義務だけでなく、労働者の生命・身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている」
と明確に示しました。

このような判例の積み重ねを背景として、労働契約法第5条が制定されています。

「生命、身体等」には心身の健康も含まれる

労働契約法第5条の「生命、身体等の安全」には、心身の健康、つまりメンタルヘルスも含まれるとされています。
そのため、安全配慮義務には、単なる事故防止にとどまらず、

  • 長時間労働
  • ハラスメント
  • 強い心理的負荷がかかる業務

といった、心身の健康を害するリスクへの配慮も対象となります。

労働安全衛生法との関係

労働安全衛生法第3条では、事業者の責務として次のように定めています。

労働安全衛生法
(事業者等の責務)
第3条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

ここで押さえておきたい実務上のポイントは、
「労働安全衛生法を守るだけでは事業者が完全に安全配慮義務を果たしたことにはならない」という点です。

労働安全衛生法はあくまでも最低限の守るべき事項です。
使用者は、法で定めた基準以外の労働災害発生の危険防止についても安全配慮義務を負っています。

個別具体的な状況に応じた配慮が不足していれば、安全配慮義務違反と判断され、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
刑事責任(労働安全衛生法違反)と民事責任(安全配慮義務違反)は必ずしも一致しないからです。

安全配慮義務の具体的内容

安全配慮義務の中核は、次の2点に整理できます。

  1. 危険発見・・・職場や作業内容に潜む事故や健康障害のリスクを把握・予測すること
  2. 事前排除(予防)・・・リスクを除去または低減し、残存リスクについては作業者に周知・教育・対策を行って、危険が顕在化しないように対策をする

これらは一律の対応が求められるものではなく、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められます。

労務担当者が押さえるべき実務ポイント

労務担当者としては、次の視点が重要になります。

  • 法令遵守だけでなく、実態に即したリスクの洗い出し
  • 職場環境や業務内容の定期的な見直し
  • メンタルヘルス対策や相談体制の整備
  • 事故・トラブルの「予兆」を見逃さない仕組みづくり

安全配慮義務は、企業を守るためのリスクマネジメントであると同時に、働く人が安心して力を発揮できる職場づくりの土台でもあります。

安全配慮義務を「考えるため」の見える化無料ワークシート

「安全配慮義務」と聞くと、何か難しい特別な対策をしなければならないのでは、と不安になる方も多いのではないでしょうか。

特に小規模事業者の場合、

  • 専任の労務担当者がいない
  • 法律の情報が多すぎて、どこまでやればいいのか分からない

という声をよく耳にします。

まずは自社の状況を整理し、考え、必要な対策をしていくことが大切です。

そこで今回は、小規模事業者の方が「考えるところから始められる」安全配慮義務の見える化シート(Word版)を無料でご紹介します。

専門知識がなくても書けるよう、あえて細かいチェックリストにはしていません。

下記より、無料でダウンロードできますので、まずは書けるところから使ってみてください。

※判断に迷う場合や対応に不安がある場合は、放置せず、専門家にご相談ください。

【労務管理】36協定の特別条項の発動手続き

36協定とは

労働時間は原則として「1日8時間」「週40時間以内」、そして「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と労働基準法で決まっています。

この時間を超えて労働者を働かせる場合は、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長への届出をする必要があります。

36協定を結び、届出をすることで、協定で決めた範囲内で原則の労働時間を超えて労働させることができます。

36協定の効力(刑事免罰効力)は所轄労働基準監督署長への届出をした時点から発生するため、届出を忘れていると効力がないため注意が必要です。

36協定で決めること

36協定では、次のような内容を決めます。

  • 時間外労働を行う理由
  • 時間外労働を行う業務の種類
  • 1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限など

36協定で決められる上限時間

36協定を結んだからと言って、無制限に時間外労働をさせられるわけではありません。

休日労働を含まない『時間外労働の上限』は、原則として「月45時間」「年360時間」と決まっています。
さらに、『時間外労働と休⽇労働の合計』は⽉100時間未満、2~6カ月すべての平均が80時間以内にしなければなりません。

※災害の復旧・復興の建設事業や、自動車運転の業務、医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業等については別途特別な取扱いが定められています。

参考:【労務管理】2024年4月以降の時間外労働の上限規制

36協定の特別条項

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合、『特別条項』を決めることで、原則を超えて次の上限まで時間外労働をさせることができます。

※特別条項は必要性を毎回確認しながら適切に運用することが求められます。また、特別条項を適用させる場合でも、時間外労働は限度時間にできる限り近づけるように努めなければいけません。

【特別条項の上限】

  • 時間外労働・・・年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計・・・月100時間未満、2~6か月すべての平均が80時間以内
  • 時間外労働の上限の原則月45時間を超えることができるのは、年6カ月まで

特別条項を適用させて労働させる理由として「通常は見通せないような業務量の大幅な増加に伴って臨時的に労働させる必要がある場合」をできる限り具体的に定める必要があります。

【臨時的に必要がある場合の例】

  • 予算、決算業務
  • ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • 納期のひっ迫
  • 大規模なクレーム対応
  • 機械トラブル対応              など

「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」などは恒常的な長時間労働に繋がる恐れがあるため認められません。

特別条項を発動するときの手続き

36協定の特別条項を発動する場合、労基署への届出や報告は不要です。

36協定を結ぶ際に決めた「特別条項を発動させるときの手続き」(「労働者代表に対する事前申し入れ」「労働者代表に対する事前通告」など)を社内で手続きを進め、

「発動手続に関する記録」と「健康・福祉確保措置の実施状況」の記録を作成して保存する必要があります。

特別条項発動協議書と通知書の作成例

「発動手続に関する記録」として協議書や通知書を作成することが考えられます。

※こちらの書式はあくまで参考例としてご提供しているものです。ご利用にあたっては、自社の状況に合わせて内容をご確認・調整くださいますようお願いいたします。

 

 

健康・福祉を確保する措置

特別条項を発動して働かせた労働者に対して、どのような健康・福祉を確保するための措置をするのか定めます。特別条項を発動した場合は、これらの措置のうちどれを実施したかを「記録」として残す必要があります。

  • 医師による⾯接指導
  • 深夜業(22時〜5時)の回数制限
  • 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  • 代償休⽇・特別な休暇の付与
  • 健康診断
  • 連続休暇の取得
  • 心とからだの相談窓⼝の設置
  • 配置転換
  • 産業医等による助言・指導や保健指導
  • その他

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