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【労務管理】9月は「職場の健康診断実施強化月間」です

厚生労働省では、9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置づけ、健康診断及び事後措置の実施の徹底、医療保険者との連携を呼びかけています。

職場での健康診断

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づいて、労働者に医師による健康診断を実施しなければいけません。
また、労働者も、健康診断を受けなければいけないことが定められています。

労働安全衛生法
第六十六条(健康診断)
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

事業者に実施が義務づけられている健康診断の種類

事業者が行わなければいけない健康診断には、次のようなものがあります。

雇入時の健康診断          
(労働安全衛生規則第43条)
常時使用する労働者を雇い入れるときに実施する。
※対象労働者が医師の健康診断を受けてから3か月以内の場合の例外あり。
定期健康診断
(労働安全衛生規則第44条)
常時使用する労働者のうち、特定業務従事者ではない者に対して実施する。
1年以内ごとに1回。
特定業務従事者の健康診断
(労働安全衛生規則第45条)
深夜業を含む業務や、有害放射線にさらされる業務など、労働安全衛生規則で定めている特定の業務に常時従事する労働者(特定業務従事者)に対して実施する。
その業務への配置替えの時と、6月以内ごとに1回。
海外派遣労働者の健康診断
(労働安全衛生規則第45条の2)
海外に6ヶ月以上派遣する労働者に対して実施する。
海外に6月以上派遣する時と、帰国後に国内業務に就かせる時。
給食従業員の検便
(労働安全衛生規則第47条)
事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対して実施する。
雇入れの時と、配置替えの時。

健康診断をした後の措置

令和4年労働安全衛生調査(実態調査)によると、一般健康診断を実施した事業所は全体で90.1%で、そのうち所見のあった労働者がいるのは全体で69.8%となっており、約7割の労働者に所見が見られていることがわかります。

従業員数30人未満の事業所では一般健康診断を実施している割合が9割を下回っており、従業員数が少ないほど、一般健康診断の実施率が低い傾向がわかります。

また、所見のあった労働者がいる割合は、従業員数が多い事業所の方が多いです。

所見のあった労働者に対して、措置を講じた事業所は全体で90.8%となっています。そのうち、医師または歯科医師に意見を聴いた割合が最も多く45.3%となっています。

健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

厚生労働省は、健康診断の結果に基づく就業上の措置が適切かつ有効に実施されるため、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を定めています。

健康診断の実施手順を抜粋すると、次のような流れとなります。

(1)健康診断の実施
事業者は、健康診断の受診率が向上するように、労働者に対して周知や指導に努めます。
(2)二次健康診断の受診勧奨等
事業者は、健康診断の結果、二次健康診断の対象となる労働者を把握して、対象者に受診を勧奨します。
また、二次健康診断の結果を事業者に提出するように働きかけます。
※二次健康診断の対象となる労働者とは
一次健康診断の結果、「血圧検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定」す   べての検査項目について『異常の所見』がでている場合。
または、産業医等が二次健康診断を必要と認めたとき。
(3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取
健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、医師等の意見を聴く必要があります。
意見を聴く医師等は、産業医や、産業医の選任義務がない事業場では地域産業保健センターの活用を図ること等が適当です。
事業者は、適切に意見を聴くため、必要な情報提供をします。就業上の措置に関し、その必要性の有無、講ずべき措置の内容等に係る意見を医師等から聴きます。
(4)就業上の措置の決定等
医師等の意見に基づいて、就業区分に応じた就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ対象となる労働者の意見を聴き、十分な話合いを通じて、その労働者の了解が得られるよう努めます。
産業医の選任義務のある事業場では、必要に応じて、産業医の同席の下に労働者の意見を聴くことが適当です。

その他、健康診断について、次のことを留意する必要があります。

  • 健康情報の保護に留意して、適正に取扱いをする。
  • 健康診断結果の記録は保存する。
  • 健康診断結果は、異常の所見の有無にかかわらず、遅滞なく労働者に通知する。
  • 一般健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を受けさせるよう努める。
  • 再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対して、受診を勧奨し、意見を聴く医師等に検査の結果を提出するよう働きかけることが適当。
  • 再検査又は精密検査は、一律には事業者にその実施が義務付けられていないが、有機溶剤予防規則等で特殊健康診断として規定されているものについては、事業者にその実施が義務付けられているので注意する。

【労務管理】裁量労働制とは

労働基準法では、使用者に対して、労働者に原則として1日8時間・週40時間を超えて労働させてはならないと定めています。

しかし、労働時間制を柔軟にするための特別な制度もあり、昭和62年の労働基準法改正(昭和63年4月施行)によって設けられた「裁量労働制」はそのひとつです。

裁量労働制は、『労働の量(実労働時間の長さ)』ではなく『労働の質(成果)』による報酬の支払いを可能にするものとも言われています。

裁量労働制により、効率的な働き方による生産性の向上や、柔軟で多様な働き方につながるといった労使双方にとってのメリットが期待されますが、一方で、正しく運用されないと長時間労働や労働者の心身に負担をかけやすくなってしまう懸念があります。

似たような制度で高度プロフェッショナル制度というものがありますが、高度プロフェッショナル制度は年収1,075万円以上という年収要件がある一方、裁量労働制に年収要件はありません。

裁量労働制の種類

昭和62年の労働基準法改正によって設けられた裁量労働制は、その後何度か法改正を経て、現在は「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の2つがあります。

専門業務型裁量労働制

対象労働者専門性の高い業務として定められた次の20業務に従事する労働者
1 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
2 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。7において同じ。)の分析又は設計の業務
3 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第28号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材若しくは編集の業務
4 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
5 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
6 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
7 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
8 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
9 ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
10 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
11 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
12 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
13 銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)
14 公認会計士の業務
15 弁護士の業務
16 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
17 不動産鑑定士の業務
18 弁理士の業務
19 税理士の業務
20 中小企業診断士の業務
労働時間労使協定で定めた時間を労働したものとみなす(=みなし労働時間)
導入の流れ①次の必要事項等を定めて労使協定を結び、労働基準監督署長に届出する。
【労使協定の内容】
・対象とする業務
・1日の労働時間としてみなす労働時間
・対象業務の遂行手段等について、使用者が具体的な指示をしないこと
・健康・福祉確保措置
・苦情処理措置
・制度の適用に労働者本人の同意を得なければいけないこと
・制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
・制度の適用に関する同意の撤回の手続き など
②必要に応じて就業規則等の整備、届出。
③労働者本人の同意を得る。同意の取り方について具体的な手続を労使協定で定めることが適当。
④制度を実施する。

また、労働新聞社の報道によると、労働基準監督署の窓口において、『対象業務に付随する補助的業務のみに従事している場合』は要件を満たさないものとして労使協定届を不受理とし、指導文書を交付する対応がとられているようです。

企画業務型裁量労働制

対象労働者事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務のうち、以下の4つの要件すべてを満たす業務を行う労働者
・業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること(例えば対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすもの、事業場独自の事業戦略に関するものなど)
・企画、立案、調査及び分析の業務であること
・業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
・業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
労働時間労使委員会の決議であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす(=みなし労働時間)
導入の流れ①「労使委員会」を設置する
②労使委員会で決議する
【決議しなければならない事項】
・制度の対象とする業務
・対象労働者の範囲
・1日の労働時間としてみなす時間
・健康・福祉確保措置
・苦情処理措置
・制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと
・制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
・制度の適用に関する同意の撤回の手続
・対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと など
③必要に応じて就業規則等の整備、届出。
④労働者本人の同意を得る。同意の取り方について労使委員会で決議することが適当。
⑤制度を実施する。
⓺決議の有効期限の始期から起算して初回は6箇月以内に1回、その後1年以内ごとに1回、所轄労働基準監督署へ定期報告を行う。

裁量労働制を適用されている労働者の傾向

令和3年に公表された「裁量労働制実態調査」によると、 裁量労働制を適用されている労働者には次のような傾向がみられます。
(参考 国立国会図書館 調査と情報―ISSUE BRIEF― No. 1189(2022. 3.31) 裁量労働制をめぐる課題

  • 裁量労働制を適用されている労働者の方がそうでない労働者よりも「1日の平均労働時間数」が21分長く、「労働時間が週60時間以上」の割合や、「深夜に仕事をすることがある」割合も高い
  • 1日の平均睡眠時間は、裁量労働制を適用されている労働者とそうでない労働者でほぼ同じ
  • 健康状態については、裁量労働制を適用されている労働者の方がそうでない労働者と比べて「健康状態がよい」と答える傾向がある
  • 裁量労働制を適用されている労働者の約4割が自身に適用されているみなし労働時間を把握していない

【労務管理】休職制度とは

休職制度は、労働基準法で定められたものではなく、会社が独自で定める制度です。

会社が独自に定める制度なので、内容はそれぞれですが、一般的に「労働者が業務外の理由で一時的に労働ができなくなった場合、すぐに解雇せず、会社が定めた期間、在職扱いとする」ケースが多いと思います。

長らく日本では終身雇用制度が定着していたので、病気やケガなどで一時的に働けない従業員の雇用を守るために利用されてきた制度と思います。


近年では、リスキリングなど能力開発のための休職制度が設けられている会社もあるようです。

少し前の調査ですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査-労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅱ)-」(2004年11月22日~12月10日実施)によると、

何らかの休職制度のある企業(「病気休職」「自己啓発休職」「起訴休職」「事故欠勤休職」「出向休職」「その他(専従休職等)」のいずれかを選択した企業。以下同じ。)の割合は、69.3%となっており、休職は法律上の制度ではないものの、多くの会社で取り入れられている制度だと言えます。

従業員を一定期間休職させる制度や慣行の状況(複数回答、%)

  • 「私傷病による休職(病気休職)」69.1%
  • 「自己都合による長期欠勤のための休職(事故欠勤休職)」37.4%
  • 「刑事事件で起訴されて就業ができないときの休職(起訴休職)」が20.1%
  • 「留学など能力開発のための休職(自己啓発休職)」が12.5%
  • 「従業員の他社への出向期間中になされる休職(出向休職)」7.2%
  • 「特にない」28.7%

モデル就業規則による休職規定

厚生労働省労働基準局監督課が出しているモデル就業規則(令和5年7月版)では、休職について次のように書かれています。(※読みやすいように空欄を●に書き換えています)

(休職)
第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
① 業務外の傷病による欠勤が●か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき  ● 年以内
② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき  必要な期間
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

【第9条  休職】

1 休職とは、業務外での疾病等主に労働者側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。なお、本条第1項第2号の「特別な事情」には、公職への就任や刑事事件で起訴された場合等が当たります。

2 休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然に休職が解除され復職となります。

3 休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません。

モデル就業規則(令和5年7月版)厚生労働省労働基準局監督課

メンタルヘルス不調による休職

厚生労働省の患者調査によると、精神疾患を有する総患者数は、2002年から2017年までの15年間で1.6倍も増加しているようです。
職場でも従業員のメンタルヘルス不調に対応する場面は増えていることと思います。

鬱病などの療養のために休職制度を使う場面において、一般社団法人日本産業保健法学会が公表している「産業保健職の現場課題に応える」Q&Aが参考になるのでご紹介します。

Q1
 適応障害やうつ病等の精神疾患のために休職している従業員が、休職期間中に趣味の活動(音楽活動や旅行等)をしていた場合、療養専念義務に違反し、会社から注意指導や懲戒処分の対象となり得るでしょうか。

A1
総論
 休職期間中に趣味の活動をしていることをもって直ちに懲戒処分を行うことは適当でないことが多いと考えられますが、医療者の判断に従わせること、それに基づき、会社秩序の観点で注意指導を行うことは可能です。
 そのためにも、先ず就業規則上、療養専念義務、必要な場合の主治医への意見聴取、指定医等への受診、逸脱行動の可否を会社の許可制としておくことが重要です。

「産業保健職の現場課題に応える」Q&A 一般社団法人日本産業保健法学会

精神疾患での病気休業中、趣味の活動をしているのを同僚から見つかってしまい、波紋を呼ぶことがあるようです。
ただ、精神疾患での療養には≪趣味の活動が精神衛生上良い方向に働いて療養につながる場合≫があり、一概に療養遷延義務違反とはいえない場面があります。

趣味の活動が療養に繋がるのかどうか、その活動が療養するうえで良くないことなのかの判断は、労務担当のみですることは困難ですから、対応としては、
・会社側が休職者の同意を得た上で、主治医に照会する
・休職者の病状、活動制限等の指導内容及び趣味的活動による療養への影響等について確認する
ことが基本となるようです。

一般社団法人日本産業保健法学会では、就業規則や休職に入る際に手渡す書類のなかに、
「休業中は療養に専念し、回復した際の復職を円滑に進めるためにも、無用の誤解を招くような言動を行わないよう留意して下さい。逸脱行動をとる場合には、医師の許可を得るとともに、会社の許可を得てください」
といった一文を入れておくことを提唱しています。

【労務管理】労基調査・ソフトウェア業界

労働時間の管理や長時間労働について、東京で調査が大々的に行われているようです

7月にソフトウェア業の顧問先のお客様に調査が入りました。いわゆる定期調査です。
問題は全くないお客様ですので、調査については無事終わったのですが、監督官から言われたのが、
「東京の労基では全般的に、ソフトウェア業の会社を調査をしている」とのことでした。
私どもの事務所でも、東京に、ソフトウェア業の顧問先のお客様が特に多いので、問題ないか確認する
必要があります。
ポイントは、
①労働時間を従業員の自己申告制にしている場合、「サービス残業」になっていないか
②長時間労働になっていないか、なっている場合の対応(労働時間の削減、面談の実施など)
長年、労基から言われ続けていることではあるのですが、改めて、このようなことを調査されているようです。
従業員さん自身が、「労働時間とは」「長時間労働とは」「健康に留意した働き方とは」を理解し、
認識を深めるように会社側が方策を実施していく必要があると思われます。

 

【労務管理】副業と社会保険

副業の推進

政府は、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)において、「労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」としており、今後、副業をする人は増える傾向にあると思います。

一方で、平成28年10月から短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が実施されており、フルタイムでない働き方をする場合にも、企業などで働く方が厚生年金保険や健康保険といった「社会保険」に加入するケースが広がってきています。

そのため、今後、「主たる勤務先」と「副業先」どちらでも社会保険に加入しなければいけないケースは増えてくると思います。

パートタイマー・アルバイト等の方が社会保険に加入するケース

パートタイマー・アルバイト等が、事業所と常用的使用関係にある場合、次の働き方をしていると社会保険に加入するようになります。

  1. 1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上の場合
  2. 「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務していて、以下のすべてに該当する場合
    ・週の所定労働時間が20時間以上あること
    ・賃金の月額が8.8万円以上であること
    ・学生でないこと

特定適用事業所とは

1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が101人以上※となることが見込まれる企業等のこと。  ※令和6年10月からは厚生年金保険の被保険者数が51人以上

ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するケース

ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するようになるケースを考えてみます。

① 通常の労働者の4分の3以上

事業所によって「通常の労働者」の時間は違いますが、仮に「通常の労働者」が1日8時間、週5日勤務とすると、ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するのは、次のような働き方が考えられます。

8H×週5日×4分の3=週30時間

(例)
主たる勤務先 1日6H×週5日(週30時間)
副業先    1日6H×週5日 (週30時間)  

昼も夜もフルタイムに近い働き方をする方や、複数事業所で常勤取締役をするなどが考えられますが、週1日も休みなく働いたり、1日12Hを恒常的に働くようになるので、あまり多くの方は該当しないものと思います。

② 特定適用事業所で週20時間以上

特定事業所で週20時間の勤務をしている場合、仮に1日4時間、週5日勤務とすると次のような働き方が考えられます。

(例)
主たる勤務先 1日4H×週5日 (週20時間)
副業先    1日4H×週5日 (週20時間)

午前と午後で勤務先を分けて働いている場合などが考えられます。
賃金の月額が8.8万円以上であること、学生でないこと、も満たす必要がありますが、最低賃金も上がってきているので、月額要件は満たす場合が多いと考えられます。


副業が活発になると、このような働き方をする方が増えることも考えられるのではないでしょうか。


また、主たる勤務先が①で、副業先が②、などのケースも考えられると思います。

複数の事業所で社会保険に加入するようになったときの手続き

「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を届出し、主たる事業所を選択して管轄する年金事務所または保険者等を決定します。

保険料

社会保険料の標準報酬月額は、「それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額」で決定されます。

さらに、決定された標準報酬月額の保険料額を、「それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分」して、保険料が決定され、それぞれの事業所へ通知されることとなります。

健康保険証

健康保険証は、選択した事業所のみで健康保険証が発行されます。

報酬に変更があったとき(月額変更)

「各事業所について随時改定の要件に該当するかどうか」で判断することになります。

それぞれの事業所で固定的賃金が変動し、2等級以上の差が生じていれば、月額変更の届出をすることになります。
あくまで、それぞれの事業所で該当するか否かを確認するので、届出にあたり、他方の事業所の報酬を気にする必要はありません。
ひとつの事業所で月変に該当した場合には、合算して2等級以上の差が生じていない場合でも随時改定が必要になります。

【労務管理】歩合給の残業代計算

時間外労働をしたときの割増賃金

労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、労働基準法で定める割増賃金を支払わなければいけません。

月給、時給、歩合など賃金形態に関わらず、時給単価に対して次の割増率を支払う必要があります。

割増賃金の種類と割増率

名称内容割増率
時間外手当
(いわゆる残業代)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
※1カ月60時間を超えたときは50%以上
休日手当法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上
深夜手当22時から朝5時までの間に勤務させたとき25%以上

歩合給制の残業代

歩合給制は「出来高払制」や「請負給制」ともいわれるもので、

「売上に対して〇%」

「成果物1件に対して〇円」

といった一定の“成果”に対して定められた金額を支払う賃金制度です。

歩合給制であっても法定労働時間を超えて労働した場合は、その部分について割増賃金を支払う必要があります。

歩合給制の場合、時間外の計算方法は労働基準法施行規則で次のように定められています。

歩合給 ÷ その月のトータルの労働時間数(所定労働時間数+時間外数)=割増基礎単価

割増基礎単価×0.25×時間外数=割増賃金額  ※休日手当の場合は×0.35

労働基準法施行規則 
第十九条 一~五 (略)
六  出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締 切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額

昭和二十二年厚生省令第二十三号 労働基準法施行規則

個別あっせんの事例

中央労働委員会のHPで、歩合給に関する事例と解説が掲載されていました。
※中央労働委員会=労働組合法に基づいて設置された国の機関で、あっせん・調停・仲裁など労働争議の調整などを行っているところ

争点は次の2点です。

  1. 委任契約だが、実態としては労働者なのか
  2. 歩合給の中に残業代は支払われているのか

1については、当事件においては実態として労働基準法上の労働者性があるということで話が進められました。
残業代計算の内容とは少しずれますが、労働者性を判断する解説がわかりやすいので引用でご紹介します。

(読みやすいよう任意で改行しています)

労働者か否かは、契約の形式ではなく労働関係の実態で判断する

゛証券会社や保険会社の外務員、カスタマー・エンジニア、芸能員、在宅勤務者(速記、ワープロなど)等々の契約の中には「雇用」ではなく、「委任」または「請負」契約の形式がとられ、そこでは、報酬は少額の保障部分があるほかは成績に比例して支払われ(歩合制、出来高払)、労働時間や労働場所についての拘束が少なく、就業規則の適用が排除され、労働保険にも入られない、という取り扱いがなされることが少なくない。

また、建設業における一人親方の職人、自己所有のトラック持込みで特定企業の運送業務に従事する傭車運転手、フランチャイズ店の店長なども個人事業主として「請負」または「委任」契約の取扱いを受けることが多いが、
特定企業のために専属的に労働力を提供する実質を有する場合には、「労働者」か否かが問題となる。

このような請負・委任契約による労務供給者が「労働者」か否かは、契約の形式(文言)によって決められるのではなく、労働関係の実態において事業に「使用され」かつ賃金を支払われている労働関係(労働契約関係)と認められれば、「労働者」といえる。 

(中略)
判断要素としては、昭和60年の労働省労働基準法研究会報告が、
①仕事の依頼への諾否の自由、
②業務遂行上の指揮監督、
③時間的・場所的拘束性、
④代替性、
⑤報酬の算定・支払い方法を主要な判断要素とし、
また、
①機械・器具の負担、報酬額等に現れた事業者性、
②専属性等
を補足的な判断要素として判断することを提唱し、以後、これらの要素が用いられている。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

1において労働者であることが前提となったため、「2.歩合給の中に残業代は支払われているのか」 については歩合給の割増計算に則って支払う方向であっせんを進めて話がまとまったようです。

通常の労働時間にあたる部分と割増賃金にあたる部分を分けていない場合、割増賃金が支払われたとは言えない

また、歩合給の残業代の支払いについて、最高裁判例の紹介がされていたので、こちらも引用でご紹介します。

゛タクシー会社の乗務員に支払われる歩合給に関し、
時間外・深夜労働が行われたとしても金額が増加せず、また、歩合給のうちで
通常の労働時間にあたる部分と
時間外・深夜の割増賃金にあたる部分とを判別することができない場合には、
当該歩合給の支給により時間外・深夜労働の割増賃金が支払われたものとすることはできず、
使用者は割増賃金規定に従って計算した割増賃金を別途支払う義務を負う、としたものがある
(高知観光事件-最二小判平6・6・13労判653号12頁、徳島南海タクシー事件-最三小決平11・12・13労判775号14頁)。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

【労務管理】懲戒処分について

従業員が企業秩序を乱すなどの違反行為をした場合、制裁として『懲戒処分』をすることができます。

懲戒処分は就業規則に則って行う必要があるため、就業規則に懲戒内容をあらかじめ規定して周知しておく必要があります。

  • 就業規則に懲戒規定を設けていないときにした労働者の行為に対して、さかのぼって懲戒処分をすることはできません。
  • 1回の懲戒事由に該当する行為に対しては1回しか懲戒処分を行うことはできません。
  • 制裁の種類及び程度に関する事項は、就業規則の相対的必要記載事項です。
    (相対的必要記載事項⇒定める場合には必ず記載しなければいけない事項のこと)

懲戒処分の種類

懲戒処分は主に5種類あります。

  1. 戒告・けん責
    懲戒処分の種類の中では一番軽い処分です。
    戒告(かいこく)は将来を戒める処分のことで、口頭注意や文書による注意です。始末書の提出は求めません。
    けん責(けんせき)とは始末書を提出させて将来を戒める処分をいいます。

  2. 減給
    賃金から一定額を控除する処分です。
    労働基準法第91条で、減給できる額は1回の額が平均賃金の1日分の半額以内、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1以内と定められています。
    「総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1以内」というのは、一賃金支払期の中で何回も減給する事案が起きても、減給の合計額はその一賃金支払期に支払われる賃金総額の10分の1までという意味です。
    控除しきれなかった分を翌月以降に繰り越すことは認められます。

    労働基準法で定められた範囲内で就業規則に減給の計算方法を定め、規則に従って減給をします。

  3. 出勤停止
    一定期間の出勤を停止し、その間の賃金は支給しないという処分です。
    あまりにも長期の出勤停止となると労働者が生活に困るため、行政指導として7日以内が目安になっています。

  4. 諭旨退職
    本来は懲戒解雇にするところ、本人が反省していることなどを理由として懲戒解雇を猶予し、自主的に退職願を提出するよう勧告する処分です。

  5. 懲戒解雇
    一番重い処分です。
    所轄労働基準監督署長の認定を受けると解雇予告手当を支給しないことが認められます。

    解雇にあたっては解雇権濫用法理(使用者による労働者の解雇は、合理的理由を欠き、社会通念上相当性を欠く場合には解雇権の濫用として許されないとする理論)に気を付けることはもちろん、事実調査、本人に弁明の機会を与えること、懲戒解雇の通知が必要となり、特に慎重に進める必要があります。

懲戒事由

懲戒事由については、労働基準法に決まりはありません。

労働契約法では次のように定められています。

(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

e-Gov 労働契約法 より
  • 懲戒をしようとする労働者の行為の「性質」及び「態様」「その他の事情」をみて
  • 客観的に合理的な理由があるか
  • 社会通念上相当であるか

を検討する必要があります。

そして、いずれの懲戒処分をする場合も、就業規則に記載されている理由に則って適切な程度で処分をすることが求められます。
就業規則に記載されていない理由で処分をすることは懲戒権の濫用となってしまいます。

※最高裁判決(国鉄札幌運転区事件 最高裁第3小法廷判決昭和54年10月30日)において、使用者は規則や指示・命令に違反する労働者に対しては、「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得ると述べられています。

また、規律違反の程度に応じて、過去の同じような事例のときの処分内容等を考慮して公正な処分を行う必要もあります。

労働者が遅刻や早退をした場合の賃金控除

労働者が遅刻や早退をした場合で、その時間について給与を支給しないことは減給の処分になりません。
(働いていない分については賃金債権が生じないため)

しかし、 働いていない分を超えて賃金を支給をしないような場合は減給の制裁とみなされます。
たとえば15分遅刻したことに対して1時間の賃金を支給しないような社内ルールになっている場合、減給の制裁をしていることになりますので注意してください。

 

【労務管理】無期転換申込権が発生する有期労働契約更新時の明示義務

令和6年4月から、無期転換権が発生する有期労働契約を結ぶとき、使用者は労働者に対して次のことを伝えなければいけません。

【参考】2023/11/01掲載 【労務管理】2024年4月から労働条件明示が変更・無期転換ルールについて 

  1. 無期転換を申し込むことができることを伝える
  2. 無期転換後の労働条件を書面で明示する 

たとえ労働者が「無期転換はしません」と言ってきたとしても、法律上義務になっているので明示する必要があります。

そもそも無期転換申込権とは・・

対象者期間の定めがある雇用契約を結んでいる労働者
権利がある期間契約期間が通算して5年を超える雇用契約を結んだとき、その契約期間の初日から末日までの間
内容自身の雇用契約を【期間の定めがある契約】から【期間の定めがない契約】に変更することを依頼する権利

労働者が無期転換を申し込むと、使用者は申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点で成立します。使用者は申し出を拒否することはできません。
無期労働契約に転換されるのは、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日からです。

労働条件通知書の書き方

厚生労働省のHPに労働条件通知書のひな形がありますが、令和6年4月1日以降の様式(一般労働者用;常用、有期雇用型)には次の内容が追記されています。

明示義務に漏れがないようにひな形が変更されていて助かりますね。
漏れなく記入できれば問題ありませんが、表現がちょっと難しいと思うので、できるだけ平たく説明してみます。

更新上限の有無とは

更新上限とは、 有期労働契約の「通算契約期間」または「更新回数」の『上限』のことを指しています。

「契約更新しても合計で〇年(△回)までですよ」ということです。

使用者は、令和6年4月1日以降の有期労働契約については、更新上限がある場合はその内容を書面で明示しなければいけません。有期労働契約は、何度か更新することがあると思いますが、契約締結の当初だけではなくて、更新のたびに明示が必要になります。

例えば、次のような記載が考えられます。

・更新上限の有無( 無 )

・更新上限の有無( 有(更新10回まで/ 今回の契約は更新2回目))

・更新上限の有無( 有(通算契約期間5年まで/ 今回の契約末日時点で、通算契約期間3年6カ月))

労働契約法に定める同一の企業との間での通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結の場合とは

労働契約法に定める同一の企業との間での通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結の場合とは 、次の有期労働契約を締結する場合のことを指しています。

誰が期間の定めがある雇用契約を結んでいる人(いわゆる契約社員)
何をしたとき 同じ勤務先で「最初に有期雇用契約で入社した日」から「今回の雇用契約期間の末日まで」の期間を数えると、5年を超えるとき

(例)1回の雇用契約期間が3年の契約社員が更新する場合

最初の雇用契約 R2年4月1日~R5年3月31日
今回の雇用契約 R5年4月1日~R8年3月31日

最初に入社した日 R2年4月1日
今回の雇用契約期間の末日 R8年3月31日

⇒通算すると6年
⇒【通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結】に該当

該当した場合は、次のことが必要になります。

  1. 無期転換を申し込むことができることを伝えて
  2. 無期転換後の労働条件を書面で明示 

上の(例)の場合ですと、労働条件通知書の内容を次のように書くようになります。

本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(R8年4月1日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。

無期転換後の労働条件を書面で明示とは

『無期転換後の労働条件を書面で明示する』ですが、これは勤務先がどのように定めているかによります。

そもそも「『無期転換=期間定めがない契約』って『正社員になる』ってことなんじゃないの?」と思う方も多いと思います。
それがそうとも限らないのです。ややこしいですよね。

『期間の定めがある契約社員』と『期間の定めがない契約社員』と『正社員』と、それぞれ職務内容や職責などに応じて給与や手当を異なるものに定めることは、勤務先(会社)の定め方によります。
まだ定めていない事業所で、該当する人がでてきそうな場合は速やかに決める必要があります。すぐに該当する方がいなくても、有期契約労働者がいる事業所では、将来にわたっての人材活用を考える上で無期転換をした後の待遇を決めておくことは重要なことだと思います。

この場合の本契約からの労働条件の変更の有無( 無 ・ 有(別紙のとおり) )

労働条件通知書には、『期間の定めがある雇用契約』と『無期転換後の雇用契約』で労働条件に違いがあるかどうかを記載してください。

別紙は、就業規則があれば該当ページを比較できるようそれぞれ用意すればいいと思いますし、就業規則の作成義務がないところであれば比較できる書面を用意すると良いと思います。

また、無期転換後の労働条件について、正社員等のフルタイム労働者との均衡を考慮した点を説明する努力も求められます。
無期雇用フルタイム労働者は、同一労働同一賃金で正社員との間の不合理な待遇差の解消を目指す対象に含まれませんが、従業員に長く働いてもらうためにも待遇についての均衡をきちんと考え、説明できるようにしておくのは大切です。

有期雇用特別措置法による特例とは

有期雇用特別措置法による特例とは、簡単にいうと「無期転換ルールが適用されない特例」のことです。

特例の対象者になるのは、次のどちらかです。


  1. 「5年を超える一定の期間内に完了する業務」に就く高度の専門知識等を有する年収1,075万円以上の有期雇用労働者(高度専門職)
  2. 定年に達した後、引き続き雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)

※高度専門職は、次のいずれかにあてはまる方が該当します。

  1. 博士の学位を有する者
  2. 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
  3. ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
  4. 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
  5. 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
  6. システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
  7. 国等(※)によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者(※)国、地方公共団体、一般社団法人または一般財団法人その他これらに準ずるものをいいます。

※次の場合は「継続雇用の高齢者」にならず、特例の対象にならないので注意してください。

  • A事業場で定年退職した後、B事業場で新たに有期労働契約で雇用された労働者
  • 定年に達しない時点で無期労働契約から有期労働契約に転換した労働者 

特例の対象となるには、事業主が雇用管理措置の計画を作成して提出し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

労働条件通知書には、特措法の認定を受けている場合、該当する内容に応じて記入するようになります。

【有期雇用特別措置法による特例の対象者の場合】
無期転換申込権が発生しない期間: Ⅰ(高度専門)・Ⅱ(定年後の高齢者)
Ⅰ 特定有期業務の開始から完了までの期間(   年  か月(上限10年))
Ⅱ 定年後引き続いて雇用されている期間

【労務管理】労働条件通知書に休職に関する事項は載せていますか?

口頭でも良いが、忘れない為に記載をおすすめします。

令和6年4月から労働条件明示に関する法律が改正され、雇用契約書・労働条件通知書に記載すべき事が改正されます。
今回のお話は改正に直接は関係ありませんが、通知書に関係するお話になります。
労働基準法では、労働契約締結時に書面で明示すべきもの、口頭の説明でも良いもの、の2種類があります。
【休職に関する事項】は会社に規定がある場合に口頭での説明でも良い事になっています。
労働者との契約締結時に『弊社には休職制度が就業規則の〇条に記載があるので、一読しておいてください。』
と口頭で伝える必要があり、就業規則の〇条に記載と詳細に伝える必要があります。就業規則にあるだけでは説明不足です。

近年、メンタルヘルス等の精神的な病により長期休業を取る方が増えています。
休業〇ヶ月を過ぎても復職が出来ない場合は、自然退職とするといった規定を作成している会社様も多いと思います。
いざ、その規定を労働者に伝えた際に、聞いていない、知らなかったという事での労使間トラブルが増加しています。
防止策として、労働条件締結時にきちんと伝えることが第一で、先述した通り、口頭でも良いのですが伝え忘れないためにも雇用契約書・労働条件通知書に記載をしておくことをお勧めいたします。

今回の労働条件明示の改正に合わせてこちらもご確認してみてはいかがでしょうか。

【労務管理】地域別最低賃金の適用場所

地域別最低賃金とは

地域別最低賃金は、最低賃金法で定められている労働者の時間当たり賃金の最低金額です。

最低賃金法

(目的)

第一条 この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

地域別最低賃金は、その地域における労働者の生活費や賃金、通常の事業の賃金支払能力などを考慮して定められています。
そして、産業や職種、雇用形態(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など)に関わりなく、その地域で働くすべての労働者に適用されます。

最低賃金法

(地域別最低賃金の原則)

第九条 賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
2 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
3 前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。

地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合

最低賃金を支払わない場合、罰則が定められています。

地域別最低銀額以上の賃金を支払わない場合最低賃金法により50万円以下の罰金
特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合労働基準法第120条により30万円以下の罰金
※特定(産業別)最低賃金…特定の産業ごとに設定されている最低賃金で、産業の労使が「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合に設定されます。
 

地域別最低賃金の全国一覧

地域別最低賃金は厚生労働省HPで確認できます。例年、だいたい10月に改定になります。

厚生労働省HP 令和5年度地域別最低賃金改定状況 から抜粋

最低賃金の対象となる賃金

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。


最低賃金額以上かどうかを確認するとき、次の手当は除いて確認します。
「6.精皆勤手当」を除外する点が残業代を計算するときの割り増し基礎単価と異なり、注意が必要です。

最低賃金額を確認するときに除外する手当

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5. 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

地域別最低賃金はどの地域で判定されるか

地域別最低賃金が適用される「事業場」の適用範囲は、労働基準法における考え方と同一です。

(労働基準法第9条)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

一つの事業場かどうかは、場所的観念(同じ場所か離れた場所か)によって決まります。
同じの場所にあるものは原則として一つの事業場とし、場所が違うものは原則として別の事業場とされます。

例外ですが、場所が異なっていても、『就労先の規模が著しく小さくて独立性がなく、組織的な関連や事務能力などを考えると一つの事業場といえない程度の規模』のものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱うとされています。

参考通達:平成11年3月31日基発第168号通達、昭和47年9月18日発基第91号通達の第2の3「事業場の範囲」(労働安全衛生法解釈通達)

例としてあげられるのが、新聞社の通信部、駅の売店、ビルメンテナンス業における作業現場等です。

『完全在宅勤務』の場合の最低賃金

最近ですと、『完全在宅勤務』の勤務形態も珍しくありません。

勤務場所(自宅)が青森県内であっても、労働者が所属する直近上位の支店が東京都内にあれば、東京都の最低賃金が適用されることになります。

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