「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」が労働基準監督署に設置されます
2024年11月のフリーランス新法の施行に合わせて、「自分はフリーランスとして働いているけど、働き方が労働者なんじゃないかな・・?」と思っているフリーランスの方に向けた相談窓口が全国の労働基準監督署に設置されます。
※ここでのフリーランスは、業務委託を受ける事業者のことを指します。
フリーランスとして働く人の中には、実際の働き方は労働基準法上の労働者なのに、契約上は自営業者として扱われて、法律に基づく正しい保護が受けられていないといった問題が指摘されています。
労働基準法上の「労働者」にあたるかどうかは、「業務委託」や「請負」などの契約の形式などにかかわらず、実際の働き方等をみて総合的に判断されます。
労働基準法が適用される労働者とは
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法上の労働者にあたるかの判断は、『使用従属性』が認められるかどうか等によって判断されます。
『使用従属性』とは、次の両方の基準をまとめて呼んだものです。
- 他人の指揮監督下で労働していること
- 報酬が指揮監督下にある労働の対価として支払われていること
「使用従属性」に関する判断基準
「指揮監督下の労働」であること
仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由 | 発注者から仕事を貰った時に、それを受けるかどうか等、自分で決められるか |
業務遂行上の指揮監督 | 仕事の内容や、やり方について、発注者から具体的に指示をされて指揮命令されているか |
拘束性 | 勤務場所と時間が発注者等から指定されて管理されているか |
代替性(指揮監督関係を補強する要素) | 発注者から受けた仕事を、自分の代わりに誰かにやってもらったり、自分の判断で補助者を使うことが認められているか |
報酬の労務対償性 | 報酬のベースが、発注者等の指揮監督の下で行う作業時間等となっているか |
「労働者性」の判断を補強する要素
事業者性 | 仕事に必要な機械等は発注者とフリーランスのどちらが用意しているか。 フリーランスが機械等を所有していて発注された作業に当たっている場合などは、自らが事業者として働いている性質が強くなると考えられます。 |
専属性の程度 | 他の発注者等の業務を行うことが制度上制約されたり、他の発注者等の業務を行うことが時間的に余裕がなく難しかったりする場合等は労働者性が強いと考えられます。 |
その他 | 採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること 等 |
労働基準法が定める使用者とは
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
労働基準法で使用者とは、次のように定められています。
・ 事業主
法人そのもの、個人事業主
・ 事業の経営担当者
法人の代表者、役員等
・労働者に関する事項について、事業主のために行為をする者
労働条件の決定、業務命令の発出、具体的な指揮監督等を行うもの(上司の命令の伝達者にすぎない場合は除きます)
使用者は、事業主だけでなく、役員等も含まれ、労働者に指揮命令をして労働をさせ、労働の対価として報酬を支払います。
「松下プラズマディスプレイ事件」(最高裁判所第2小法廷 平成21年12月18日 判決)では、偽装請負いの状態で派遣されていた労働者は『注文者から直接具体的な指揮監督を受けて作業に従事していた』が、「雇用契約は注文者以外と結ばれていた」「注文者は採用に関与していない」「注文者が給与の支払い額を決定していたわけではない」等の事情で、注文者とその労働者の間に雇用関係が黙示的に成立していたとはいえない、としています。
労働の具体的な指揮監督をするだけでは、使用者性が認められないといえます。