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【労務管理】令和6年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大


現在、週20時間以上働く短時間労働者が厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となるのは、『厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等』です。

令和6年10月から、この短時間労働者の加入要件がさらに拡大されて、『厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等』で働く短時間労働者は、社会保険に加入することが義務になります。

 

厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等とは

新たに短時間労働者が社会保険の加入対象となるのは、次の要件を満たす企業等です。

  • 12か月のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者の総数(※)が51人以上となることが見込まれること

※法人事業所の場合は、法人番号が同一である同一法人格に属するすべての適用事業所の被保険者の総数が51人以上である場合に該当します。

※総数には、短時間労働者や70歳以上で健康保険のみ加入している人は含みません。

※事業所の新規適用時などで過去の実績はないものの、厚生年金保険の被保険者の総数が50人を超える場合は、特定適用事業所該当届を届け出る必要があります。

 

短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業等のことを「特定適用事業所」といいます。


特定適用事業所になった場合、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時50人を超えなくなった場合であっても、原則として引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われます。

ただし、使用される被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添えて、特定適用事業所不該当届を届け出た場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることとなります。

短時間労働者が社会保険に加入対象になる要件

以下の条件すべて該当する短時間労働者が特定適用事業所に勤務する場合、加入対象となります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上
  3. 2カ月を超える雇用の見込みがある
  4. 学生ではない

東京都の場合、2024年10月以降は最低賃金1,163円となる見込みですので、週20時間以上勤務する場合は「2.所定内賃金が月額8.8万円以上」は自然と満たすことになりそうです。

所定内賃金が月額 8.8 万円かの算定対象は、基本給及び諸手当で判断します。
ただし、次の①から④までの賃金は算入されません。
【算入されないもの】

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
  • 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

なお、健康保険の被扶養者として認定されるための要件の一つに、年収が 130万円未満であることという収入要件がありますが、この要件に変更はありません。
なので、年収が130万円未満であっても、4分の3基準又は4要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。


「これまで家族の扶養に入っていて、扶養の要件は満たす」ものの、「新たに4要件を満たすことで扶養から抜けて、自ら社会保険に加入する」というケースが出てくることが想定されます。

お知らせが送付されます

新たに適用拡大の対象となることが見込まれる事業所には、令和6年9月上旬までに「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付される予定です。

さらに、令和5年10月から令和6年8月までの各月のうち、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が6か月以上50人を超えたことが確認できる場合、対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。
この場合、日本機構で特定適用事業所に該当したものとして扱うので、特定適用事業所該当届の届出は不要ですが、加入対象になる短時間労働者がいる場合は、「被保険者資格取得届」等の提出は事業所側で必要となるので注意しなければいけません。

適用拡大の対象となる従業員についての届書の準備、社内周知・従業員への説明等の期間が必要となりますので、早めの準備をお願いします。

【労務管理】休職制度とは


休職制度は、労働基準法で定められたものではなく、会社が独自で定める制度です。

会社が独自に定める制度なので、内容はそれぞれですが、一般的に「労働者が業務外の理由で一時的に労働ができなくなった場合、すぐに解雇せず、会社が定めた期間、在職扱いとする」ケースが多いと思います。

長らく日本では終身雇用制度が定着していたので、病気やケガなどで一時的に働けない従業員の雇用を守るために利用されてきた制度と思います。


近年では、リスキリングなど能力開発のための休職制度が設けられている会社もあるようです。

少し前の調査ですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査-労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅱ)-」(2004年11月22日~12月10日実施)によると、

何らかの休職制度のある企業(「病気休職」「自己啓発休職」「起訴休職」「事故欠勤休職」「出向休職」「その他(専従休職等)」のいずれかを選択した企業。以下同じ。)の割合は、69.3%となっており、休職は法律上の制度ではないものの、多くの会社で取り入れられている制度だと言えます。

従業員を一定期間休職させる制度や慣行の状況(複数回答、%)

  • 「私傷病による休職(病気休職)」69.1%
  • 「自己都合による長期欠勤のための休職(事故欠勤休職)」37.4%
  • 「刑事事件で起訴されて就業ができないときの休職(起訴休職)」が20.1%
  • 「留学など能力開発のための休職(自己啓発休職)」が12.5%
  • 「従業員の他社への出向期間中になされる休職(出向休職)」7.2%
  • 「特にない」28.7%

モデル就業規則による休職規定

厚生労働省労働基準局監督課が出しているモデル就業規則(令和5年7月版)では、休職について次のように書かれています。(※読みやすいように空欄を●に書き換えています)

(休職)
第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
① 業務外の傷病による欠勤が●か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき  ● 年以内
② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき  必要な期間
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

【第9条  休職】

1 休職とは、業務外での疾病等主に労働者側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。なお、本条第1項第2号の「特別な事情」には、公職への就任や刑事事件で起訴された場合等が当たります。

2 休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然に休職が解除され復職となります。

3 休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません。

モデル就業規則(令和5年7月版)厚生労働省労働基準局監督課

メンタルヘルス不調による休職

厚生労働省の患者調査によると、精神疾患を有する総患者数は、2002年から2017年までの15年間で1.6倍も増加しているようです。
職場でも従業員のメンタルヘルス不調に対応する場面は増えていることと思います。

鬱病などの療養のために休職制度を使う場面において、一般社団法人日本産業保健法学会が公表している「産業保健職の現場課題に応える」Q&Aが参考になるのでご紹介します。

Q1
 適応障害やうつ病等の精神疾患のために休職している従業員が、休職期間中に趣味の活動(音楽活動や旅行等)をしていた場合、療養専念義務に違反し、会社から注意指導や懲戒処分の対象となり得るでしょうか。

A1
総論
 休職期間中に趣味の活動をしていることをもって直ちに懲戒処分を行うことは適当でないことが多いと考えられますが、医療者の判断に従わせること、それに基づき、会社秩序の観点で注意指導を行うことは可能です。
 そのためにも、先ず就業規則上、療養専念義務、必要な場合の主治医への意見聴取、指定医等への受診、逸脱行動の可否を会社の許可制としておくことが重要です。

「産業保健職の現場課題に応える」Q&A 一般社団法人日本産業保健法学会

精神疾患での病気休業中、趣味の活動をしているのを同僚から見つかってしまい、波紋を呼ぶことがあるようです。
ただ、精神疾患での療養には≪趣味の活動が精神衛生上良い方向に働いて療養につながる場合≫があり、一概に療養遷延義務違反とはいえない場面があります。

趣味の活動が療養に繋がるのかどうか、その活動が療養するうえで良くないことなのかの判断は、労務担当のみですることは困難ですから、対応としては、
・会社側が休職者の同意を得た上で、主治医に照会する
・休職者の病状、活動制限等の指導内容及び趣味的活動による療養への影響等について確認する
ことが基本となるようです。

一般社団法人日本産業保健法学会では、就業規則や休職に入る際に手渡す書類のなかに、
「休業中は療養に専念し、回復した際の復職を円滑に進めるためにも、無用の誤解を招くような言動を行わないよう留意して下さい。逸脱行動をとる場合には、医師の許可を得るとともに、会社の許可を得てください」
といった一文を入れておくことを提唱しています。

【労務管理】労基調査・ソフトウェア業界


労働時間の管理や長時間労働について、東京で調査が大々的に行われているようです

7月にソフトウェア業の顧問先のお客様に調査が入りました。いわゆる定期調査です。
問題は全くないお客様ですので、調査については無事終わったのですが、監督官から言われたのが、
「東京の労基では全般的に、ソフトウェア業の会社を調査をしている」とのことでした。
私どもの事務所でも、東京に、ソフトウェア業の顧問先のお客様が特に多いので、問題ないか確認する
必要があります。
ポイントは、
①労働時間を従業員の自己申告制にしている場合、「サービス残業」になっていないか
②長時間労働になっていないか、なっている場合の対応(労働時間の削減、面談の実施など)
長年、労基から言われ続けていることではあるのですが、改めて、このようなことを調査されているようです。
従業員さん自身が、「労働時間とは」「長時間労働とは」「健康に留意した働き方とは」を理解し、
認識を深めるように会社側が方策を実施していく必要があると思われます。

 

【有料職業紹介業、お祝い金の規制強化へ】


【お祝い金・転職勧奨を原則禁止、法令違反は許可取り消しも】

厚生労働書は有料職業紹介事業者において禁止されている【就職お祝い金】【転職勧奨】の法令違反が多数みられることから、規制強化を進める方針です。許可条件にお祝い金、転職勧奨の禁止を定めるとし、違反事業者の事業許可を取り消せるようにします。

令和3年4月から職業安定法の指針で「お祝い金」その他これに類する名目で、求職者に社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭などを提供することで求職の申し込みの勧奨を行ってはならないと、禁止されています。
これまで指導があった例では、お祝い金で、面接実施時に数千円分のギフトカードを支給していたケースや、いったん就職した求職者にしばらくすると、お祝い金を支給すると話を持ち掛けて転職を勧奨するなどして、繰り返し就職させ手数料を得ようとする事業者が見られます。また、介護・医療系の会社に多いのが職業紹介事業者が介護・医療系会社に就職したら介護・医療に関する資格取得相当費用を負担するといった例でこちらもお祝い金に相当したケースがあります。

就職した求職者が早期に離職する事の無いように規制が強化される模様です。許可取得を考えの事業者様、職業紹介事業を既に運営中の事業者様も十分に注意が必要となります。

【派遣許可後の運営についてもサポートいたします】


【同一の派遣事業所で複数の是正指導が多数生じています】

東京労働局が令和5年度の民間人材ビジネスに対する指導状況を取りまとめた報告がありました。
指導監督を実施したのは延べ3531件、文書により是正指導を行った件数は3692件で昨年度から0.8%上昇しています。
実施件数より、是正指導件数が多い理由は同一の事業所で複数の項目で指導を行った事や、繰り返し指導を行ったことが要因となっています。
是正指導が行われた派遣事業所は2908件で、同一労働同一賃金に関する労使協定の賃金額の不備が多発。派遣労働者の賃金算定として通勤手当に相当する支給が義務付けられているがこちらの計算ミスが多い結果となっています。
複数項目で指導を受けている会社は労使協定の不備の他、就業条件の明示をしていなかったり、派遣元管理台帳に不備が多いようです。

派遣許可を取った後も、様々な守るべき法律の中で派遣業を運営していくことが必要となります。違反により指導是正、改善命令、許可取り消しとなる事例もございます。
弊社では派遣・職業紹介の許可申請はもちろんですが、許可後の運営方法についてもサポートするサービスがございます。
労使協定方式の基準賃金は毎年変更となる事から毎年計算が必要となりこちらの計算金額の算出方法・確認を始めとした労使協定作成に対する確認・助言や、都度ある法改正への対応、運営上の注意点などに関する情報、毎年6月に報告する年度報告書の作成方法、派遣運営全般についてアドバイスするサービスを行っています。

派遣の許可は取ったけど法律の事は良く解らない、自分の会社は違反をしていないだろうかと不安でいる、毎年の労使協定作成に頭を悩ませている等、ご興味のある事業主様は是非お問合せください。

【労務管理】副業と社会保険


副業の推進

政府は、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)において、「労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」としており、今後、副業をする人は増える傾向にあると思います。

一方で、平成28年10月から短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が実施されており、フルタイムでない働き方をする場合にも、企業などで働く方が厚生年金保険や健康保険といった「社会保険」に加入するケースが広がってきています。

そのため、今後、「主たる勤務先」と「副業先」どちらでも社会保険に加入しなければいけないケースは増えてくると思います。

パートタイマー・アルバイト等の方が社会保険に加入するケース

パートタイマー・アルバイト等が、事業所と常用的使用関係にある場合、次の働き方をしていると社会保険に加入するようになります。

  1. 1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上の場合
  2. 「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務していて、以下のすべてに該当する場合
    ・週の所定労働時間が20時間以上あること
    ・賃金の月額が8.8万円以上であること
    ・学生でないこと

特定適用事業所とは

1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が101人以上※となることが見込まれる企業等のこと。  ※令和6年10月からは厚生年金保険の被保険者数が51人以上

ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するケース

ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するようになるケースを考えてみます。

① 通常の労働者の4分の3以上

事業所によって「通常の労働者」の時間は違いますが、仮に「通常の労働者」が1日8時間、週5日勤務とすると、ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するのは、次のような働き方が考えられます。

8H×週5日×4分の3=週30時間

(例)
主たる勤務先 1日6H×週5日(週30時間)
副業先    1日6H×週5日 (週30時間)  

昼も夜もフルタイムに近い働き方をする方や、複数事業所で常勤取締役をするなどが考えられますが、週1日も休みなく働いたり、1日12Hを恒常的に働くようになるので、あまり多くの方は該当しないものと思います。

② 特定適用事業所で週20時間以上

特定事業所で週20時間の勤務をしている場合、仮に1日4時間、週5日勤務とすると次のような働き方が考えられます。

(例)
主たる勤務先 1日4H×週5日 (週20時間)
副業先    1日4H×週5日 (週20時間)

午前と午後で勤務先を分けて働いている場合などが考えられます。
賃金の月額が8.8万円以上であること、学生でないこと、も満たす必要がありますが、最低賃金も上がってきているので、月額要件は満たす場合が多いと考えられます。


副業が活発になると、このような働き方をする方が増えることも考えられるのではないでしょうか。


また、主たる勤務先が①で、副業先が②、などのケースも考えられると思います。

複数の事業所で社会保険に加入するようになったときの手続き

「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を届出し、主たる事業所を選択して管轄する年金事務所または保険者等を決定します。

保険料

社会保険料の標準報酬月額は、「それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額」で決定されます。

さらに、決定された標準報酬月額の保険料額を、「それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分」して、保険料が決定され、それぞれの事業所へ通知されることとなります。

健康保険証

健康保険証は、選択した事業所のみで健康保険証が発行されます。

報酬に変更があったとき(月額変更)

「各事業所について随時改定の要件に該当するかどうか」で判断することになります。

それぞれの事業所で固定的賃金が変動し、2等級以上の差が生じていれば、月額変更の届出をすることになります。
あくまで、それぞれの事業所で該当するか否かを確認するので、届出にあたり、他方の事業所の報酬を気にする必要はありません。
ひとつの事業所で月変に該当した場合には、合算して2等級以上の差が生じていない場合でも随時改定が必要になります。

【派遣を偽装した労働者供給事業者に改善命令】


【IT系企業の派遣業、指導改善徹底へ】

昨日、東京労働局がIT企業で業務委託契約で受け入れた他社の労働者を派遣契約として、
派遣先会社に送り、派遣先労働者の指揮命令の下で働かせたとして、労働者派遣違反として事業改善が命令されました。

こちらの企業はITシステム系の会社でシステム開発や保守を行うためにエンジニアを派遣する事業を行っていました。
しかし、今回は自社の雇用契約を結んでいる社員を派遣しておらず、直接雇用形態を結んでいない、業務委託の他社社員を派遣していた状態でした。自分の会社と直接雇用契約を結んでいない労働者を派遣する事が違法に当たります。

これまでも、今回のようなIT系、システム系の会社では客先常駐型、同時プロジェクト開発と称して自社の社員を他社に送り業務を行う事が多く見られ業務委託と称していても、実際は自社の社員を他社に送り、他社の社員の指揮命令を受ける派遣状態が横行し、派遣法に違反しているケースが多々見られる状態でした。労働局は今後、IT系、システム系企業に対して派遣法、労働者供給事業の禁止に関する指導や悪質なものに対しては行政処分を徹底すると発表しています。

違法状態の客先で就業していた際に、調査等が入ると業務停止命令が下り、仕事をストップしなければならない場合もございます。
弊社では、これまでIT系、システム系の会社をはじめ数多くの企業様の労働者派遣業・有料職業紹介業の許可申請代行を行ってきた実績がございます。ご興味、お問い合わせなどございましたらお気軽にお申しつけください。

【労務管理】歩合給の残業代計算


時間外労働をしたときの割増賃金

労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、労働基準法で定める割増賃金を支払わなければいけません。

月給、時給、歩合など賃金形態に関わらず、時給単価に対して次の割増率を支払う必要があります。

割増賃金の種類と割増率

名称内容割増率
時間外手当
(いわゆる残業代)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
※1カ月60時間を超えたときは50%以上
休日手当法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上
深夜手当22時から朝5時までの間に勤務させたとき25%以上

歩合給制の残業代

歩合給制は「出来高払制」や「請負給制」ともいわれるもので、

「売上に対して〇%」

「成果物1件に対して〇円」

といった一定の“成果”に対して定められた金額を支払う賃金制度です。

歩合給制であっても法定労働時間を超えて労働した場合は、その部分について割増賃金を支払う必要があります。

歩合給制の場合、時間外の計算方法は労働基準法施行規則で次のように定められています。

歩合給 ÷ その月のトータルの労働時間数(所定労働時間数+時間外数)=割増基礎単価

割増基礎単価×0.25×時間外数=割増賃金額  ※休日手当の場合は×0.35

労働基準法施行規則 
第十九条 一~五 (略)
六  出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締 切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額

昭和二十二年厚生省令第二十三号 労働基準法施行規則

個別あっせんの事例

中央労働委員会のHPで、歩合給に関する事例と解説が掲載されていました。
※中央労働委員会=労働組合法に基づいて設置された国の機関で、あっせん・調停・仲裁など労働争議の調整などを行っているところ

争点は次の2点です。

  1. 委任契約だが、実態としては労働者なのか
  2. 歩合給の中に残業代は支払われているのか

1については、当事件においては実態として労働基準法上の労働者性があるということで話が進められました。
残業代計算の内容とは少しずれますが、労働者性を判断する解説がわかりやすいので引用でご紹介します。

(読みやすいよう任意で改行しています)

労働者か否かは、契約の形式ではなく労働関係の実態で判断する

゛証券会社や保険会社の外務員、カスタマー・エンジニア、芸能員、在宅勤務者(速記、ワープロなど)等々の契約の中には「雇用」ではなく、「委任」または「請負」契約の形式がとられ、そこでは、報酬は少額の保障部分があるほかは成績に比例して支払われ(歩合制、出来高払)、労働時間や労働場所についての拘束が少なく、就業規則の適用が排除され、労働保険にも入られない、という取り扱いがなされることが少なくない。

また、建設業における一人親方の職人、自己所有のトラック持込みで特定企業の運送業務に従事する傭車運転手、フランチャイズ店の店長なども個人事業主として「請負」または「委任」契約の取扱いを受けることが多いが、
特定企業のために専属的に労働力を提供する実質を有する場合には、「労働者」か否かが問題となる。

このような請負・委任契約による労務供給者が「労働者」か否かは、契約の形式(文言)によって決められるのではなく、労働関係の実態において事業に「使用され」かつ賃金を支払われている労働関係(労働契約関係)と認められれば、「労働者」といえる。 

(中略)
判断要素としては、昭和60年の労働省労働基準法研究会報告が、
①仕事の依頼への諾否の自由、
②業務遂行上の指揮監督、
③時間的・場所的拘束性、
④代替性、
⑤報酬の算定・支払い方法を主要な判断要素とし、
また、
①機械・器具の負担、報酬額等に現れた事業者性、
②専属性等
を補足的な判断要素として判断することを提唱し、以後、これらの要素が用いられている。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

1において労働者であることが前提となったため、「2.歩合給の中に残業代は支払われているのか」 については歩合給の割増計算に則って支払う方向であっせんを進めて話がまとまったようです。

通常の労働時間にあたる部分と割増賃金にあたる部分を分けていない場合、割増賃金が支払われたとは言えない

また、歩合給の残業代の支払いについて、最高裁判例の紹介がされていたので、こちらも引用でご紹介します。

゛タクシー会社の乗務員に支払われる歩合給に関し、
時間外・深夜労働が行われたとしても金額が増加せず、また、歩合給のうちで
通常の労働時間にあたる部分と
時間外・深夜の割増賃金にあたる部分とを判別することができない場合には、
当該歩合給の支給により時間外・深夜労働の割増賃金が支払われたものとすることはできず、
使用者は割増賃金規定に従って計算した割増賃金を別途支払う義務を負う、としたものがある
(高知観光事件-最二小判平6・6・13労判653号12頁、徳島南海タクシー事件-最三小決平11・12・13労判775号14頁)。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

【派遣・労使協定方式において地域指数に誤りがあった件の改善経費として助成金が適用されます】


【地域指数の確認と、賃金額が満たない場合は賃金額を引き上げるための協定改定が必要となります】

 

先日、令和6年5月に派遣労働者の労使協定方式に適用する令和6年度の施行のため示した職業安定局長通達のうち、地域の状況を反映するために一部の派遣元事業所で使われている「ハローワーク別地域指数」の一部(全434所中275所)に誤りがあることが分かり、公表されました。
地域指数の新旧表はこちらです。


派遣元事業主の対応として、誤りのあったハローワーク別地域指数を参照して労使協定を締結された派遣元におかれては、訂正後の地域指数による一般賃金水準を確認し、自社の賃金制度が同水準に満たなくなる場合には、満たすように労使協定の改定を令和6年9月30日まで(経過措置期間)に準備するように求められています。

その際、4月当初から協定見直しまでの間について、現行協定と新協定との差を補うことを労使で検討する旨の要請が出ています。
厚生労働省より、再締結による賃金制度の整備・改善経費を支援する助成金が創設されます。協定を再締結し、それまでの期間における差額を支給する派遣元に対し、一律5万円と、派遣労働者1人につき1万円の合計額を支給する。実費が定額分を上回る場合は、実費相当分を支給する模様で近日中には厚生労働省からの発表があるようです。

今後、リーフレット及びQ&Aについても、厚生労働省『派遣労働者の同一労働同一賃金について』ホームページにて掲載予定となっています。

派遣元事業主の方々においては、こちらの助成金のご確認・ご検討も視野にいれてみてはいかがでしょうか。

【労務管理】健康保険の「資格情報のお知らせ」が郵送されます


2024年12月2日からマイナ保険証へ

2024年12月2日から、いまの健康保険証は新規で発行されなくなり、マイナ保険証に移行されます

いま使っている健康保険証

いま使っている健康保険証は、退職等で資格喪失をしない限り、2025年12月1日まで使用できます

※2025年12月1日までに退職等をした場合、保険証は会社へ返納してください。
※2025年12月2日以降は、保険証を自分で破棄してもOKです。

マイナ保険証

マイナンバーカードを医療機関・薬局で健康保険証として利用するもので、利用するときは顔認証付きカードリーダーで受付します。

医療機関・薬局で、直近の資格情報等を確認することができるため、
医療費が高額な場合に申請する「限度額適用認定証」が要らなくなり、高齢受給者証の持参も要らなくなります。

資格情報のお知らせと加入者情報が事業主に郵送されます

こうした保険証の制度変更を背景に、加入者へ資格情報の確認とお知らせのため、書類が特定記録郵便で送られてくるようです。
書類が届いたら、事業主や担当者は従業員本人に必ず渡してください。

送付対象者加入者全員
送付時期1回目 2024年9月9日(月)~2024年9月30日(月)
2回目 2025年1月22日(水)~2025年2月3日(月)
※1回目と2回目の違いは社保加入の時期など

資格情報のお知らせとは

紙製のもので、保険証の記号・番号や保険加入者の氏名・生年月日等が記載されているものです。
オンライン資格確認システムが導入されていない医療機関等で受信するときに、マイナ保険証と合わせることで受診できます。
※資格情報のお知らせのみでは受診はできません。

また、健康保険の各種給付金等を申請するとき、保険証の記号・番号を参照するためにも使います。

イメージ図は協会けんぽの説明資料から

保険証の記号・番号や保険加入者の氏名・生年月日等が記載されているものです。
オンライン資格確認システムが導入されていない医療機関等で受信するときに、マイナ保険証と合わせることで受診できます。
※資格情報のお知らせのみでは受診はできません。

健康保険の各種給付金等を申請するとき、保険証の記号・番号を参照するためにも使います。

また、マイナンバーの紐づけができていない方については、マイナンバーの提出をお願いするための申出書が同封されるようです。

マイナ保険証を使わずに保険診療を受けたいときに使う「資格確認書」

マイナンバーカードを持っていない、またはマイナ利用登録をしていない方については、協会けんぽから「資格確認書」の発行を受けることができます。

資格確認書は、協会けんぽが必要と判断した場合に発行されます。プラスチックのカード型で、いまの健康保険証と同様です。

有効期限があり、4~5年です。
限度額適用認定証の発行手続きや、高齢受給者証の提示が別途必要となります。
発行と使用開始は2024年12月2日です。

既存加入者2025年12月2日以降の発行マイナ保険証を持っていない方や、マイナンバーが未登録の方などに、協会けんぽが必要と判断した場合に発行
新規加入者2024年12月2日以降 の発行 資格取得届などによる本人からの申請に基づいて発行
新規加入時に申請がなかった場合、申請によらず資格確認書を協会けんぽが発行するが相当な期間を要する
資格確認書のイメージ。イメージ図は協会けんぽの説明資料から

2024年12月以降の健康保険の手続きの流れ

さて、保険証の発行がなくなったから従業員を雇い入れたときの手続きもなくなったのかな・・?と言ったら全くそうではないのでご注意ください。
いままでと同じように「資格取得届」や「被扶養者異動届」の手続きが必要です。

2024年12月2日以降は、保険証が発行されない代わりに「資格情報のお知らせ」が事業主に交付されます。
事業主は、「資格情報のお知らせ」を被保険者に渡してください。
退職等の際、「資格情報のお知らせ」の返納は不要です。

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