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【労務管理】日本年金機構の事業所調査で指摘の多い事例


社会保険の適用を受けている事業所は、日本年金機構から事業所調査をされる場合があります。

事業所調査とは

適用事業所の従業員への社会保険の届出を正しく行うことを推進し、将来的な無年金者等が出てくることの防止や事業主の負担の公平性を確保することを目的として実施されています。

調査では、次のような事を確認されます。

  • 被保険者の資格や報酬について
  • 被保険者の加入や賞与支払に関する届出、報酬月額が正しいか など

届出内容に漏れや誤りがあった場合には指摘されるので、適正な届出を行うようになります。
年金事務所から指摘をされても適正な届出がされない場合には、確認した事実に基づいて遡及して職員の認定による手続きが行われます。

事業所調査の方法は大きく『訪問調査』と『呼出・郵送調査』に分けられます。

訪問調査・短時間労働者を多く使用している事業所
・算定基礎届や賞与支払届が未提出の事業所
・これまでの事業所調査において指摘の多い事業所など
呼出・郵送調査・上記以外の事業所など

事業所調査は、厚生年金保険法第100条に基づいて行われており、事業主には調査に応じる義務があります。

事業所調査で指摘の多い事例

日本年金機構では、実際の事業所調査で指摘の多い事例を公表しているのでいくつかご紹介します。

短時間労働者の適用

1年のうち6カ月間以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない)の総数が51人以上となる企業等は特定適用事業所といい、短時間労働者も健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。

短時間労働者は次の要件をすべて満たすことで社会保険の加入対象となります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上である
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上である
  3. 学生でない

入社時、雇用契約書等で定めた所定労働時間が週20時間未満であっても、実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となった場合で、さらに引き続き同様の状態が続いている場合や続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3か月目の初日に被保険者の資格を取得するルールとなっています。

調査によって、雇用契約は週20時間未満でも、実際の労働時間が何か月も週20時間以上となっていたことが判明すると、遡って加入手続きが必要となります。

実態を把握し、適正に加入手続きを行ったり、労働時間が加入基準を超えないように管理していくことが大切です。

随時改定に関わるもの

非固定的賃金の新設(廃止)、単価の変更

部署異動に伴って新たな手当の支給対象者となった場合など、随時改定の対象となる可能性があります。

昇給や降給などで報酬に大幅な変動があり、一定の要件に該当した場合、月額変更届を提出して随時改定となります。
随時改定に該当するには、「固定的賃金に変動」「変動月以降3か月平均の標準報酬月額が2等級以上の差」等一定の要件があります。

新たな手当は、毎月支給するものとは限りません。
給与規程等で定める『一定の要件を満たした場合に支給する手当』を新たに「支給する(しない)対象になった」場合にも、『固定的賃金の変動』にあたります

「支給する(しない)対象になった」月が起算月となりますので、忘れずに確認する必要があります。

また、支給単価に変更があった場合も「固定的賃金の変動」にあたるため、注意が必要です。


固定的賃金の日割り支給

給与計算期間の途中に固定的賃金の変更が行われ、日割り支給される場合がありますが、随時改定では、固定的賃金の変動を満額反映していないため日割り支給された月は起算月としません。

手当が新たに支給する(しない)対象となり、日割りではなく「満額支給された最初の月」を起算月とし、以後3か月の実績をもって月額変更に該当するかどうかを判断します。

日割り支給された月を起算月として届出してしまうと、改定月や改定後の報酬月額が誤ってしまうこととなります。


遡って手当を支給する

社会保険の報酬月額は、給与規程等で支給することが定められている諸手当など「労務の対償となるすべての報酬」を含めた金額を元に決定されます。

通勤手当や住宅手当なども報酬に含めることとなりますが、従業員からの申請が遅れた等の事情で、本来支給する月の翌月以降に遡って支給するケースがあります。

入社時の場合

「資格取得時の報酬月額を訂正」して届出をする必要があります。

随時改定の場合

「本来支給する月を起算月」として、月額変更に該当するか確認します。

遡及して手当を支払うこととなった場合、取得時訂正や、本来支給月に支給したものとして月額変更に該当しないか、確認する必要があります。

現物給与の算入もれ

社会保険の報酬は、住宅の貸与、食事の提供など、金銭以外で支払われるものは「現物給与」として含めます。
住宅と食事は厚生労働大臣が現物給与の価額を都道府県毎に定めています。

この時、社会保険を本社と支店で合わせて1つの適用事業所として管理していても、現物給与はそれぞれの支店等が所在する都道府県の価額で計算するので注意が必要です。

また、本人から一定額を控除している場合、食事、住宅それぞれで計算方法が定められているので確認する必要があります。

 

 

【労務管理】傷病手当金は懲戒処分で出勤停止の日にも支給される


傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度です。勤務先で社会保険に加入している方が病気やケガのために会社を休み、賃金が受けられない場合、傷病手当金の申請ができます。

傷病手当金が支給される条件

傷病手当金は、次の条件をすべて満たしたときに支給されます。

  1. 業務や通勤と関係ない理由による病気やケガによって、会社を休んでいる
  2. 仕事ができない状態である
  3. 所定休日や有給休暇も含めて当該療養のために3日間連続で休んで、4日目以降も仕事に就けない
  4. 休業した期間について給与の支払いがない

傷病手当金は、上記の3つ目の「待機3日間」が成立した後、4日目以降について支給されるものですので、会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。

また、傷病手当金の金額は、傷病手当金を受給する方の社会保険の金額(原則として過去1年間の標準報酬月額の平均)を元に決定されます。
支給される期間は、支給を開始した日から通算して最長で1年6ヵ月です。

【参考】傷病手当金について~支給額&書き方~

労務できない期間が、懲戒処分による出勤停止期間の場合

出勤途中に追突事故を起こし、会社から出勤停止処分(後に懲戒解雇)をされた方が、アルコール依存症の療養のために仕事ができなかったとして傷病手当金の支給申請をしたところ、保険者組合から「会社から出勤停止になっている間は労務不能とはいえない」と却下された件について、再審査請求によって傷病手当金が支給されることとなった事例があります。
(社会保険審査会 令和2年(健)第1131号)

傷病手当金の支給要件は「療養のため労務不能」であることのみ

当初、保険者組合は「出勤停止を命じられている期間は、そもそも『労働の義務が発生しない』状況のため、『療養のため労務に服することができないとき』に該当しない」としていました。

しかし、健康保険法第99条第1項は、傷病手当金の支給要件として、療養のための労務不能であることのみを要件としています。
「労働義務がある日(賃金請求権を有する日)であること」は要件としていません。

健康保険法 第99条 
被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

昭和2年社会局保険部長通知でも「労働義務がない公休日でも労務不能なら支給する」としており、公休日についても傷病手当金は支給されています。

これらのことにより、出勤停止の懲戒処分のため雇用契約上賃金請求権がない日であっても、療養のため労務不能で賃金を受けられないなら支給対象となりました。

労働者災害補償保険における休業補償給付の場合

業務が理由となって休業をした場合に受けられる労働者災害補償保険における休業補償給付においても、休日や出勤停止の懲戒処分等のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日も支給されることが最高裁判決で示されています。
(最高裁判所昭和58年10月13日第一小法廷判決 事件番号:昭和58(行ツ)4)

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令和8年度(2026年)適用分の「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(賃金比較ツール)が公表されました。
いよいよ来年度の労使協定を見直す時期がやってきました。
東京労働局の発表によると、令和6年度に派遣事業者に対して行われた指導監督は3,135件(前年比+12.3%)と大幅に増加しています。
以前のデータによると是正指導の内容で最も多かったのが「労使協定に関する不備」です。

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【労務管理】事業主の証明による被扶養者認定


社会保険の扶養に入るため、年収130万円未満に収まるように雇用契約を結んでいるものの、実際のところ毎月残業していたりすると、年末時点で年収調整のため「もう残業できない」「勤務時間を減らさなければいけない…」とパートやアルバイトの方が考えるケースがあります。

社会的な人手不足を背景に、こういった働き控えの対策として、令和5年から「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が当面の間の対応として実施されていましたが、この度、恒久的な取扱いとなりました。

事業主の証明による被扶養者認定とは

残業などで収入が一時的に扶養認定基準(年収130万円未満)を超えたとしても、事業主がその旨を証明すれば扶養に入ったままでいられる、というものです。
連続2回まで認められます。

※保険者が被扶養者の収入確認を年1回実施している場合は、連続2年間は認められるということです。

事業主が証明する書式

事業主が証明する書式は厚生労働省HPに用意されています。
「本来想定される年間収入(残業のない年間収入)」「人手不足による労働時間延長等が行われた期間」等を記入するようになっています。

一時的な収入増加の要因

一時的な収入増加の要因としては、「残業手当」や「臨時的に支払われる繁忙手当」等が想定されています。

  • 他の従業員が休職・退職したことで、業務量が増加したケース
  • 業務の受注が好調だったことにより、事業所全体の業務量が増加したケース
  • 突発的な大口案件で事業所全体の業務量が増加したケース など

シフト制で勤務している労働者のシフトが、上記のような理由で勤務時間が増えた場合も該当します。

こういったケースではなく、基本給や手当の変更、雇用契約上の所定労働時間・日数が増加して引き続き収入が増えることが確実な場合は、「一時的な収入増加」とは認められないので注意が必要です。

60歳以上または障害者の場合

60 歳以上の場合や、障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は、被扶養者の収入要件が180万円未満と定められています。
この場合、「事業主の証明による被扶養者認定」は、年間収入が180万円未満かどうかの判定についても適用されます。

ただし、扶養されている人の年間収入が、扶養している人の年間収入を上回る場合等で、扶養している人がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められない場合には、被扶養者の認定が削除されることとなるので注意が必要です。

フリーランスや自営業者などの場合

フリーランスや自営業者など、特定の事業主と『雇用関係』にない働き方をしている場合は、今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)の対象にはなりません。

【労務管理】36協定の特別条項の発動手続き


36協定とは

労働時間は原則として「1日8時間」「週40時間以内」、そして「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と労働基準法で決まっています。

この時間を超えて労働者を働かせる場合は、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長への届出をする必要があります。

36協定を結び、届出をすることで、協定で決めた範囲内で原則の労働時間を超えて労働させることができます。

36協定の効力(刑事免罰効力)は所轄労働基準監督署長への届出をした時点から発生するため、届出を忘れていると効力がないため注意が必要です。

36協定で決めること

36協定では、次のような内容を決めます。

  • 時間外労働を行う理由
  • 時間外労働を行う業務の種類
  • 1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限など

36協定で決められる上限時間

36協定を結んだからと言って、無制限に時間外労働をさせられるわけではありません。

休日労働を含まない『時間外労働の上限』は、原則として「月45時間」「年360時間」と決まっています。
さらに、『時間外労働と休⽇労働の合計』は⽉100時間未満、2~6カ月すべての平均が80時間以内にしなければなりません。

※災害の復旧・復興の建設事業や、自動車運転の業務、医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業等については別途特別な取扱いが定められています。

参考:【労務管理】2024年4月以降の時間外労働の上限規制

36協定の特別条項

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合、『特別条項』を決めることで、原則を超えて次の上限まで時間外労働をさせることができます。

※特別条項は必要性を毎回確認しながら適切に運用することが求められます。また、特別条項を適用させる場合でも、時間外労働は限度時間にできる限り近づけるように努めなければいけません。

【特別条項の上限】

  • 時間外労働・・・年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計・・・月100時間未満、2~6か月すべての平均が80時間以内
  • 時間外労働の上限の原則月45時間を超えることができるのは、年6カ月まで

特別条項を適用させて労働させる理由として「通常は見通せないような業務量の大幅な増加に伴って臨時的に労働させる必要がある場合」をできる限り具体的に定める必要があります。

【臨時的に必要がある場合の例】

  • 予算、決算業務
  • ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • 納期のひっ迫
  • 大規模なクレーム対応
  • 機械トラブル対応              など

「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」などは恒常的な長時間労働に繋がる恐れがあるため認められません。

特別条項を発動するときの手続き

36協定の特別条項を発動する場合、労基署への届出や報告は不要です。

36協定を結ぶ際に決めた「特別条項を発動させるときの手続き」(「労働者代表に対する事前申し入れ」「労働者代表に対する事前通告」など)を社内で手続きを進め、

「発動手続に関する記録」と「健康・福祉確保措置の実施状況」の記録を作成して保存する必要があります。

特別条項発動協議書と通知書の作成例

「発動手続に関する記録」として協議書や通知書を作成することが考えられます。

※こちらの書式はあくまで参考例としてご提供しているものです。ご利用にあたっては、自社の状況に合わせて内容をご確認・調整くださいますようお願いいたします。

 

 

健康・福祉を確保する措置

特別条項を発動して働かせた労働者に対して、どのような健康・福祉を確保するための措置をするのか定めます。特別条項を発動した場合は、これらの措置のうちどれを実施したかを「記録」として残す必要があります。

  • 医師による⾯接指導
  • 深夜業(22時〜5時)の回数制限
  • 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  • 代償休⽇・特別な休暇の付与
  • 健康診断
  • 連続休暇の取得
  • 心とからだの相談窓⼝の設置
  • 配置転換
  • 産業医等による助言・指導や保健指導
  • その他

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【労務管理】家族従業員の労働者性


中小企業や個人事業では、配偶者や子ども、親など、事業主の家族が一緒に働くことは珍しくありません。

しかし、「家族だから労働基準法は関係ない」「給与は手伝いのお礼」といった認識でいるとトラブルにつながることがあります。

家族であっても、「同居の家族以外の従業員を雇っているか」「指揮命令関係があるか」「他の労働者と同じように管理されているか」といった実態によって労働者性を判断する必要があります。

労働基準法上の扱い

労働基準法は、使用者が労働者と雇用契約を結ぶにあたって最低限の基準を設けたものです。
本来、使用者と労働者は「対等な立場」で自由に契約を行うのが原則ですが、労働者は経済的に弱いため、不公平な契約を結んでしまうおそれがあります。そのため、法律で最低限の基準が定められています。

労働基準法では、労働者の定義を「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。

第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

一方で、労働基準法第116条第2項では、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」としており、適用除外を定めています。
つまり、「働いている人が同居の家族だけ」で行う事業であれば、労働基準法の規定(労働時間、休日、割増賃金など)は原則として適用されません。

第116条(適用除外)
②この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

しかし、ここで注意が必要なのは、同居の親族ではない従業員を1人でも雇っている場合、その事業全体に労働基準法が適用されるということです。


アルバイトやパートの方を1人でも雇っていれば、同居の親族にも労働基準法が適用される場合があるということです。

労働基準法上の「労働者」に該当するかを判断する基準

労働基準法の労働者性は、「使用従属性」によって判断されます。

  1. 他人の指揮監督下において労働をしているか
  2. 報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか

この具体的な判断基準は、労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)において、次のように整理されています。

「指揮監督下の労働」であることの判断要素
  • 仕事の依頼、業務従事の指示等に対して諾否の自由があるか
  • 業務の内容や遂行方法について具体的な指揮命令を受けているか
  • 場所や時間の拘束性はあるか(拘束がある場合、業務の性質上か、指揮命令の必要によるものか)
  • 労務提供の代替性はあるか(本人が自らの判断で他の者や補助者を使うことが認められているか)

また、報酬に関して、欠勤控除や残業手当がある場合は、使用従属性を補強するものとして考えられます。

使用従属性の判断が困難な場合に追加で考える要素

使用従属性の判断が困難な場合、次の要素も考慮して総合判断するようになります。

(1)事業者性の有無

本人が所有する著しく高価な機械、器具を使用しているか、事業者として正規従業員よりも著しく高額な報酬を得ているか、損害責任を負っていたり独自の商号を使用したりしているか

(2)専属性の程度

他社の業務に従事することが制度上制約されていたり、時間的余裕がなく事実上専属となっており、経済的に従属しているか、報酬に固定給部分があるか

(3)その他 

選考基準、報酬の支払い(給与所得かどうか)、労働保険や服務規律の適用などが判断を補強するものとなります。

労災保険の扱い

労災保険は、労働者が業務または通勤に起因して負傷・疾病・障害・死亡した場合に、政府が保険給付や社会復帰支援を行う制度です。
労災保険の対象者は原則としてアルバイトやパートタイマー等を含むすべての労働者です。

事業主と同居の親族は、原則として労災保険の対象外

事業主と同居の親族は、原則として労災保険の対象にはなりません。

ただし、常時、同居の親族以外の労働者を使用している事業で、同居の親族が下記の条件を満たし、一般事務や現場作業などに従事している場合は、私生活とは別に独立した労働関係が成立しているとみなされ、労災保険の対象となります。

実態として労働者であることの要件
  • 明確に事業主の指揮命令に従って業務を行っている
  • 同居の親族ではない労働者と同じように働き、労働時間や休憩、休日等の管理をされていて、賃金も労働に応じて支払われている。

雇用保険の扱い

個人事業主や実質的に個人事業と同様の法人の事業主と同居している親族は、原則として雇用保険に加入できません。家族としての協力関係が強く、使用従属関係が不明確になりやすいためです。

しかし、以下の要件をすべて満たす場合は加入が認められます。手続きの際は、ハローワークに実態を確認できる書類等を提出する必要があります。

同居している親族が雇用保険に入る要件
  • 明確に事業主の指揮命令に従って業務を行っている
  • 他の労働者と同じように就労していて、勤怠の管理を受けており、賃金もこれに応じて支払われている
  • 役員など、事業主と利益を一にする地位ではないこと

例えば、他の従業員と同じように出退勤の打刻やシフト管理をされており、給与計算も同じ方法で行われていれば、雇用関係が認められる可能性があります。

逆に、「必要な時だけ手伝う」「給与は月ごとに任意で支給」などの場合は、要件を満たさないことになります。

【労務管理】労使協定の効果とは


労使協定とは

労使協定は、労働者の代表(労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者)と使用者が話し合って合意した内容を書面に記したものです。
労働基準監督署に届出が必要な労使協定と、そうでないものがあります。
届出が必要な労使協定は、届出が受理されてから初めて法的な効力が認められるので注意が必要です。

労使協定を結ぶ目的

労使協定を結ぶことで、労働基準法の一部を例外的に適用できるようになります。

36協定(時間外・休日労働に関する協定)の場合

労働基準法で、使用者は労働者に1日8時間、週40時間を超えて労働させてはいけないと定められています。

労働基準法(労働時間)
第三十二条 

1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

しかし、労使協定(36協定)を結ぶことによって、上記の時間を超えて労働させることができるようになります。
労使協定を結ばずに上記の時間を超えて労働させた場合や労使協定の範囲を超えて時間外労働をさせた場合は法律違反になります。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

なお、労使協定(36協定)を結んでも、法で定められている法定時間外労働の上限規制を超えて労働させてはいけません。協定で定める時間は上限規制内にする必要があります。

時間外労働の上限規制

休日労働は含まない時間外労働の上限は、原則として、月45時間・年360時間です。
臨時的な特別の事情があって、労使が合意する場合でも、
・時間外労働・・・年720時間以内
・時間外労働+休日労働・・・月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内
とする必要があります。
原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。

就業規則や労働条件通知書との違い

労使協定と就業規則、労働条件通知書の違いをまとめると次のようになります。

文書名主な目的・内容届出義務
就業規則事業場の労働条件や服務規律を一律に定めたもの常時10人以上の労働者がいる事業場は作成・届出義務あり
労働条件通知書従業員に個別に労働条件を通知する書面個別通知のため届出義務なし
労使協定法の特例を労使の合意で適用する協定書届出不要なものと、届出によって効力を持つものがある

就業規則は会社としてのルールであり、労働条件通知書は個人ごとに労働条件の内容を通知する書面、労使協定は法の特例を認める合意書です。
労使協定を結ぶ内容は、就業規則に反映する必要がある場合が多くあります。

労使協定の種類や届出が必要かどうか

届出が必要な労使協定

次の労使協定は、労働基準監督署に届出をして受理されて初めて法的な効力が発生します。
届出をしていない状態ではたとえ労使協定を結んでいたとしても法的な効力がありません。

  • 時間外・休日労働(36協定)
  • 変形労働時間制(1か月単位・1年単位・1週間単位)
  • 清算期間が1か月を超える場合のフレックスタイム制
  • 労働時間が法定労働時間を超える場合の事業場外労働のみなし労働時間制
  • 専門業務型裁量労働制
  • 任意貯蓄の管理に関する協定届

なお、企画業務型裁量労働制の場合は労使協定ではなく「労使委員会の決議届」を労働基準監督署に届出するようになります。

届出が不要な労使協定

次の労使協定は労働基準監督署への届出は不要です。社内で書面を締結して周知することで効力が発生します。

  • 清算期間が1か月以内のフレックスタイム制
  • 労働時間が法定労働時間を超えない場合の事業場外労働のみなし労働時間制
  • 年次有給休暇の計画的付与
  • 時間単位での年次有給休暇の付与
  • 年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合の協定
  • 育児・介護休業制度の適用除外
  • 休憩の一斉付与の例外
  • 賃金から法定控除以外の控除を行う場合(昼食代・社宅費など)

労使協定は、労働基準法を適正に運用するための重要な書面です。内容を正しく理解し、就業規則との整合性を保ちながら運用することで、トラブル防止と働きやすい職場づくりにつながります。

【令和8年度 派遣労働者の労使協定方式、賃金決定に係る重要情報と準備のポイント】


【最低賃金改定にも注意が必要です。】

令和8年度の労使協定方式に基づく派遣労働者の賃金額を決定する際の「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」が、厚生労働省より発表されました。
詳細は以下の厚生労働省の公式ページをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

厚生労働省令和7年度からの主な変更点と注意点
令和8年度の賃金適用に向けて、以下の変更点や注意点を押さえておきましょう。
1.通勤手当の単価引き上げ
通勤手当を時給に含めて支給する場合、1時間当たりの単価が73円から79円に6円引き上げられます。
2.前払い退職金の割合は変更なし
一般賃金・賞与等に乗じる前払い退職金の割合は、昨年度と変わらず5%のままです。引き続き、労使協定に基づく適切な運用が求められます。
3.後払い退職金の統計データ変更
後払い退職金に「令和4年中小企業の賃金・退職金事情」(東京都)を使用していた場合、令和8年度からは「令和6年中小企業の賃金・退職金事情」に統計が更新されます。
また、退職手当の支給月数の率が変更となる予定です。
例:勤続3年目の自己都合退職の場合、従来0.7月分であった支給月数が変更となります。具体的な変更内容は、最新の統計データを確認の上、労使協定に反映してください。

令和8年4月1日からの賃金適用に向けた準備
令和8年4月1日から新たな賃金額が適用されます。少し先のスケジュールではありますが、以下の準備を早めに進めることをお勧めします。
派遣料金の交渉:平均賃金額の上昇に伴い、派遣先との派遣料金の見直し交渉が必要です。適正な料金設定で、収益と労働者保護のバランスを確保しましょう。
労使協定の見直し・作成:賃金改定に合わせ、労使協定の内容を精査し、必要に応じて作成を行ってください。

最低賃金の大幅改定にもご留意ください
2025年10月から、最低賃金が大幅に改定されます。現在の労使協定で設定している時給が改定後の最低賃金を下回る場合、新たな労使協定の締結が必要です。
なお、最低賃金の適用開始日は都道府県によって異なり、2026年3月適用開始の地域もあるため、適用時期を事前に確認し、余裕を持った対応を心がけましょう。
まとめ
令和8年度の賃金改定や最低賃金の変更は、派遣元企業にとって重要な影響を及ぼします。賃金計算や労使協定の見直し、派遣先との交渉をスムーズに進めるためにも、早めの準備が不可欠です。
当事務所では、労使協定の作成支援や賃金改定に関するご相談を承っております。ご検討の際は、ぜひお気軽にご連絡ください。

【労務管理】出生後休業支援給付の簡易診断


厚生労働省のHPで出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツールが公表されました。

出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール

次の要件を選択することで、支給条件等の診断結果が表示されます。

手順1

ご自身について

父親(子が養子でない)/母親(自身が出産)/父親か母親(子が養子)

手順2 配偶者の状況 雇用労働/公務員/配偶者がいない/ほか
手順3 配偶者について当てはまるもの 育児休業を取得できる/育児休業を取得できない

診断結果は「ご自身のみ育児休業を14日以上取得すれば支給対象」や「配偶者が下表のいずれかに該当すれば、ご自身のみ育児休業を14日以上取得すれば支給対象」など状況に合わせて詳細な結果が表示されます。

申請に必要な書類も表示されるので、申請をする可能性がある場合は事前にツールを活用すると良いと思います。

出生後休業支援給付とは

共働き・共育てを推進するための給付金です。
雇用保険に加入している労働者が支給対象となります。
お子さんが生まれた直後の一定期間に、両親がどちらも14日以上の育児休業を取得した場合に、育児休業給付金等と合わせて支給されます。支給日数は最大28日間、休業開始前の給与の13%を支給する制度です。
※配偶者が就労していない場合などは本人のみが育児休業を取得。

=参考=
【労務管理】2025年4月からの育児休業給付について

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