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【労務管理】日本年金機構の事業所調査で指摘の多い事例

社会保険の適用を受けている事業所は、日本年金機構から事業所調査をされる場合があります。

事業所調査とは

適用事業所の従業員への社会保険の届出を正しく行うことを推進し、将来的な無年金者等が出てくることの防止や事業主の負担の公平性を確保することを目的として実施されています。

調査では、次のような事を確認されます。

  • 被保険者の資格や報酬について
  • 被保険者の加入や賞与支払に関する届出、報酬月額が正しいか など

届出内容に漏れや誤りがあった場合には指摘されるので、適正な届出を行うようになります。
年金事務所から指摘をされても適正な届出がされない場合には、確認した事実に基づいて遡及して職員の認定による手続きが行われます。

事業所調査の方法は大きく『訪問調査』と『呼出・郵送調査』に分けられます。

訪問調査・短時間労働者を多く使用している事業所
・算定基礎届や賞与支払届が未提出の事業所
・これまでの事業所調査において指摘の多い事業所など
呼出・郵送調査・上記以外の事業所など

事業所調査は、厚生年金保険法第100条に基づいて行われており、事業主には調査に応じる義務があります。

事業所調査で指摘の多い事例

日本年金機構では、実際の事業所調査で指摘の多い事例を公表しているのでいくつかご紹介します。

短時間労働者の適用

1年のうち6カ月間以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない)の総数が51人以上となる企業等は特定適用事業所といい、短時間労働者も健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。

短時間労働者は次の要件をすべて満たすことで社会保険の加入対象となります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上である
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上である
  3. 学生でない

入社時、雇用契約書等で定めた所定労働時間が週20時間未満であっても、実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となった場合で、さらに引き続き同様の状態が続いている場合や続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3か月目の初日に被保険者の資格を取得するルールとなっています。

調査によって、雇用契約は週20時間未満でも、実際の労働時間が何か月も週20時間以上となっていたことが判明すると、遡って加入手続きが必要となります。

実態を把握し、適正に加入手続きを行ったり、労働時間が加入基準を超えないように管理していくことが大切です。

随時改定に関わるもの

非固定的賃金の新設(廃止)、単価の変更

部署異動に伴って新たな手当の支給対象者となった場合など、随時改定の対象となる可能性があります。

昇給や降給などで報酬に大幅な変動があり、一定の要件に該当した場合、月額変更届を提出して随時改定となります。
随時改定に該当するには、「固定的賃金に変動」「変動月以降3か月平均の標準報酬月額が2等級以上の差」等一定の要件があります。

新たな手当は、毎月支給するものとは限りません。
給与規程等で定める『一定の要件を満たした場合に支給する手当』を新たに「支給する(しない)対象になった」場合にも、『固定的賃金の変動』にあたります

「支給する(しない)対象になった」月が起算月となりますので、忘れずに確認する必要があります。

また、支給単価に変更があった場合も「固定的賃金の変動」にあたるため、注意が必要です。


固定的賃金の日割り支給

給与計算期間の途中に固定的賃金の変更が行われ、日割り支給される場合がありますが、随時改定では、固定的賃金の変動を満額反映していないため日割り支給された月は起算月としません。

手当が新たに支給する(しない)対象となり、日割りではなく「満額支給された最初の月」を起算月とし、以後3か月の実績をもって月額変更に該当するかどうかを判断します。

日割り支給された月を起算月として届出してしまうと、改定月や改定後の報酬月額が誤ってしまうこととなります。


遡って手当を支給する

社会保険の報酬月額は、給与規程等で支給することが定められている諸手当など「労務の対償となるすべての報酬」を含めた金額を元に決定されます。

通勤手当や住宅手当なども報酬に含めることとなりますが、従業員からの申請が遅れた等の事情で、本来支給する月の翌月以降に遡って支給するケースがあります。

入社時の場合

「資格取得時の報酬月額を訂正」して届出をする必要があります。

随時改定の場合

「本来支給する月を起算月」として、月額変更に該当するか確認します。

遡及して手当を支払うこととなった場合、取得時訂正や、本来支給月に支給したものとして月額変更に該当しないか、確認する必要があります。

現物給与の算入もれ

社会保険の報酬は、住宅の貸与、食事の提供など、金銭以外で支払われるものは「現物給与」として含めます。
住宅と食事は厚生労働大臣が現物給与の価額を都道府県毎に定めています。

この時、社会保険を本社と支店で合わせて1つの適用事業所として管理していても、現物給与はそれぞれの支店等が所在する都道府県の価額で計算するので注意が必要です。

また、本人から一定額を控除している場合、食事、住宅それぞれで計算方法が定められているので確認する必要があります。

 

 

【労務管理】65歳以降の介護保険料、医療費の自己負担割合と在職老齢年金制度

65歳以降の介護保険料、医療費の自己負担割合、在職老齢年金制度についてまとめてみます。

介護保険料

40歳から64歳まで

40歳から64歳までは、介護保険第2被保険者として、健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。
勤務先で社会保険に加入している場合、40歳から64歳までは給与から天引きされて支払うかたちになっています。

65歳以降

65歳以降は介護保険第1号被保険者となるので、勤務先から給与を支払われる場合でも、65歳以降は給与から天引きされなくなり、個人で介護保険料を市区町村へ納めるようになります。
原則として年金から天引きされますが、年金受給額が一定額未満等の場合は納付書で支払ったり口座振替をしたりするようになります。

医療費の自己負担割合

病院等を受診したときに支払う医療費の自己負担割合は、年齢によって次のように定められています。(令和7年3月1日時点)

6歳(義務教育就学前)未満自己負担割合2割
70歳未満自己負担割合3割
70歳から74歳自己負担割合2割、ただし現役並み所得者は3割。
75歳以上自己負担割合1割。
ただし、現役並み所得者以外の一定所得以上の人は2割。現役並み所得者は3割。
70歳から74歳の間

70歳から74歳の間の医療費の自己負担割合は、所得に応じて2つに別れています。

勤務先で健康保険に加入している場合

  • 標準報酬月額が28万円未満の方は、自己負担割合2割※
  • 標準報酬月額が28万円以上の方は、自己負担割合3割

※誕生日が昭和19年4月1日生まれ以前の場合の一部負担金等の軽減特例措置があります。

標準報酬月額というのは、勤務先で支払う社会保険料の基礎となる金額です。入社して初めて社会保険に加入した時や毎年の標準報酬決定の時などに勤務先から通知されます。

国保の場合

原則として住民税課税所得145万円以上の場合、3割負担になります。

※収入合計額による例外もあります。

また、3割負担に該当する場合、医療費が高額になった場合の上限額(高額療養費の自己負担限度額)が標準報酬月額や課税所得によって3つに分かれます。

画像は厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」より

75歳以上

75歳以上になると、医療費の自己負担割合は所得に応じて3つに別れます。

現役並み所得者住民税課税所得145万円以上
※収入合計額や生年月日による例外もあります。
自己負担割合3割
一定以上所得者住民税課税所得が28万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、後期高齢者が2人以上の場合計320万円以上自己負担割合 2割
※2割負担の場合、令和7年9月30日までは1か月の外来医療費の配慮措置があります。
一般住民税課税所得28万円未満(「一定以上所得」以外)自己負担割合 1割

3割負担に該当した場合、医療費が高額になった場合の上限額(高額療養費の自己負担限度額)は課税所得額によって3つに分かれます。

画像は兵庫県後期高齢者医療広域連合「後期高齢者医療制度のご案内」より

在職老齢年金(給与と老齢年金の調整)

老齢厚生年金は、受給権がある方は原則として65歳から受給できます。

老齢厚生年金を受給しながら働いている方が勤務先で厚生年金保険に加入している場合、給料と年金の合計額に応じて年金の支給額が調整される場合があります。

老齢厚生年金の「基本月額」と
「総報酬月額相当額」の合計が
「50万円」以下の場合
全額支給
老齢厚生年金の「基本月額」と
「総報酬月額相当額」の合計が
「50万円」を超える場合
次の計算式によって調整された額が支給されます。
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
  • 50万円は、令和6年度の支給停止調整額です。
  • 「基本月額」は、配偶者や子どもなどを扶養している場合に追加される「加給年金額」を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分の月額です。
  • 「総報酬月額相当額」は、おおざっぱにいうと、その月以前1年間の年収を12で割った額のようなものです。具体的には、勤務先の標準報酬月額に、その月以前1年間に支払われた標準賞与合計額を12で割った金額を加えたものです。

その他、厚生年金基金に加入していた期間がある場合など別途細かい計算のルールが定められています。

支給額が調整されている場合は、「総報酬月額相当額が変わった月」や「退職日の翌月」に調整額の見直しとなります。退職して1カ月以内に再就職して厚生年金保険に加入した場合は調整額の見直しがされません。

【労務管理】介護保険制度とは

以前は、親の介護は子どもや家族が各家庭の中で行うことが一般的でした。
しかし、高齢者の増加や核家族の増加で介護による離職が社会問題となったため、家族の負担を軽減し、社会全体で介護を支えることを目的に2000年に介護保険制度が創設されました。

介護保険法では、総則で目的を次のように定めています。

介護保険法

(目的)
第一条
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

介護保険を受けられる人(被保険者)

介護保険を受けられる人(被保険者)は次のとおりです。

第2号被保険者40歳から64歳まで『加齢に伴う特定疾病』が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
第1号被保険者65歳以上『要介護認定』または『要支援認定』を受けたときに介護サービスを受けることができます。
介護認定等を受けるようになった原因は何でもOKです。

特定疾病とは

65歳以上の高齢者に多く起きている加齢との関係が認められる疾病で、3~6ヶ月以上継続して『要介護状態』または『要支援状態』となる場合が多いもの。

  • がん(末期)
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

介護保険料を納付する人

介護保険料を納付する人(被保険者)は次のとおりです。

第2号
被保険者
40歳から64歳まで【40歳の誕生日の前日が属する月】から【65歳の誕生日の前日が属する月の前月】まで納付します。
健康保険料と一緒に介護保険料を納めるので、勤め先で健康保険に加入している場合は給与から天引きされます。
第1号
被保険者
65歳以上【65歳の誕生日の前日が属する月】から納付します。
市町村と特別区に納めますが、原則として年金から天引きされます。

65歳になったら気を付けるポイント

高年齢者雇用安定法で「70 歳までの定年の引上げ」など70歳までの就業機会の確保が努力義務とされたので、65歳以降の方を雇用する機会も増えてきたと思います。

65歳以降の社会保険の取り扱いで気を付けるポイントは次のとおりです。

介護保険料勤め先で給与から天引きするのは【65歳の誕生日の前日が属する月の前月】までの分です。
【65歳の誕生日の前日が属する月】からは、本人が直接、市町村等に納めるようになります。
健康保険料65歳以降も引き続き給与から天引きします。
健康保険は【75歳になる誕生日の前日】まで勤め先で加入できます。
厚生年金保険料原則として【70歳に到達する誕生日の前日】に資格を喪失します。
70歳以上も雇用を続ける場合は70歳以上被用者該当の届出が必要ですが、保険料は徴収されず、年金額にも反映されません。
また、70歳以上の方も一定の要件を満たした場合、申出することで厚生年金保険に高齢任意加入をすることもできます。

また、60歳以上の人を退職後1日もあけずに再雇用したとき、就業規則等を添えて資格の喪失と取得を年金事務所に同時に届け出をすることで、標準報酬月額を再雇用された月から変更することができます。


再雇用後は給与が下がる場合が多いと思いますが、届出をすることで再雇用した月から下がった給与に応じた社会保険料となります。

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