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【労務管理】長時間労働で労基署の指導を受けた会社は、何が問題だったのか

厚生労働省から、令和7年度に「長時間労働が疑われる事業場」に対して実施した監督指導の結果が公表されました。

令和7年4月から令和8年3月までに、29,150事業場に対して監督指導が行われ、そのうち22,882事業場(78.5%)で労働基準関係法令違反が認められました。

主な違反は、

  • 違法な時間外労働11,228事業場(38.5%)
  • 賃金不払残業1,901事業場(6.5%)
  • 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの5,919事業場(20.3%)

となっています。

また、健康障害防止のために改善を指導した事業場は12,811事業場、労働時間の把握方法が不適正なため指導した事業場は4,045事業場に上っています。

では、実際に労働基準監督署の監督指導を受けた会社では、どのような問題があったのでしょうか。厚生労働省が公表した3つの事例をご紹介します。

厚生労働省が公表した3つの事例

事例1 36協定の上限を超える長時間労働

電気設備工事業を営む事業場(労働者約20人)では、現場労働者7人について、36協定で定めた上限時間(特別条項:月99時間)を超え、さらに労働基準法の時間外・休日労働の上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内)も超える違法な時間外・休日労働が認められました。

最も長い労働者では、1か月当たり237時間の時間外・休日労働が行われていました。また、休憩時間中に働いた労働時間の一部が適正に把握されていない状況も確認されました。

労働基準監督署からは、36協定の上限時間を超えて時間外労働を行わせたことなどについて是正勧告が行われました。

その後、会社では現場労働者を14人増員するとともに、始業・終業時刻を電子機器から入力できるシステムを導入。労務管理責任者を現場に常駐させ、出退勤時間をリアルタイムで把握できるようにしました。

その結果、労働時間を適正に把握できるようになり、時間外・休日労働時間数も大幅に削減され、法律違反が解消されています。

事例2 実際の労働時間を適正に把握できていなかった

ソフトウェア業の事業場(労働者約400人)では、システム開発や改修業務を行っていたプロジェクトリーダーが、長時間労働を原因とする脳出血で死亡したとして労災請求が行われ、監督指導が実施されました。

この労働者には、システムトラブルへの対応や部下の指導などの業務が集中しており、休日出勤などの記録にも過小申告がみられました。実際の労働時間が適正に把握されておらず、最長で1か月125時間の違法な時間外・休日労働が認められました。

労働基準監督署からは、36協定で定めた上限時間を超えて時間外・休日労働を行わせたことについて是正勧告が行われたほか、時間外・休日労働を1か月当たり80時間以内とするための具体的方策を検討するとともに労働時間を適正に把握するよう指導されました。

会社では、入退室時間を自動反映する勤怠システムを後から修正できる仕様を見直したほか、非効率な業務の洗い出しや、手作業によるデータ入力・複数の承認フローの簡素化などを行いました。

さらに、ITツールなどを活用して、管理者が従業員の業務量や時間外労働時間数を把握できる体制に見直しました。その結果、時間外・休日労働時間数が大幅に削減され、法律違反も解消されています。

事例3 勤怠記録とパソコンの使用記録に乖離

河川の管理業務を行う事業場(労働者約130人)では、労働者が記録していた始業・終業時刻と、パソコンの使用時間記録との間に、1時間以上の乖離がある日が複数確認されました。

さらに、勤怠記録上は休日や年次有給休暇として処理されている日にもパソコンの使用記録がありましたが、事業場では、その理由を把握していませんでした。

実態調査を行ったところ、36協定の上限時間(月91時間)を超え、労働基準法の上限も超える時間外・休日労働が確認され、最長では1か月199時間に達していました。また、把握していた労働時間分のみ賃金を支払っていたため、割増賃金の不足も生じていました。

労働基準監督署からは労働時間を適正に把握するよう指導を受けたほか、違法な時間外・休日労働への是正勧告、割増賃金の不足額を遡及して支払うことについて是正勧告が行われました。

会社では、勤怠記録とパソコンのログに乖離がないかを管理者が確認する仕組みを整え、労働時間の管理を徹底しました。その結果、時間外・休日労働時間数が大幅に削減され、法律違反も解消されています。

監督指導の結果からあらためて確認したいこと

今回の事例を見ると、長時間労働を防ぐためには、単に「残業時間が多いか」を確認するだけでは不十分です。自社で次の3点を確認してみることをお勧めします。

① 36協定の上限を超えていないか

36協定を締結・届出している場合でも、実際の時間外・休日労働が36協定で定めた上限の範囲内に収まっているかを確認する必要があります。

特に、特別条項付きの36協定を締結している場合は、特別条項を適用できる回数や発動手続きを協定どおりに行うこと、時間外・休日労働の上限を適切に管理できているかなどを確認しましょう。

② 実際の労働時間を正しく把握できているか

今回の3事例では、休憩時間中の労働、休日出勤、勤怠記録とパソコンの使用記録の乖離など、実際の労働時間を正しく把握できていないことが問題となっています。

タイムカードや勤怠システムの記録だけでなく、実際の働き方(入退室管理、パソコンの使用記録など)が一致しているかを確認することが大切です。

③ 長時間労働者の健康管理ができているか

長時間労働は、労働時間の上限だけでなく、労働者の健康にも関わる問題です。

長時間労働となっている労働者を適切に把握し、必要な健康管理や医師による面接指導につなげられる体制になっているかについても、確認しておくことが求められます。

【労務管理】歩合給の残業代計算

時間外労働をしたときの割増賃金

労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、労働基準法で定める割増賃金を支払わなければいけません。

月給、時給、歩合など賃金形態に関わらず、時給単価に対して次の割増率を支払う必要があります。

割増賃金の種類と割増率

名称内容割増率
時間外手当
(いわゆる残業代)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
※1カ月60時間を超えたときは50%以上
休日手当法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上
深夜手当22時から朝5時までの間に勤務させたとき25%以上

歩合給制の残業代

歩合給制は「出来高払制」や「請負給制」ともいわれるもので、

「売上に対して〇%」

「成果物1件に対して〇円」

といった一定の“成果”に対して定められた金額を支払う賃金制度です。

歩合給制であっても法定労働時間を超えて労働した場合は、その部分について割増賃金を支払う必要があります。

歩合給制の場合、時間外の計算方法は労働基準法施行規則で次のように定められています。

歩合給 ÷ その月のトータルの労働時間数(所定労働時間数+時間外数)=割増基礎単価

割増基礎単価×0.25×時間外数=割増賃金額  ※休日手当の場合は×0.35

労働基準法施行規則 
第十九条 一~五 (略)
六  出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締 切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額

昭和二十二年厚生省令第二十三号 労働基準法施行規則

個別あっせんの事例

中央労働委員会のHPで、歩合給に関する事例と解説が掲載されていました。
※中央労働委員会=労働組合法に基づいて設置された国の機関で、あっせん・調停・仲裁など労働争議の調整などを行っているところ

争点は次の2点です。

  1. 委任契約だが、実態としては労働者なのか
  2. 歩合給の中に残業代は支払われているのか

1については、当事件においては実態として労働基準法上の労働者性があるということで話が進められました。
残業代計算の内容とは少しずれますが、労働者性を判断する解説がわかりやすいので引用でご紹介します。

(読みやすいよう任意で改行しています)

労働者か否かは、契約の形式ではなく労働関係の実態で判断する

゛証券会社や保険会社の外務員、カスタマー・エンジニア、芸能員、在宅勤務者(速記、ワープロなど)等々の契約の中には「雇用」ではなく、「委任」または「請負」契約の形式がとられ、そこでは、報酬は少額の保障部分があるほかは成績に比例して支払われ(歩合制、出来高払)、労働時間や労働場所についての拘束が少なく、就業規則の適用が排除され、労働保険にも入られない、という取り扱いがなされることが少なくない。

また、建設業における一人親方の職人、自己所有のトラック持込みで特定企業の運送業務に従事する傭車運転手、フランチャイズ店の店長なども個人事業主として「請負」または「委任」契約の取扱いを受けることが多いが、
特定企業のために専属的に労働力を提供する実質を有する場合には、「労働者」か否かが問題となる。

このような請負・委任契約による労務供給者が「労働者」か否かは、契約の形式(文言)によって決められるのではなく、労働関係の実態において事業に「使用され」かつ賃金を支払われている労働関係(労働契約関係)と認められれば、「労働者」といえる。 

(中略)
判断要素としては、昭和60年の労働省労働基準法研究会報告が、
①仕事の依頼への諾否の自由、
②業務遂行上の指揮監督、
③時間的・場所的拘束性、
④代替性、
⑤報酬の算定・支払い方法を主要な判断要素とし、
また、
①機械・器具の負担、報酬額等に現れた事業者性、
②専属性等
を補足的な判断要素として判断することを提唱し、以後、これらの要素が用いられている。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

1において労働者であることが前提となったため、「2.歩合給の中に残業代は支払われているのか」 については歩合給の割増計算に則って支払う方向であっせんを進めて話がまとまったようです。

通常の労働時間にあたる部分と割増賃金にあたる部分を分けていない場合、割増賃金が支払われたとは言えない

また、歩合給の残業代の支払いについて、最高裁判例の紹介がされていたので、こちらも引用でご紹介します。

゛タクシー会社の乗務員に支払われる歩合給に関し、
時間外・深夜労働が行われたとしても金額が増加せず、また、歩合給のうちで
通常の労働時間にあたる部分と
時間外・深夜の割増賃金にあたる部分とを判別することができない場合には、
当該歩合給の支給により時間外・深夜労働の割増賃金が支払われたものとすることはできず、
使用者は割増賃金規定に従って計算した割増賃金を別途支払う義務を負う、としたものがある
(高知観光事件-最二小判平6・6・13労判653号12頁、徳島南海タクシー事件-最三小決平11・12・13労判775号14頁)。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

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